[Next100 PROJECT – NEXT 100 Voice vol.1]
グリーンピース・ジャパンの事務局長サム・アネスリーが、様々な分野で活躍する方の考えや今までの背景をうかがい、100 年後の理想の未来はどんな姿になっているのか、今の取り組みがどのように100年後の未来につながっていくのかを紐解きます。

第1回は、環境問題にも意識が高く、特に若い年代のオピニオンリーダーとして注目されているファッションモデルで女優の水原希子さんのインタビューをお届けします。
© Chiaki Oshima/Greenpeace

100年後により良い地球環境を残すために行動する理由とは

水原 
今日は呼んでいただき、光栄です。よろしくお願いします。

サム 
よろしくお願いします。まずは、水原さんが地球環境のために行動を起こそうと思ったきっかけを教えてください。

肌で感じた気候変動

水原 
私が地球環境のことを考え始めたのは、まだ最近の話です。今まで味わったことのないような猛暑や災害を目の当たりにして、恐ろしくなりました。自分が子どものときに楽しんだ海での遊びを自分の子どもに経験させてあげられるのかと考えたり、美しい珊瑚が消滅する可能性があるという記事を読んだりしたときに、これからは環境問題を意識せざるを得ないと思いました。

サム 
そうですね。異常気象など、身近に気候変動の影響を感じている人々が増えていますよね。そこから環境問題を意識し、いろんなことを学んでいくのも、とても強みにもなりますよ。

水原
たとえばエコバッグを使えばビニール袋を使わなくて済む。でもエコバッグも作りすぎるとそれはそれで環境に負荷がかかる、と学んでは一歩、学んでは一歩です。でもきっとみんな同じところにいるのではないかな。自分がアクティビストだとも思っていないけれど、インスタグラムというプラットフォームを使ってみんなの「知る機会」を増やしていきたいなと思っています。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

サム
水原さんみたいに行動に移せる人は、アクティビストですよ。この50年、グリーンピースは気候変動、森林や海の生態系を守るキャンペーンなど様々な活動をしてきましたが、「ここが問題で、解決策はこれ」というほど、環境問題は簡単ではありません。これからは、まず将来のイメージを持つことが大事です。自分の孫の世代である100年後にどんな世界が欲しいのかイメージして、そこから逆算して、今日何ができるのか動こうというのが「NEXT 100PROJECT」です。グリーンピースは、これまでの「利益が中心にある社会」から、100年後は「自然も人間の命も守られる社会」にしたいと思っています。水原さんの考える100年後の理想の地球の姿を教えてください。

水原
100年後にはこの地球がもっときれいで自然が豊かで、動物やいろんな生命と共存している世界であってほしいなと思います。最近ダイビングを始めて、海の中にこんなにも知らない美しい世界が広がっていることにとても驚きました。

サム
僕も趣味でダイビングをやるんですよ。海は大好きです。

水原
地球は本当に魅力にあふれていますよね。でもこの景色は地球に住んでいる人にしか見られないんです。これは守らなければいけないと思うし、100年後もこの地球に生まれてよかったと思えるような世の中であってほしいです。

サム
本当にそうですね。

素材にこだわれば着心地もいい

サム
水原さんはご自身でファッションブランド「OK」を立ち上げ、環境に配慮された商品を作っていらっしゃいますね。

水原
実は、最初からそうだったわけではないんです。「OK」は、自分のやりたいクリエイティビティを思う存分発揮できる自己解放の場として立ち上げました。今は自分の志向がサステナブル(持続可能)に向いているので、それに沿って作りたいと考えてチャレンジしています。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

サム
今はメインアイテムの素材は環境に配慮したものを使っていらっしゃるんですよね。

水原
はい。全部オーガニックコットンと認証された材料を使っています。どうしてもコストは上がりますが、着心地がすごくいいんです。環境のためというだけではなくて、着ていて気持ちがいいというのはすごく大事かな。やって良かったと思います。

今後は、全部の商品をできるだけ受注生産にして余剰製品を出さず、素材ももっと背景を考えて試行錯誤をしながらやっていこうと思っています。なかなか利益は出ませんが、自分にとって「OK」はすごく大事な場所です。


地球人として、今日できることから世界を変えていく

サム
環境問題は社会問題でもあると思いますが、水原さんはどう考えますか。

水原
環境問題をなんとかしないと、社会問題も人権問題も、解決しないと思います。

サム
そうですね。グリーンピースが「グリーン(自然)」と「ピース(平和)」を掲げているのは、環境を守っていないと平和な世界は実現できないし、ある程度安定した社会でないと環境を守ることができないので、この二つは両立する必要があると考えているからなんです。

水原
おっしゃる通りですね。

サム
たとえば、今、使い捨てプラスチックではなく、リユース・リフィルを推進するキャンペーンを進めています。なぜ使い捨てにフォーカスするかというと、今は社会全体が使い捨ての社会になっている。そこに気づき、いろいろな側面から取り組んで、循環型社会を目指さないといけないと思っています。

水原
確かに私も、使い捨てに違和感を覚えるようになってから、色々なものが気になってきました。捨てるために生まれてきたみたいなもの、ありますよね。

サム
僕が一番おかしいと思うのは、お弁当を買ったときについてくる草のような……。

水原
バラン!(笑)。見栄えだけで、全然意味がない、そういうものがあふれていますね。それにみんなも慣れてしまっているから、そこの意識をどう変えるか。プラのストローではなく、竹のストローは使いにくくてイラっとしている人もいますが、なぜ竹なのか背景がわかれば納得できると思うんです。

サム 
言い続けることは大切ですね。水原さんはどのように伝えようとしているのでしょうか。

発信力を生かして、伝えていく

水原
いつの間にかインスタグラムのフォロワーが増えて(2021年12月現在約640万人)、これは神様からのギフトという風に感じています。このプラットフォームを使って視覚的に伝えることが性に合っています。多分私の「使命」ですね。TikTok世代にどう伝えていくかは、課題です。サムさんが活動する上で大切にしている信念はありますか?

© Chiaki Oshima/Greenpeace

サム
個人的な信念としては、自然も日本も地球も大切で、大好きなものを守っていきたいという想いでやっています。人間も自然の一部でもあるから、自然環境を守ることは自分を守ることだと信じています。

独立性を保ちながら、企業に提案を続けていく

サム
グリーンピースが大切にしている信念に、独立性があります。グリーンピースは政府や企業から財政支援に頼っていません。独立性があるからこそ、自由に活動ができるからです。たとえば、ある企業から寄付をもらっていたらその企業を対象にしたキャンペーンはなかなかできないですからね。活動のための資金はすべて、世界中に300万人以上いるサポーターお一人お一人の寄付に支えられているんですよ。

水原
素晴らしいですね。

サム
また、グリーンピースは様々なキャンペーンをやるときに、「IDEAL原則」にのっとって進めるようにしています。IDEALとは、英語で「理想の」という意味ですが、私たちが大事にしている行動方法の頭文字をとったものです。 Investigate (科学調査をする)、Document(報告書、写真などの証拠をまとめる)、 Expose(公表する)、 Act(行動する)、Lobby(交渉する)。つまり、客観的事実や科学的調査に基づいて、環境破壊の現場で何か起こっているかを、報告書や写真・映像を通じて世の中へ公表します。

水原
こういう指針は必要ですね。

サム
企業に提言をするときは、最初はあまり良い反応をいただけないんです。でも、グリーンピースは、その企業やそこで働く方々を批判するのが目的ではありません。むしろ新しい価値を創造して、一緒に解決策を導き出し、その業界の環境リーダーになってほしいと思っています。大手企業が変わったら同じ業界の企業も変わり、皆にとってプラスになるからです。結果的には、後でグリーンピースと協力してよかったと言われます。だから言い続けることは大切ですね。大きな企業はできることもたくさんありますし。

水原
なんて力強い!仕事や発信をしていく中で難しいと感じている部分も多いので、参考になります。


ワクワク感、面白さを大切に、継続が大事

サム
今後はどんな挑戦をしていきたいですか。

水原
ファッションを通して、皆が知らない進歩している技術を伝えていきたいです。たとえば、今まで廃棄されていたブドウの皮やミカンの皮でできた人工レザーや、キノコからできた生地が開発されているんですよ。

サム
ええ!? それは面白いですね!

水原
すごいし、ワクワクしますよね。ファッションって、人の気持ちを上げていくもの。捨てられた素材を生かして、生地や服を作っていくことはこれからのファッションの課題だと思います。単価は高くても価値があり、環境に負荷の少ないものに投資としてみんなが買うようにつながっていけば素晴らしいなあと思います。

サム
ブドウの皮でできたジャケットが出たら、僕買っちゃいますよ!(笑)

© Chiaki Oshima/Greenpeace

サム
若い世代には、どんなメッセージを伝えたいですか。

水原
まずは意識すること、知ることかな。パーフェクトに環境に配慮した行動をするのは難しいですが、日々の行動にちょっと罪悪感を覚えてしまうこともそれはそれでいい。ちょっとの変化でも、集まれば大きな変化につながると思うので、一緒に頑張ろうってフランクに伝えていきたいです。

家で使っている電力会社を変えるのもとても簡単です。これはぜひみんなに伝えたいですね。

サム
電話一本でできちゃうんですよね。僕も簡単で驚きました。みんながやればすごいインパクトになるのに。環境を守る行動は、頑張りすぎることはない。伝えることと継続が大事ですね。今日はありがとうございました。

対談を終えて
サム
ブドウの皮から人工レザーができるというお話。廃棄物の発生を最小限化する循環型経済(サーキュラーエコノミー)としてもいいし、何より楽しくていいと思いました。いろいろな技術はすでにあるけれども十分使われていない。そこはどんどん伝えて情報をシェアしていく。消費者は正しく選択していく。一つずつ行動に移せたらいいですね。

水原さんは、ご自身のSNSやイベントを通して、積極的に環境問題や社会問題に対する思いを発信していて、何か特別なことを伝えるのではなく、みんなが出来ることから、本当に等身大の感覚、言葉で伝えています。だからこそ、みんなは耳を傾けてくれるのだと思いました。対談の中でも繰り返し言っていた、「まずは知る。そこが大切。そして、出来ることからやる」。私自身も、本当にその通りだと思いました。

みなさんは、100年後の地球のために、今日どんな行動をしたでしょうか。みなさんの声をお聞かせください。投稿はこちらからできます。

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© Chiaki Oshima/Greenpeace

水原希子(女優/モデル/デザイナー)

米テキサス州ダラス生まれ。兵庫県神戸育ち。2003年よりモデル活動をスタート。2010年に映画『ノルウェイの森』で映画デビュー。その後、数多くの海外誌でも活躍。
OK(Office Kiko)

ウェブサイト:https://officekiko.com/

© Chiaki Oshima/Greenpeace

き手:サム・アネスリー(グリーンピース・ジャパン事務局長) 

イギリス北アイルランド生まれ。17歳の時、高等学校の交換留学で1年間岡⼭県に滞在。その後英ケンブリッジ大学で日本語を専攻し、その間三重県皇學館⼤学で1年間神道学を学ぶ。 大学卒業後、南米やヨーロッパでの教育経験を経て、2007 年に日本へ。以来11年間、NGO「ピースボート」や親を亡くした⼦どもたちを支援する「あしなが育英会」、自殺予防に取り組むNPO「東京英語いのちの電話」の事務局長を経て2018 年12月より現職。趣味は山登り、スキューバダイビング、サイクリングなど自然の中で過ごすこと。好きな場所は南アルプスの甲斐駒ケ岳、八丈島など。

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