2019年最新放射線調査

グリーンピースでは、東京電力福島第一原発事故発生直後の2011年3月26日から27日の第1回から継続的に29回、おもに福島において放射性物質および放射線調査を行っています。
今回の第29回目調査は、2018年10月11日から10月28日に、新潟県との県堺周辺、福島県浪江町と飯舘村で実施しました。浪江町では、帰還困難区域でも、除染して主に2023年までに居住可能とする「特定復興再生拠点(復興拠点)」に認定された場所、また、同町と飯舘村の2017年3月31日に避難指示が解除された地域の空間線量を測定しました。

詳しくは調査報告書『原発事故の最前線:労働者と子どもへのリスクと人権侵害 福島県浪江町と飯舘村における放射線調査』2019年3月をご覧ください。

調査結果から言えること

現在除染等の作業が行われている帰還困難区域の放射線レベルは非常に高く、そこで働く労働者の権利が侵害されていることが明らかになりました。

また大規模な除染後に避難指示が解除された地域で、国内外の基準年間1ミリシーベルトをはるかに超える高い放射線量が続いていました。放射線の影響をより受けやすい子どもを含め帰還させることは、子どもの権利条約などの国際条約やガイドラインに違反します。

詳しくは調査報告書『原発事故の最前線:労働者と子どもへのリスクと人権侵害 福島県浪江町と飯舘村における放射線調査』2019年3月をご覧ください。

プレスリリース:放射線リスク、国連勧告と政府説明に大きな乖離 ー除染作業員と子どもを守れ
関連ブログ:2019年最新放射線調査:帰還困難区域を除染するということ
署名:【緊急署名 3/31〆切】除染作業員の権利を求めます

 

調査方法

グリーンピースの放射線調査チームは浪江町および飯舘村の民家の調査について、以下の調査方法を採った。

1. 歩行サーベイ:
一定パターンで歩行しながら測定

2. ホットスポット:
空間放射線量が高いホットスポットと要注意地点を特定し測定。

3. 車両走行サーベイ:
より広い範囲を測定するために、車両の地表 1メートルの高さに、RT30(Georadis 社製)と位置座標収集用GNSS受信機(GNSS Trimble R1)を積載し、交通事情が許す限り時速20キロメートル(最高でも時速40キロメートル)で走行した。放射線量を毎秒測定し、毎秒記録される位置座標と同期した。

4. 小型無人機による飛行サーベイ
RT30(Georadis 社製)と衛星測位システムR1GNSS 受信機(Trimble社製)を使用した測定の精度は高く、信頼性があることが証明されている。本
報告書(飯舘村の安齋氏の項目を参照)、また2018年に発行した報告書『原発事故の写像』18 にあるように、データは2015年から蓄積され、経年比較を可能にした。しかし、毎年完全に同じ場所の歩行サーベイは不可能である。福島県のおよそ70%が山林であり、また、平地でも植物が生い茂り、特に浪江町の帰還困難区域のようなところでは植物が大きく成長し、住宅の直近もその周辺も、人が立ち入っての測定がしづらくなっているからである。

こうした障壁を解決するために、2018年、グリーンピースは精度の高い別の測定機材を小型無人機に取り付けたモニタリングシステムを開発した。2018年10月に、この軽量で精度の高い測定機での試験的な測定を行い、上空からの正確な測定が可能であることを実証できた。

小型無人機は Matrice 200(DJI 社製)を活用し、それに非常に軽く精度の高いヨウ化セシウムシンチレータSigma50(Kromek 社製)、高度を測定する
ための LIDARシステム、測定地点を記録する高精度の GPSシステム、そして地上でリアルタイムに測定値を得るために無線送信機を搭載した。GPS 座標、高度および測定値の三つのデータは小型無人機の下部に取り付けられた Raspberry Pi というミニコンピューターに毎秒同期され記録される。

調査地域

浪江町帰還困難区域

浪江町の避難指示が解除された地域

飯舘村の避難指示が解除された地域

 

浪江町帰還困難区域

大堀地区は東電福島第一原発から西北西10キロほどにあり、伝統工芸である大堀相馬焼で有名である。

大堀地区では、草刈りなどの作業がおこなわれていた253号線の側道456地点を含む4,899地点の測定。調査の結果、除染労働者がいる場所で測定した456地点の平均値は毎時3.1マイクロシーベルト、最大値は毎時7マイクロシーベルトだった。

大堀地区のホットスポット

労働者が作業していた大堀地区の道路や道路沿いの脇道では、それぞれ地表から1メートル、50センチメートル、10センチメートルの高さで、毎時12マイクロシーベルト、毎時19マイクロシーベルト、毎時64.9マイクロシーベルトが測定された。

また、大堀地区小丸立石に近い場所で、高さ1メートルで毎時29マイクロシーベルト、高さ50センチメートルで毎時45マイクロシーベルト、高さ10センチメートルで毎時125マイクロシーベルトが測定された。

浪江町津島地区の避難指示が解除されようとしている地点

浪江町のより広い範囲で避難指示が解除されようとしているのが津島地区にある集落である。集落の端から端まで約1キロを走る道両側1,609地点を測り、平均値が毎時1.2マイクロシーベルトで最大値は毎時2.8マイクロシーベルトだった。2017年にも、同じ場所で測定しているがほとんど変化がなかった。

津島地区下津島の菅野さん宅

菅野さん宅では2011年末から2012年2月にかけて大掛かりな除染がおこなわれた。家屋周辺、通路、水田、牧草地などにゾーン分けをした上で、合計2,317地点を測り、平均値は毎時1.3マイクロシーベルトで、2017年9月に実施したときの平均値と全く同じだった。最大値も2017年が毎時5.8マイクロシーベルト、2018年が毎時5.9マイクロシーベルトとほとんど変化がなかった。

浪江町の避難指示が解除された地域

浪江町の帰還困難区域との境界付近の森とその周辺2016地点の測定では、森の中で最大値が毎時4.8マイクロシーベルトで、年間に換算すると避難指示解除基準を超える。また、帰還困難区域から離れたところに、三方を森で囲まれた小学校があり、その森での計測1,584地点の平均は1.8マイクロシーベルトだった。

整備されておらず、下草が成長している森に立ち入っての測定は困難であるため、今回、小型無人機に計測機材を搭載したモニタリングシステムを開発した。実証試験をおこなった結果、除染されていない森と除染した校庭との放射線量の高低差が明らかになった。

この画像に記入された色は、cps(1秒あたりのカウント数/放射線の計数率)の範囲を反映している。校庭上空の水色は森上空に見られる赤や濃い青よりも低いことを表している。

浪江町 避難指示が解除された地域のホットスポット

ホットスポットは幼稚園や学校の近隣でも多く発見された。最大値は地表から1メートルの高さで毎時3.3マイクロシーベルト、50センチメートルの高さで毎時4.23マイクロシーベルト、10センチメートルの高さで毎時5.08マイクロシーベルトであった。

飯舘村南部民家調査

飯舘村南部の元居住制限区域にある安齋氏宅では、2015年〜2018年の経年調査をしている。
2014年から2015年にかけて、国の大掛かりな除染がおこなわれた。この4年間の調査で、除染直後は劇的に線量が下がったものの、その後は低下がほとんど見られないか、逆にわずかに上昇している地点もある。
調査結果で、2017年と2018年でほとんど変化が見られないのは、半減期の短いセシウム134が劇的に減少し、半減期の長いセシウム137が主要な核種になってきたことが原因と考えられる。セシウム137の半減期は30年と長いので、線量の高止まりの傾向はここ数十年続くだろう。

 

 

結論

浪江町の帰還困難区域で調査した結果は、国際的に勧告されている被ばく基準から考慮しても、帰還して安全であるとは言えない。除染もおこなわれているが、全体の汚染を下げる効果は非常に限定的になるだろう。住民の多くが帰還しないことが予想され、除染作業員たちを高い放射線にさらす現在の政府の政策は正当性を欠いている。

また、浪江町のすでに避難指示が解除された地域でも、森などで避難指示解除基準である年間20ミリシーベルトを上回る地点がある。
浪江町に帰還する住民が少ないのは、放射線リスクが理由であることは疑いようがない。浪江町の居住人口は、2019年1月末時点で896人であり、これは事故前の4%でしかない。グリーンピースの調査結果からすれば、浪江町の住民が帰還しないという苦渋の決断には正当性がある。

飯舘村の避難指示が解除された地域の民家の2015年から2018年までの経年調査では、除染後の2016年から2018年の間、放射線レベルがほとんど下がっていなかった。これは、2018年時点に存在する放射性核種の大部分を占めるセシウム137の半減期が30年であることや、近隣の山林からの再汚染の影響からも予想される。

詳しくは調査報告書『原発事故の最前線:労働者と子どもへのリスクと人権侵害 福島県浪江町と飯舘村における放射線調査』2019年3月をご覧ください。

プレスリリース:放射線リスク、国連勧告と政府説明に大きな乖離 ーー除染作業員と子どもを守れ
関連ブログ:2019年最新放射線調査:帰還困難区域を除染するということ
署名:【緊急署名 3/31〆切】除染作業員の権利を求めます

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