北極石油掘削を進めるシェルへの反対で、欧州最高層ビルに登った

グリーンピースのメーリングリストに、「今、シェルの北極石油掘削に反対するため、女性6人がヨーロッパで一番高いビルに登っています」との報告が流れて来たのが、昨日の日本時間午後。

「え!」と思いながら、そのメールにあったライブ中継へのリンクをクリックしてみると、重そうなクライミングギアとヘルメットをかぶって6人の女性が、ビルの壁をよじ登っているではありませんか。

しかも、地上310メートルもあるというそのビルはガラス張りで、いかにも登りにくそうな壁。

彼女らを捉えた空撮映像では、すぐ横にあるロイヤル・ダッチ・シェル社ビルにたつシェルの社旗も見える。

登っている最中には、その姿がネット中継されるだけではなく、彼女たちの生のコメントがTwitterFacebookにてリアルタイムで配信された。

 

女性6人が登っているビルはシェル社のビルよりも圧倒的に高い。

15時間かけて登頂に成功した彼女らはシェルの旗をはるか下に見ながら「これでも無視できますか」と言わんばかりに「SAVE THE ARCTIC(北極を保護区に)」の旗を掲げた。 

ネットで生中継されたり、ニュースで取り上げられたこの登頂によって、あっという間にシェルが環境へのリスクの高い北極石油掘削を進めていること、世界中から北極を保護区にしてほしいとの声が上がっていることが知れわたったというわけだ。

彼女らが登頂している15時間で、ユアン・マクレガー、トム・ヨーク、アニー・レノックス、ダリル・ハンナ、ジャレッド・レトなどのセレブも彼女たちの行動を支持してくれた。 

頂上に登った後に、警察に連行された彼女たちだが、地上に戻った際には報道陣のフラッシュだけではなく、市民からの多くの歓声に迎えられた。 

シェルは、2013年中の北極開発は断念しているが、2014年以降に始めたいと宣言してきた。今後も、グリーンピースはシェルに対して北極海保護を求めてキャンペーンを続ける。

 

非暴力直接行動の意味 

なかなか議論になりにくい社会問題に注目を集めて議論を巻き起こさせるこのような行動を、非暴力直接行動と言う。

日本では、「やり過ぎでは?」との声もあると思う。

ただ、非暴力直接行動が市民の「表現の自由」として保障されるべきだとの考えが強い社会では、数時間以内に釈放され、起訴もされない、もしくは軽い罰金で済むのがほとんどだ。 

もちろん行動が根拠のないイタズラであったり、「社会のためではなく私利私欲のため」であったりすれば厳しく罰せられるが、社会問題への警笛であって非暴力の行動であれば日本よりはるかに寛容だ。

欧米風なやり方だ、と言われるかもしれない。でも、お隣の韓国でも原発への反対で昨日までの数日間、グリーンピースのクライマーが有名な観光地でもある橋にぶら下がり続け、その橋が原発から25キロのところにあることを世間に知らせ続けた。

「東電福島原発事故を考えれば、この橋も甚大な被害を受ける可能性がある」とのメッセージは、この行動で町中に知れわたり、原発の安全性についての議論がはじまっている。

 

『北極を保護区に』キャンペーンについてもっと知りたい方は、過去の事務局長ブログをお読みください。

「北極を保護区に」壮大なキャンペーンがはじまる (2012年6月22日)

北極海の氷面積が最少 – 北極での石油開発を考える (2012年8月28日)

抗議活動はご自由に - オランダで驚きの判決 (2012年10月16日) 

シェルが2013年の北極圏開発を中止 (2013年3月4日)

I Love Arctic - 北極の海底に300万人の声 (2013年4月20日)