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こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。(パブコメの提出方法はブログの下部にあります!)

 

8月3日、原子力規制委員会は、関西電力美浜原発3号機の新規制基準の適合審査書案を了承し、8月4日からパブリックコメントを開始しました。

<8月25日追記>グリーンピースも出しました。記事の末尾を御覧ください。

適合審査書案の了承は再稼働のための「事実上の合格証」とされています。

けれど、わたしは、原子力規制委員会は「規制者として不合格」と言いたいです。

なぜならば、安全を再優先しての審査になっていないからです。

自ら認める「能力不足」

田中俊一原子力規制委員長は、7月20日の記者会見で「5人だけの委員ですから、それで全ての分野を全部、そういう細かいところまでカバーするというのは、はっきり申し上げて、ああいう細かい話になると、十分に理解するというわけにはいかないというところはありますので、そういうことを申さ れるのであれば、能力不足だったということです」と言っています。くわしくはこちら

これは、関西電力大飯原発の地震の最大の揺れの想定が過小評価されているという島崎前原子力規制委員長代理の指摘を巡る対応について、語ったものです。

能力不足であれば、外部から能力を補うなりして十分に理解して、そして審査をすすめるべきではないでしょうか。

「ああいう細かい話」といいますが、最大の揺れの想定は、それがいいかげんであれば、動かすべきでない原発を動かしたり、対策が不十分のまま再稼働して過酷事故につながる可能性だってあるのです。

ここで、島崎前原子力規制委員長代理の指摘をかいつまんでご説明したいと思います!

「最大の揺れ、過小評価」

 

(イラスト・高木章次さん)

地震の揺れの想定にはいくつかの計算方法があるのですが、大飯原発で採用されている「入倉・三宅式」を使うと過小評価となるというもの。

そのため、島崎さんは、「武村式」で再計算してほしいと原子力規制委員会に伝えました。

これを受けて、原子力規制庁が再計算をしました。

そうしたら、なんと関西電力の計算した値よりも、小さくなってしまいました。(下図の左から2本目のグラフ参照)

 (この図は、FoEの満田さんの図をもとに作成しました) 

関西電力の値

関電が、入倉・三宅式を使って計算した最大の揺れが、596ガルでした(ガルは、揺れの大きさを加速度で示したもの)。

それに、地震パターンが違うともうちょっと大きくなるかもしれない…ということなども考える「不確かさの考慮」も入れて、856ガルを最大の揺れと想定しています。(図の一番左のグラフ)

この揺れまでなら、原発は耐えられる、という値です。

規制庁の値

今回、島崎さんの警告を受けて、規制庁は武村式を使って再計算しました。(図の左から二番目のグラフ)

武村式を使っても644ガル。計算方法は違うけれど関電が最大の揺れとして想定した856ガルを下回るので、問題なし、と結論づけました。

また、規制庁は、今回、入倉・三宅式を使っての計算もしたのですが、関電の値より小さくなりました。(図の左から三番目のグラフ)

関電の値を元にした武村式での推定値

この計算結果を見た島崎さんは、規制庁の入倉・三宅式の値と武村式の値が1.8倍であることを指摘しました。

そして、関電の入倉・三宅式の値を1.8倍すると、1080ガルとなって、関電の想定を上回る、と警告しました。これに不確かさの考慮も入れると、もっと大きくなります(図の一番右のグラフ)。

しかし、これらを指摘されても、原子力規制委員会は、「入倉・三宅式を使わないことにする根拠はない」として、最大の揺れの想定を見直す必要なしと結論を出してしまいました。 

関電の計算の詳細がわからない?規制庁

なぜ、規制庁の入倉・三宅式の計算結果が、関電が算出した596ガルより大幅に下回ったのか。

規制庁は関電の設定の詳細がわからなかったと言っています。

しかし、それでは、わからないものを承認したことになります。

それでもやり直さない規制委員会

そして、原子力規制委員会は、「能力不足」で、「もともとムリなことをやらせた」と認めながら、正しく再計算することもせずに、「見直す必要なし」と結論を出してしまいました。

規制者としてあるまじきことです。

原子力規制庁がムリであれば、外部の専門家に依頼して再計算してもらうこともできるはずです。 

美浜原発3号機も過小評価

この問題は、大飯原発だけの問題ではありません。

たとえば、美浜原発の場合、武村式を使って計算し直すと、現在の想定の約2倍の大きさになります。つまり、原発はその揺れに耐えることができません。

それなのに、8月3日、原子力規制委員会は、この問題を検討することもなく、美浜原発3号機は新規制基準に適合する、としてしまいました。

美浜原発3号機は、今年の12月で運転期間40年となる老朽原発。やはり老朽原発だった東京電力福島原発の事故の反省から、「原発は40年で廃炉」という原則が法律になったのに、関西電力は”原子力規制委員会が認めれば、1回に限り、20年の運転延長ができる”という例外規定を使って、延長運転を申請しています。

美浜原発3号機は、法律により、今年の11月の期限までに延長が認可されなければ廃炉になることが決まっています。新規制基準への適合は、延長認可の前提です。延長認可の期限まで、あと、3カ月と少し。だから、少しでも時間のかかる今回のような「見直し」は避けたかった、というのが真相ではないでしょうか。 

原発は危険ですが、老朽化するともっと危険です。

  • そもそも設計が古い(1970年代の設計)
  • 金属やコンクリートが劣化して壊れやすくなる
  • 検査できるのは一部分(人間が入れないところ、見れないところあり)

そんなわけもあり、世界で閉鎖した原発の平均寿命は24.7年です(くわしくはこちらのブログで)

パブコメだそう

 

8月4日から、美浜原発3号機の再稼働適合審査書案へのパブリックコメント(意見募集)がはじまっています。

この暑いのにパブコメ〜? とわたしも思います。

でも、最大の揺れの想定が過小評価のまま、審査が進んでよいわけがありません。

グリーンピースは、断固、「審査の中断」をパブコメで訴えます。

パブコメしても効果ないし〜?と思う方もいらっしゃると思います。

けれど、パブコメは、原子力規制庁に必ず読んでもらえます(まとめて公開するので)。

 それに、パブコメにはこんな効果もあります↓

  •  公開されるので、問題点を共有でき、より明らかにできる
  • 「反対意見が多数」などと報道されたりして、世論づくりにもなる

このパブリックコメントを経て、一カ月後に、新規制基準への適合が正式に決まります。

だから、一通でも多く、意見を出しておくことが大事です。あなたが出せば、かならず、一通増えます。ぜひ、出しましょう〜。

パブコメの出し方 3通り

政府のウェブのフォームから 

こちらのサイトに行き、下までスクロールして、下のほうにある黒色の「意見提出フォーム へ」ボタンをクリックして出てくる、フォームにご記入ください。2000文字まで、となっていますが何通でも出せますので、2000文字を超える場合は、何回かに分けて提出してください。

 FAXで 

同じサイトの「関連資料その他」の項目にある「意見提出用紙」をダウンロードし記入、または、この用紙の要領でワープロ書きなどしたものを 03-5114-2179 (原子力規制庁)へFAXしてください。

郵送で 

上記の「意見提出用紙」に記入、または、この用紙の要領でワープロ書きなどしたものを、下記へ送ってください。

〒106-8450 東京都港区六本木1-9-9 六本木ファーストビル

原子力規制庁 原子力規制部安全規制管理官(PWR担当) 宛て

【締切】 2016年9月2日(金)(郵送は2日必着、FAX、ウェブフォームは日付が変わる夜中の12時より前に十分に余裕をもって出してください)

「審査書案」も同じサイトの「関連情報」からダウンロードできます。


 

グリーンピースは、政府や企業から一切お金をもらっていません。独立した立場だからこそできるこうした活動で、原発ではなく自然エネルギーの未来を実現するため、ぜひ、ご寄付で今後の活動へのご支援・ご協力をお願いいたします。

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グリーンピースも出しました。

意見:関西電力美浜3号機の新規制基準適合審査は中止してください。
理由:
前原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏(東京大学名誉教授)が、関西電力大飯原発(福井県)の基準地震動が、過小評価されている可能性があると指摘しています。
原子力規制委員会は、原子力規制庁に別の方法での計算を指示するなど経緯がありましたが、7月27日の原子力規制委員会で最終的に「見直す必要なし」と結論を出しました。
しかし、その「結論」は、原子力規制委員会で該当の専門家も交えての議論の上で決定したことではありませんでした。
委員会後の記者会見の場で、記者から専門家を交えての議論をすべきではないかという質問に、田中俊一委員長は7月27日の記者会見で次のように応えています。
「それはどうしてだという議論をやるのは、普通は学会の中でやることなのです。 何でうちがやらなければいけないのか。そんなことはできないのですよ。行政機関でそんなことをやっているところがどこかありますか」
しかし、自らの評価について外部の有識者の意見を聞くことは、各種「有識者会合」や「ピア・レビュー会合」など原子力規制委員会の下でも多数あります。
そして、重ねて専門家の意見をきいてくれないかという記者に対して、田中委員長は以下のように答えています。
「そこで本当の意味の学問的議論ができるとは 思えないのです。残念なのですよ、これは。日本人の性格から言って、私も学者の端くれとしてそういうのを見ていますから、そういう場では決して本当の議論を戦わすということをしないのですよ、日本人は。だから、やってもだめだね」
原子力規制委員会や原子力規制庁の中で当該の専門家がいない分野での議論に、専門家を呼んで話を聞くことはこれまでも、行なわれてきたことです。本件について以上のように拒むことは、「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ること」を使命としている原子力規制委員会の姿勢としてふさわしくないのではないでしょうか。
基準地震動の設定は、規制の要です。また、大飯原発の基準地震動が過小評価であれば、同じ方式で基準地震動を設定し、また、立地に関しても共通事項の多い美浜原発の基準地震動も過小評価である可能性があります。
美浜原発3号機の基準地震動について、強振動の専門家の意見を聞く場を設けて、過小評価となっていないかどうか、再検討をすべきです。
その検討の間、美浜原発3号機の新規制基準適合審査は中止すべきです。
さらに、現在の新規制基準審査には、今年の4月に公開されたIAEAのIRRSミッション報告書で指摘された点があてはまります。たとえば、以下です。
-検査官の研修が不十分であり、権限が限られており、検査と検査の間の期間が長い。
-ほとんどの日本の原発が、4〜5年にわたり稼働していないことに関し、IAEAは原子力規制委員会がこれほど長期にわたり稼働していない原発に関する海外の経験を十分に検討していない。
-文書上の確認に審査の時間のほとんどが費やされており、実地検査は限られている。

これらは審査に関わる深刻な欠陥です。これらが是正されないまま美浜原発3号機の審査を進めるべきではありません。

また、関西電力美浜原発3号機の新規制基準審査の問題点についての問題点を以下に挙げます。

-設計が旧式であること・老朽化していることの審査が不十分であること

美浜原発3号機は、今年12月に運転開始から40年となる老朽原発です。例えば、関西電力は、新規制基準で求められている全ケーブルの難燃化について、交換が難しい場所について、防火シートで覆うなどで代替するとしており、効果は実証試験により確認するとしています。しかし、審査書案では実証試験の結果を検証することなく、それを認めています。また、老朽化原発では、原子炉圧力容器が中性子照射により脆化しますが、新規制基準適合性審査では審査されていません。

 

-避難計画が審査されないこと
避難計画に実効性がなければ過酷事故の際に住民の命・財産は守ることができませんが、それについては原子力規制委員会で審査されません。また、避難計画を了承するのは内閣府ですが「審査」は行なっていません。避難計画についても、原子力規制委員会で公開で審査をするべきです。

 

-原発の運転について住民合意及び周辺自治体合意が不在であること

過去、審査書案についてのパブリックコメントは十分に反映されていません。大島元原子力規制委員は、九州電力川の内原発の再稼働審査適合審査書案へのパブリックコメントについての議論の中で、「形式的なものに終わってはならない」「フォローアップが必要」と発言していましたが、この発言が具体的な取組みにつながっていません。パブリックコメントにて推薦された専門家への意見聴取を行うなど、具体的に反映させる仕組みを作るべきです。
また、今回、地元福井県や周辺自治体での公聴会も開かれていません。住民主催の公聴会や討論会への参加要請にも真摯に応えてください。

 

-プルトニウムMOX燃料使用のリスク評価がされていないこと
プルトニウムが予め入っているMOXが燃料では、ウラン燃料だけを使用した場合に比べ、事故のリスクは増大し、規模は拡大すると言われています。しかし、本審査書案では、MOX燃料使用によるリスク評価もありません。さらに、使用済みとなったMOX燃料については、六ケ所村再処理工場での保管ができないため、美浜原発サイト内での保管となります。そのリスク評価もないのは明らかに審査の欠陥です。

 

 
 
美浜原発で過酷事故が起これば、数十キロほどしか離れていない琵琶湖に深刻な影響を及ぼします。琵琶湖は関西圏1450万人に飲料水を提供しており、影響は計り知れません。世界遺産17カ所を抱える京都府は60キロ圏を含みます。しかし、こうした周辺地域の過酷事故の場合の影響評価は審査には含まれていません。

 以上

参考情報:こちらの、美浜の会/避難計画を案ずる関西連絡会/原発なしで暮らしたい丹波の会/グリーン・アクション/原子力規制を監視する市民の会 の5団体による参考意見や資料もぜひ、御覧ください。


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