世界中が、どうやって石炭火力発電事業から引き上げて、自然エネルギーを増やすかを考え、実現に向けて動き回っているなか、日本は長い間、先進諸国の中でも「例外」でした。でも、いま変化の兆しが見えてきました。
石炭火力発電は日本の全発電量の3割を占めています(1)。現在、約100基の石炭火力発電所が稼働しており、発電事業者はさらに約40基の新規建設計画をかかげていました(2)。この新規建設計画の数は、先進諸国の中でも飛び抜けていて、日本に次ぐポーランドや韓国と比べても目をみはる多さです。
さらに石炭火力発電を増やそうという計画は、気候変動の専門家たちの勧告とは対照的なものです。有力な科学者たちは、壊滅的な気候変動を避けるために、石炭火力発電を拡大する余地はまったくなく(3)、既存の石炭火力発電所は早急に閉鎖されるべきだと報告しているのです(4)。
日本政府や発電事業者の多くが石炭火力発電を推進していることにくわえ、日本の民間銀行が、海外の石炭事業にも多額の融資をしていることもとても気がかりです。国際NGOバンクトラックの調査によると、2014年から2017年の石炭事業への融資額で、みずほ銀行は世界第1位、三菱UFJ銀行は世界第2位、そして三井住友銀行は世界第5位、ということがわかりました。
これらの民間銀行は、国内の石炭事業にも融資をしています。グリーンピースが調べたところ、300億米ドル(約3兆3,300億円)近くもの金額が石炭火力発電所13カ所に社債引き受けという形で資金提供されていることが明らかになりました(6)。
それでも、日本の状況は素早い変化を見せはじめています。日本が石炭火力発電から自然エネルギーへ向かう世界の潮流に乗りつつある、4つの兆候をご紹介します。
石炭事業における問題点の兆候がここ数ヶ月で最初にはあらわれたのは仙台で計画されていた事業でした。四国電力が「事業性が見込めない」ことを理由に事業から手を引いたのです(7)。仙台では、石炭火力発電所の拡大に反対する市民たちが積極的に活動をつづけ、訴訟も起こしています。この計画は、共同事業者である住友商事がまだ検討を続けているため、完全に中止とはなっていませんが、石炭事業が経済性のないビジネスであることが明らかになった一例です。
仙台での撤退に続き、さらに良いニュースが。
さらには兵庫県高砂市で計画されていた2つの石炭火力発電事業が完全に中止されました(8)。年間700万トンと予想されていたCO2排出を防ぐ結果につながりました。
ここ数週間では、金融機関からも良いニュースが届きました。まずは、保険会社のなかでも日本最大級である日本生命保険が、新規石炭火力発電所の建設プロジェクトへの融資を停止することを検討していると報道されました(9)。時を待たずして、さらなる吉報が。第一生命保険が、海外石炭事業への新規融資をやめる方針を決定したのです(10)。
吉報はまだ続きます。今度は銀行から。三井住友銀行の國部毅社長が決算会見のやりとりのなかで、石炭事業への融資を「厳格化することを検討している」と話したのです。理由は、「石炭火力発電は気候変動への影響が大きい」から、でした(11)。
多くの欧米各国の銀行とは対照的に、いまのところ石炭事業への投融資方針を公表している日本のメガバンクはありません (12)。ですから、三井住友銀行のこうした動きは、大きなゲームチェンジャーとなりそうです。次に気になるのは、具体的にどういった内容の方針を計画しているのか、そして三菱UFJ銀行とみずほ銀行は、いつこの動きに続くか、ということです。
私たちが見ているこの変化は、ほんのはじまりでしかありません。石炭に投融資されている巨額の金融資産を、自然エネルギーとエネルギー効率化技術への投資にシフトするなど、自然エネルギーが巨大な石炭産業に取って代わるには、まだまだ仕事が残されています。しかし、ひとたび変化が起これば、もう後戻りすることはありません。
深刻化する気候変動に、少しばかりの希望が見えてきたのではないでしょうか?
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出典:
もっと知りたい方へ
5/16, 17【勉強会】どうして日本は石炭火力を新しく作ろうとしているの?世界はどうなっているの?
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東京湾にも石炭火力発電所の影
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