こんにちは。核・エネルギー担当の鈴木かずえです。
 
原発事故被災者を支援する法案(「子ども等に特に配慮して行う東京電力原子力事故の被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(案))が近々国会で審議されます。

「被災者一人一人が、第七条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であって適切に支援するものでなければならない」

これが基本理念です。

「離れるも留まるも、ひとりひとり自分で決めてくださいね、支援はどちらの場合でもしますから」と国が約束してくれるのです。

とってもすばらしい理念の法律だと思います。

法案をまとめられた谷岡郁子議員、川田龍平議員、森まさ子議員をはじめ、ご尽力された国会議員のみなさま、ありがとうございます。

さりながら、この法案について、三つ、大きな懸念があります。
・支援対象地域はどこか、
・医療の提供が子どもと妊婦さんだけ
・医療の提供の範囲ーどこまでカバーされるのか

 

支援対象地域は、原発事故被災者の意見を聞いて幅広く設定を

「第七条第一項の支援対象地域」ってどこだろ?と思いますね。

第七条第一項で支援対象地域とは「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが、一定の基準以上である地域」
となっています。その「一定の基準」は、今のところ、省令などで定めることが想定されています。

省令だと、国会ではなく、「避難の基準は年間20ミリシーベルト」としている政府が決めることになってしまい、心配です。

きちんと、投票で選ばれた国会議員のみなさんに、国会で話し合って決めていただきたいですね。
チェルノブイリでは、支援対象地域も、法で定められています。

支援対象地域については、国会の議論で決めていくこと。
その際、被災自治体や住民の意見を聞いて、反映させることをお願いしたいです。
(法案第十三条「国は、第七条から前条までの施策の適性な実施に資するため、当該施策の具体的な内容に被災者の意見を反映し、当該内容を定める課程を被災者にとって透明性の高いものとするために必要な措置を講ずるものとする」とありますしね!)


医療の提供は、子ども、妊婦、そして大人も

健康診断について、「少なくとも」事故時に子どもであった人は一生涯健康診断が受けられることになっているけれど(第十二条二項)、
法律で「少なくとも」ってどのくらいの重みがあるのでしょう。大人も含め健康診断を受けられるよう、求めます。
グリーンピースが行った福島事故被災者「みんなの健康アンケート」でも、約8割の方が「健康診断の無料化」を望まれていたのです。


原発事故がなかったら、かからなかった病気は幅広く補償を

医療の提供の範囲は「東京電力原子力事故に係る放射線による被ばくに起因しない負傷又は疾病に係る医療を除いたもの」となっています(第十二条三項)
提供を受けるのが子どもと妊婦さんだけなのも困りますが、「起因しない」って誰が決めるんでしょう。今のところ政府が「リスト」を作って、そのガイドラインを参考に、現場のお医者さんが決めることが想定されているようです。けれど、「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)」の福田弁護士は「認定基準を作り、その範囲で医師の意見を聞いて認定するというのは、公健法(水俣病)や被爆者援護法の仕組みと同じです。役所が作る認定基準は極めて狭くなり、ここから漏れた人たちは行政訴訟を起こさなけばなりません」と述べています。

放射線が原因でない、と証明できない限り、幅広くカバーしていただきたいです。


最も求められる健康管理手帳の交付

実は、グリーンピースがまとめた原発事故被災者みんなの健康アンケートでは、医療の無料化より健康診断を必要とする方が圧倒的でした。
「無料化よりも本当は医療が必要ないように早く不安をなくしてほしいです」(中通り・女性)
そして、最も必要な制度とされたのは「健康管理手帳の交付」でした。
これは、きちんと事故被災者を登録して、その方がどこに移動されても、きちんと健康管理ができるようにするものです。
この法案の問題点を明らかにし、修正なりしていただき、そして、この法案を使って、「健康管理手帳」制度を始め、必要な被災者支援を実現させていきましょう。

この法案は、国会議員のみなさんが、福島のみなさんやNGOの意見を聴きながら、作ったものです。よりよい法案にしていきましょう。
そのために、国会で明らかにしてほしい疑問点や要望を、みなさんの地元の国会議員さんにお伝えしてください。そして、この法案が審議される「東日本大震災復興特別委員会」を傍聴したいと思います。インターネットでできますね。


関連ブログ
原発事故被災者支援法、一本化
再稼働より被災者支援を急いで...国会議員に働きかけを
原発事故被災者「みんなの健康アンケートまとめ」

*5/29「原発事故被害者援護特別立法を求める緊急院内集会 」に参加された国会議員、NGOの仲間、弁護士のみなさまにこの法案について、いろいろ教えていただきました。おかげさまで、ここがおかしい、こうしてほしい、という整理ができました。あらためてお礼申し上げます。