こんにちは。核/エネルギー担当の鈴木かずえです。

 

(復興庁資料より)

東京電力の福島原発事故被災者の人権が踏みにじられようとしています。

あなたの助けが必要です。

 「子ども被災者支援法」は、原発事故で汚染された地域から、避難する・残る・戻るなど、当事者がどう決めても、適切な支援を受けることができる、と謳っています。

政府による避難指示区域外も、支援対象地域になっていることから、この法律は、とくに避難指示区域外の避難者にとって「希望」と言われてきました。

実際には、避難指示区域外の避難者には、この法律による具体的な支援はあまりありません。

それでも、「避難していいんだ」という精神的な支えとなってきました。

ところが、「避難指示区域以外から避難する状況にはない」として、「避難支援対象地域を縮小もしくは撤廃」するという基本方針の改定案が、最近、復興庁から出されました。

避難区域外でも、高線量が確認されています。グリーンピースの調査でも明らかです。

今回の改訂案は、避難区域外からの避難者に認められた避難の権利をうばう、人権侵害です。

あなたも、ぜひ、この「改定案」に対し、パブリックコメントを提出してください。

グリーンピースもトピック別に三件、出しました(末尾をご覧ください)

いますぐ送る、という方はこちら

 

 

基本方針改訂案のここが問題

支援対象地域はむしろ拡大すべき

-支援対象地域(避難指示区域を除く福島県中通り及び浜通りの市町村)について、「縮小、撤廃」することが適当としています。

「被災者が、いずれの地域かにかかわらず定住支援をする」という方針案と、支援対象地域を縮小、撤廃の方向性は矛盾しています。

支援対象地域を縮小、撤廃し、支援が打ち切られるならば、被災者は経済負担の少ない「帰還」という選択肢を取らざるをえなくなります。

また、現状の支援対象地域および福島県隣接県の一部の地域では、ウクライナで定められている生涯被ばく限度の70ミリシーベルトを超える可能性もあります。支援対象地域はむしろ拡大すべきです。

 

甲状腺がん以外も検査すべき

-  「今回の事故による放射線被ばくによる生物学的影響は現在のところ認められておらず、今後も放射線被ばくによって何らかの疾病のリスクが高まることも可能性としては小さい」などとし、「甲状腺がん」以外の疾病についての言及がありません。

チェルノブイリの経験では、「甲状腺がん」以外にも、呼吸器疾患、肝臓組織の疾患、血液系障害、免疫障害などが確認され、総合的な健康診断が続けられています。

日本でも、「甲状腺がん」以外の疾病に関しても幅広く検査をすべきです。

 

被害当事者の声を反映させるしくみをつくるべき

- 「基本方針見直し際には、被災者支援民間団体等とも連携する」とあるが、見直しの際には、原発事故被害当事者の意見を聞くべきです。

改訂案では「避難指示区域以外から避難する状況にはない」としていますが、避難する状況にあるかないかは、行政が住民の意見も聞かずに勝手に決めていいことではありません。

子ども被災者支援法は、「基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」としています。

そのための、被災当事者の意見を反映させるしくみ-たとえば恒常的な協議機関を設けるべきです。

 

避難指示の解除、被害者賠償の打ち切り、そして今回の「子ども被災者支援法基本方針の改訂」は、国が東京電力の福島原発事故を、早くなかったことにしたい、という意思の表れです。

許されないことです。

ぜひ、このパブコメは出してください。〆切は8月8日17時です。

これほど大事なパブコメなのに、パブコメがあること自体、ちっとも知られていません。

「知らせる」「出す」「出したよ、と共有する」の3つのことを、ぜひ、してください。

 


出し方は4通りあります

 

 ネットから

 電子政府の総合窓口のサイトの「意見提出フォームへ」のボタンを押して、フォームから

 Eメールで  

  復興庁 法制班 宛

所属、氏名、住所(法人又は団体の場合は、名称、担当者の氏名、主たる事務所の所在地)及び連絡先(電話番号又はメールアドレス)を明記

 FAXで

意見提出様式(こちらのリンクの別紙)をダウンロードして記入、03-5545-0525

復興庁 法制班 宛

 郵送で

意見提出様式(こちらのリンクの別紙)をダウンロードして記入、以下へ郵送

〒107-0052 東京都港区赤坂1-9-13 三会堂ビル6階
復興庁 法制班 宛

(ワープロなど使用の場合は「意見提出様式」の記入要項に即して記入)


お知らせ

FoE Japan 主催:7/29 「子ども・被災者支援法」基本方針改定 に関する政府交渉と記者会見にもぜひご参加ください。

◆日時:2015 年 7 月29 日 (水)10:00~13:30

◆場所:参議院議員会館B107(最寄り駅:東京メトロ・永田町、国会議事堂前)

◆資料代:500円 (遠方の方々の交通費をまかなうためのカンパ歓迎!)

◆主催/問い合わせ:FoE Japan 090-6142-1807(満田)

くわしくはこちらを

 

参考サイト

パブコメ・ガイド PDF版 - 国際環境NGO FoE Japan

「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟などが支援法基本方針の改定案撤回を要請

OurPlanetTV【アーカイブ動画】子ども被災者支援法改訂説明会(福島)

福島「避難する状況にない」〜子ども被災者支援法基本方針改定へ

 

関連資料

チェルノブイリとウクライナの子どもたちの健康

関連サイト

原発子ども・被災者支援法が可決しました!(法文や概要など)

グリーンピースも、またまた、出しました<8月7日追記>

対象部分「その他被災者生活支援等施策の推進に関する重要事項」

改訂案に「基本方針見直し際には、被災者支援民間団体等とも連携する」とあります。しかし、見直しの際には、原発事故被害当事者の意見を聞くべきです。

子ども被災者支援法は、「基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」としています。

しかし、基本方針の策定に際して、被災者を対象とした公聴会などが開かれることはありませんでした。

今回も、申し込み制の“説明会”が東京と福島で開かれたのみで、被災者の意見を聞くための公聴会は開かれませんでした。

改訂案では「避難指示区域以外から避難する状況にはない」としていますが、避難する状況にあるかないかは、行政が住民の意見も聞かずに勝手に決めていいことではありません。

ICRP(国際放射線防護委員会)は、その勧告111の中で、放射線防護対策の最適化をはかるために、住民を含めたステークホルダーの関わりが重要であるとしています。

基本方針の見直し、施策に被災当事者の意見を反映させるために、恒常的な協議機関を設けるべきです。

  

グリーンピースも、また、出しました<8月6日追記>

対象部分 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項について

改訂案は、被災者の「住宅確保」について、福島県が、避難指示区域以外からの避難者に対する応急仮設住宅の供与期間を平成29年3月末までとしたことについて「整合的」であるとした。しかし、住宅供与の停止は、避難を続けたい方、あるいは移住を選択したい方で新居に移ることが経済的に困難な方に「帰還」を強いてしまいます。

これは、子ども被災者支援法が「居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができる」ように、「そのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」としていることに矛盾しています。

基本方針は、子ども被災者支援法で定めたことから逸脱してならないはずです。

また、健康面においては、「事故初期における被ばく線量の把握・評価の推進、福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握、福島県の県民健康調査『甲状腺検査』の充実、リスクコミュニケーション事業の継続・充実に取り組むこと」としています。

しかし、子ども被災者支援法は「国は、被災者の定期的な健康診断の実施その他東京電力原子力事故に係る放射線による健康への影響に関する調査について、必要な施策を講ずるものとする。この場合において、少なくとも、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者(胎児である間にその母が当該地域に居住していた者を含む。)及びこれに準ずる者に係る健康診断については、それらの者の生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講ぜられるものとする」としています。今回の改訂案は子ども被災者支援法で言っていることよりも後退しており、さらに具体性がありません。

たとえば初期被ばくの把握についても、疾病罹患動向の把握についても、どのように担保するかを書き込むべきです。

基本方針では、子ども被災者支援法の条文でうたっていることを、どのように実現させるかという具体的なものであるべきです。上記で述べている「必要な措置」とは何かを明らかにし、実施していくものであるべきです。また、法文では健康診断については「甲状腺検査」に特化していないのに、基本方針では「甲状腺検査」にしか言及していません。

チェルノブイリの経験では、「甲状腺がん」以外にも、呼吸器疾患、肝臓組織の疾患、血液系障害、免疫障害などが確認され、総合的な健康診断が続けられています。

参考資料「チェルノブイリとウクライナの子どもたちの健康」

日本でも、「甲状腺がん」以外の疾病に関しても幅広く検査をすべきです。さらに、国の責任で、被災者の検査・治療を生涯無償化すべきです。

 

グリーンピースも、出しました。<7月31日追記>

(対象部分)改訂案の3ページ目 「支援対象地域に関する事項」 9行目

基本方針改訂案では、
「現在の支援対象地域内の空間放射線量は、原子力規制庁が実施している航空機モニタリング結果に基づき推計した外部被ばく線量によると、原発事故発生時と比べ、大幅に低減しており、生活圏として既に年間1~20 ミリシーベルトの線量域の下方部分にあり、各市町村で実施している個人被ばく線量の測定(支援対象地域内での実施 12 市町村の直近の各平均は、既に年間1ミリシーベルト以下)、福島県が実施しているホールボディ・カウンタ検査、厚生労働省等が実施している食品検査等からは、「長期目標」をも満たしつつある」とし、次の段落で「長期目標」として「年間1~20 ミリシーベルトの線量域の下方部分から選択すべきである」および「帰還後に個人が受ける追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下になるよう目指すこと」を併記しています。

これでは長期目標が「年間20ミリ下方」なのか「追加被ばく年間1ミリ」なのか不明です。
長期目標だけを掲げずに、短期目標も掲げて、それについて検討すべきです。
すでに原発事故から4年以上が経過しており、これまでの積算被ばくを考えれば、現状で20ミリの下方という選択はありえません。初期被ばくをあわせて、生涯被ばく線量も検討すべきです。

また、それ以前に、現状の被ばくを、航空機モニタリング結果に基づく推計と、各市町村で実施している個人被ばく線量からの推定におくのでは、過小評価は避けられません。最も被ばくを受ける人、を基準にして考えるべきです。

参考 グリーンピースによる福島県福島市放射線調査結果:http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/monitoring/23rd/


また、「支援対象地域は縮小又は撤廃することが適当である」としている。
これは、前項の個人被ばく線量が過小評価されていること、また、当事者の意見を反映させていないこと、さらに1ページにある「被災者が、いずれの地域かにかかわらず定住支援をする」という方針案と矛盾していることから、撤回されるべきです。

支援対象地域を縮小、撤廃し、支援が打ち切られるならば、被災者は経済負担の少ない「帰還」という選択肢を取らざるをえなくなります。

また、現状の支援対象地域および福島県隣接県の一部の地域では、ウクライナで定められている生涯被ばく限度の70ミリシーベルトを超える可能性もあります。支援対象地域はむしろ拡大すべきです。

以上