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こんにちは、エネルギーチームリーダーの高田です。昨日6月28日、東京電力の株主総会に参加してきました。
グリーンピース・ジャパンは、脱原発と一刻も早い自然エネルギーへの移行を求め、株主総会に参加し、会社へ株主提案をしたり、議決権を行使するためために、東京電力と関西電力の株式を最小単位で(100株)購入しています。
株主総会では、経営陣の目を見ながら提案し、提案理由を述べることができ、会場に参加している株主や報道関係者にも直接伝えることができます。今回、グリーンピースは放射能汚染水の放出禁止を求める株主提案を出しました。
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写真:総会入り口にて。手にしているのは、議決権行使書が入った東京電力からのお知らせです。

株主総会は、その会社の基本方針や役員人事など重要な決定を行う場です。株主は、事前に株主提案を提出することができ、株主総会ではその議題について、株主と会社の両方から説明があり、賛否の採決をします。

東京の代々木第一体育館で行われた第92回の東京電力株主総会。株主として議決権を行使できる53万6000人のうち、11万4000人が当日出席、またはおよび代理人やインターネットを通して議決権を行使しました。
会社からと株主からの合計11の議案について賛否を表明しました。 

写真:会場内部。出席者は広い会場の3分の1ほどでした。 

脱原発など、株主提案はすべて否決に

今年の株主総会では、合計10の株主提案(議決権を持つ株主が会社に実施を求める提案)がありました。

そのうちの一つは、「原発を早期に再稼働してほしい」という3名の株主からの提案、残りの9件は脱原発を求める303名の株主からの提案です。それぞれの内容を簡単に紹介します。なお、原発推進、反対の両方とも、株主からの提案はすべて否決となりました。

写真:グリーンピースが提案した汚染水の海洋放出禁止について、取締役会からの回答 

汚染水の海洋放出は禁止を

グリーンピース・ジャパンは、「脱原発・東電株主運動」(詳しくはこちら)のメンバーとして第6号機案「放射能汚染水の海洋放出の禁止」を東京電力に提案しました。

とくに問題にしているのは、機械でも取り除くことができないトリチウムの放出です。 

壇上の経営陣と会場の株主のみなさんに向けて、
トリチウムは人体に害があること(細胞に取り込まれ、遺伝子を攻撃、故障させる)、海外でも核施設の周辺で多発する疾病にトリチウムの関与の可能性が指摘されていること、東京電力福島第一原発で保管中のトリチウムの濃度は高く、量も膨大なこと、また、福島県の漁業者から「放出は沿岸漁業の生命を断つ」行為であり「風評ではなく実害になる」との声があがっていることを訴えました。
これに対して東京電力の取締役会からは、上の写真(株主総会の開催通知)のように、「関係者と協議して決定する」との回答でした。
トリチウムを含む汚染水について、政府は、海洋放出することが最も短期間・低費用だとの試算を示していますが、トリチウムを含む汚染水を環境中に放出すべきではありません。
グリーンピースは、2013年に放射能汚染水の海洋流出についてブリーフィングペーパーを発表(こちら)、安倍首相への署名提出を行い(こちら)、今年春には国際環境NGOとして福島県沖の海洋調査を実施するなどしています(調査結果の発表は7月末の予定です)。
残りの9件の株主提案の概要は、ブログの一番最後で紹介します。

写真:会場の様子。参加者は中高年の男性が大多数。前に並んだ取締役25名も1人を除き全員男性でした。

「3年連続で経常利益を計上」

10時からスタートした総会では、まず会社側から事業報告がありました。
東京電力は今年4月から、ホールディングカンパニー制に移行し、原発関係を含む全体を統括する東京電力ホールディングスの元に、燃料調達と火力発電、送電事業、小売事業の3つの会社ができました。私たちにいちばん馴染みが深い家庭への電力供給は、小売事業の東京電力エナジーパートナーが担当です。

 コスト削減などを通じて、3年連続で経常利益を計上することができた、と報告がありました。

経常利益は、会社の「儲かり具合」をみる指標。今年度の東京電力の経常利益は前年より増えて3259億円でした。

「最後のお一人まで賠償を貫徹します」 

また、東京電力ホールディングスの廣瀬社長は、福島第一原発事故の被害者への賠償について、「被害者に徹底的に寄り添い、最後のお一人まで賠償の貫徹に取り組む」と強調
その言葉通りを期待しますが、被害者からは「被害者の切り捨てをしないで」という切実な声が聞こえます(たとえば、こちらのグリーンピースのブログで紹介)。

「隠蔽だったと考えている」

今月、福島第一原発事故発生直後に、原子炉で「炉心溶融」が起きていたのに、当時の清水正孝社長が「炉心溶融という言葉を使うな」と指示し、その事実を事故から4年間公表しなかったことが明らかになりました(報道記事の例)。

 これについて、今日の株主総会では、廣瀬社長から「ご迷惑とご心配をおかけし、お詫びする」、數土会長からは「隠蔽だったと考えている」との発言がありました。 

写真:総会出席者に配布される入場表。会場には1200人ほどが参加したとのこと。

会場からは14件の質問、うち8件が原発関係

会場からは、合計14件の質問がだされ、8件が原発について(原発反対が3件、推進が5件)、電力自由化関連が3件、その他が3件でした。

途中、原発反対、賛成の両方から多くのヤジが飛び騒然となる場面が何度かありました。

原発のない未来を望む私とあなたができること

東京電力は、電気を販売する会社です。私たちはこれまで、家庭で電気を使いたければ、自宅で発電しないかぎり、東京電力など地域独占の電力会社に料金を支払い電気を買うしかありませんでした。

でも、状況は変わりました。今年の4月から電力市場が自由化され、すでに数百社が参入、一般家庭でもどの電力会社と契約するかを選べるようになりました

 今日の株主総会で、昨年度は東京電力の販売電力量が約4%減との報告があり、報道(こちら)によるとすでに71万世帯が東京電力から他社に契約を変更しています。

契約変更の理由は様々あると思いますが、原発事故を起こしてもなお原発の推進を続ける東京電力から他社に乗り換える顧客が増えることは、確実に、原発推進に使われるお金を減らすことにつながります。

via GIPHY

 グリーンピースでは、100社以上の電力会社にアンケートを行い、各社の電気が何によって発電されているかをまとめたガイドを作成しました。「電力会社を乗り換えたい」と意思表示するiSwitchに参加してくださった全員に無料で閲覧にご招待しています。ぜひ、ご覧ください。

グリーンピースは、政府や企業からお金をもらっていません。独立した立場だからこそできるこうした活動で、私たちの知らないところで進む環境破壊や汚染を明らかにしています。脱原発と一刻も早い自然エネルギーへの移行を求めるために、寄付という形でも一緒にグリーンピースと活動していただけませんか。

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この日は、全国各地で大手電力会社の株主総会が同時に開催され、同僚の柏木は関西電力の総会に出席。こちらに報告ブログがあります。


 グリーンピース株主提案の全文
<第6号議案・汚染水の海洋放出の禁止>
東京電力は放射能汚染水について「汚染源を取り除く」「汚染源に水を近づけない」「汚染水を漏らさない」という3つの基本方針をもっているが、どれも効果をだせていません。
トリチウムは、水素と似た性質をもち、活発に環境中を移動・循環し、人体にたやすく取り込まれます。トリチウムは、細胞に取り込まれ、遺伝子を攻撃、故障させます。
福島第一原発で保管中のトリチウムの濃度は高く、量も膨大です。EUでの飲み物のトリチウム水質基準は1リットルあたり100ベクレルですが、福島第一原発のタンクのトリチウムは1リットルあたり数十万ベクレルにもなります。
トリチウムを含む処理水の海洋放出について、東京電力の発電所における事故で甚大な被害を被った漁業者から空は「放出は沿岸漁業の生命を断つ」行為であり「風評ではなく実害になる」との声が上がっています。
カナダ、インドなどで世界中の核施設周辺での白血病やガンといった疾病にトリチウムが関与している可能性が指摘されています。東京電力がトリチウム水を環境に放出すれば、さらなる国内・海外での社会的反発や訴訟リスクも大いに考えられ、株主として非常に憂慮いたします。
よって、トリチウムを含む処理水の海洋放出・上記での大気放出を含み、環境への放出はせず、保管は漏洩リスクの比較的低い溶接型タンクへの移送を速やかに行うべきです。またその間に、トリチウムを分離する方法の検討を進めることが東京電力の取るべき道だと考えます。
株主提案の概要
1)電気料金の値上げを抑え、二酸化炭素の排出を削減するために、原発を早期に再稼働すべき
2)電力自由化時代に「選ばれる電力会社」として再生を願うなら、先頭を切って原発を放棄すべき
3)原発は170キロ圏内の自治体すべてで実効性のある避難計画が策定されたと判断されるまでは再稼働をすべきでない
4)新潟県知事が求めているように、柏崎刈羽原発の敷地内に原発管理会社の本社を設置すべき
5)石炭火力発電は「高効率」であっても天然ガスの約2倍の温室効果ガスを排出するので、石炭火力発電所の新設はすべきでない
6)福島第一原発の廃炉作業は、東京電力の役員や社員が率先して従事すべきだ
7)東京電力が筆頭株主である日本原燃株式会社は、六ケ所再処理工場を建設しているが、着工から22年、2兆円以上かけても完成せず、操業のめどは立っていない。また、同じく東京電力が筆頭株主の日本原子力発電株式会社には、多額の費用を支払っている。10兆円の税金の投入を受けている東京電力は、将来性のないこの2社への出資や債務保証をやめるべきだ
8)原発からの完全撤退を決めるまで、取締役の報酬を半分に減額し、それを訴訟の賠償金として積み立てるべきだ 
9)東京電力は、議決権件行使において株主の賛否の意思表示がない場合、会社提案については賛成、株主提案については反対として取り扱っているが、意思表示がない場合は棄権として扱うべきだ


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