こんにちは。エネルギー・チームのケンドラ・ウルリッチです。

2011年の東京電力福島第一原発事故は、世界中で次々と起こるニュースに押しやられて、遠い過去のような気がする方もいるかもしれません。

しかし、被害者の方々にとっては、何も終わってなどいません

特に、女性たちや子どもたちは被害に直面し続けてきました

福島第一原発事故を引き起こした政府と東京電力は、その後の失策で大きな被害を生み出してしまいました。

事故直後には、政府が放射能拡散予測のデータを開示しなかったため、たくさんの子どもや女性が、避けられたはずの高線量の被ばくをしてしまいました。

また、汚染について正確な情報が提供されず、福島県の小中学校は除染前の20114月中には授業の再開を許可されています。

放射能はすべての人にとって危険なリスクをもたらしますが、女性や子どもには、被ばくの影響がより深刻となることが科学的にも明らかになっています

男女格差=原発被害格差

女性が、より被害を受けてきた理由の一つは、日本社会の男女格差です。OECDの男女の賃金差ランキングでは、日本は34位。下から3番目です。

この男女格差のために、経済的な理由やパートナーと意見の違いから、避難ができなかった女性が数多くいます。子どもを放射能のリスクから守るために、別居や離婚をして母子避難を選んだ女性も少なくありません。

家族がバラバラになって生活するのは、精神的にも経済的にも、苦しいものだったでしょう。

女性の経済的立場の弱さを利用した政策

政府はいま、こうした女性たちの経済的立場の弱さをも利用して、被害者の帰還を促す早期帰還政策を進めようとしています

住宅支援は、避難区域外から避難した事故被害者の唯一の支援ですが、政府は住宅支援をこの3月末で打ち切ります

住宅支援を失う避難者のうち、数千世帯が4月以降の住居について「未定」と答えています。住居を失うリスクに直面しているのです。避難の継続を諦めざるをえない家庭もでてくるでしょう。

また、この3月、4月で汚染の非常に高い地域の避難指示が解除となります。1年後には、賠償も打ち切りとなります。

帰還政策に投入された巨額の税金

広大な立入り禁止区域が残れば、原発事故がどれほど取り返しのつかない被害をもたらすかを人々に思い起こさせてしまう。政府は、被害者の帰還を急ぐことで、放射能汚染は除去でき、人々は事故前の暮らしに戻れる、ということにしたいのです。

そうして、巨額の税金が「除染」に投入されています。

政府は、避難指示を解除するために、避難指示区域の「除染」を優先して来ました。政府は除染が終了したとしていますが、依然として放射線レベルは高いままです

その一方、いま人々が暮らしている地域の除染の優先されてきませんでした。事故から6年たった今も、住宅地でホットスポットが見つかっているのはそのためでもあるのです。

意図的な人権侵害

日本政府は事故直後に放射能汚染の情報を開示しなかったり、除染がすべての土地で終わった訳ではないのに100%完了」したと言わんばかりの情報提供をしたりと、人々の知る権利を尊重しているとは言えません。

また、住宅支援や賠償の打ち切りは、住民の声を聞くことなく進められています。表向きは人権によいことをしていると言いながら、実際に早期の帰還を促すのは、意図的な人権侵害です。

あなたや私が声をあげなければ、変えられない

しかし、女性たちは、口を閉ざした被害者でいるわけではありません

福島県から京都に避難して、政府と東京電力を相手に裁判を起こした、勇気ある女性たちに出会いました。どうして裁判に関わろうと思ったのかお聞きすると、こう話してくれました。

「初めは自分が裁判なんてするなんて考えられませんでした。でもやっぱり、自分のことではなくて、私たちの子どもとか、そのさらに次の世代の子どものために、今この裁判を頑張ろうと思いました」

「子どもたちをまもりたい」

その強い思いで声をあげ続けるこのような女性たちが、日本中にたくさんいます。でも、あなたや私が、日本中で、世界中で一緒に声をあげなければ、政府は動きません。勇気ある女性たちと一緒に、声をあげましょう。

国際署名に参加して、あなたも力を貸してください。そして、安倍政権に、原発事故の被害者の女性と子どもたちの権利をまもることを求めましょう。

「被害者の人権をまもって」今すぐ署名する >

英語版国際署名はこちら

報告書「格差ある被害」全文はこちら

2012年に福島の被災者の人権状況の調査を行った国連人権理事会の特別報告者は、日本政府に対して、具体的な勧告を行なっています。

グリーンピースは、他のNGOと連名で、国連人権理事会の特別報告者に、現状を検討するように求める書簡を送っています。4年に1度の人権状況審査にも意見書を提出する予定です。

グリーンピース・ジャパン ケンドラ・ウルリッチ


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