こんにちは。海洋生態系担当の岡田幸子です。

ほんの数時間まえ、こちら韓国・釜山で5日間の日程で行われていたマグロの国際会議『中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の北小委員会(NC)』が終わりました!!

グリーンピース WCPFC

写真:国際会議の様子です。

太平洋クロマグロを守るルールは決まったの??

北小委員会(NC)での決議は、まずメンバーのうち最低8カ国が会議に出席していなければならず、しかも各国の総意を得なければなりません。
マグロの資源だけを考えての議論なら、それもまだ容易いのかもしれませんが、実際そこには各国それぞれの経済的・社会的な利害も絡んで来るので、総意が簡単なことでないことは、過去の委員会をみても明らかです。
でも正直、「今回は初日から飛ばしてるなぁ」、「予測される事態を勘案しつつ時間配分をきちんとしてるなぁ」という印象を受けました。決めよう、決めなくちゃという気概を議長やメンバー国から感じました。
はい、そうなんです。12月にあるWCPFC本会議に提言する内容が今回の北小委員会で、まとめられたのです!!もちろん、グリーンピースとして多少の不満はありますが、まず、どのような取り決めになったのか、日本が提案したものと比較して見ていきましょう。

グリーンピース WCPFC

日本の提案はそのまま認められたの?

前回のブログでも紹介したとおり、暫定回復目標は『2024年までにいまの約17,000トンから約41,000トンまで60%の確率で親マグロの数を回復する』です。ただ、この目標に対する漁獲管理措置として、日本は2つの提案をしていたのを覚えていますか?
1つ目の提案は、日本は回復の確率が60%を下回った時にとる措置として、
①30kg未満の小型マグロの漁獲量をへらす
または、
②小型マグロの漁獲をやめ、その分、30kg以上の大型マグロをとる
ことで、回復確率を最低60%に保つ、ことを提案していました。これに関しては、ちょっとした表現が訂正された以外は、ほぼそのまま採択されました。

グリーンピース WCPFC

2つ目の日本の提案は、『目標達成前に回復確率が65%を超えていれば、小型マグロ(30kg未満)の漁獲上限を増やすことができる』というものでした。でも、この65%という確率、予想されていたように、多くの国から『低すぎる』と強い反対を受けました。
3日に及ぶ話し合いの結果、この65%という回復確率は75%に引き上げられ、プラスアルファの条件が追加されました。小型マグロの漁獲量を引き上げるには、以下の条件が必要です。
①回復確率が75%以上である
②漁獲量を増加しても、回復確率は70%以上を維持する
③漁獲量を増加しても、期限までに中期回復目標の資源量を達成する可能性が最低60%ある
日本の提案通りには行かず、厳しい条件が加えられたことに、ひとまずはホッとしています。ですが、最初の目標である41,000トン(初期資源の約7%)まで回復する前に、小型マグロの漁獲量を増加できる可能性を残すこの措置に、不安や不満が残ります。

グリーンピース WCPFC クロマグロ

やっと長期回復目標に合意、大きな前進です。

昨年より先送りにされていた長期回復計画ですが、今回やっと合意されました。その内容に改善すべき点はあるものの、大きな前進であり、太平洋クロマグロの保全はようやくスタートラインに立ちました。
こちらは、日本の提案を元に手が加えられ、『2034年もしくは、親マグロが41,000トンに達っしたのち10年以内のどちらか早い方までに、初期資源(漁業が行われていないと仮定した時)の20%の量まで、少なくとも60%の確率で回復させる』というもので最終合意がなされました。
でも、例外として『目標達成期日が2034年より早かったとしても、以下の3つの条件全てに合致する場合のみ、2034年までに目標を達成すれば良い』ということになりました。
①2024年より早く、親マグロの数が41,000トンに回復
②北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)が、平均加入シナリオより低いシナリオを推奨
③親マグロの数が、計画通りに初期資源の20%に60%の確率で回復する見込みがない
グリーンピースとしては、長期回復目標が初期資源の20%回復確率が60%というのは、やはり低いと言わざるをえません。もちろん、この長期回復目標を確実に達成するための漁獲ルールの取り決めや、初期資源の20%まで回復したら必要となってくる目標管理基準値(目標とすべき資源量)や限界管理基準値(これより下回ってはいけない資源量)の設定が必要ですが、とりあえずは2024年までに41,000トンまで回復することを必ず達成してほしいと思います。

グリーンピース WCPFC

消費者の私たちにできることは?

今回の北小委員会では、ある程度の目標が決まりました。でもこれは12月に行われるWCPFC本会議へ提言する案が決まったにすぎません。何度も言いますが、太平洋クロマグロは、2.6%しか残っていません。みんなで出来ることを出来るところから始めましょう!
消費者である私たちは、やはりスーパーなどの小売業に『太平洋クロマグロの赤ちゃん(メジやヨコワ)を売らないで!!』と伝えることではないでしょうか?[1]

グリーンピース WCPFC

需要がなくなれば、供給もストップせざるを得ません。資源の減少に拍車をかけている、小さなマグロを薄利多売するスーパーではなく、ちゃんと資源の回復をまち、脂ののった大きなマグロを提供するスーパーマーケットにしたいですよね。
一人ひとりの声が集まれば、スーパーマーケットを通じて、いま日本の海との付き合い方を、もっとサステナブルに変えていけるはずです。そのためには、みなさんの力が必要です。


[1]日本では漁獲量の約9割がまだ産卵能力のない幼魚です。「太平洋クロマグロの資源状況と管理の方向性について:平成29年8月」水産庁 

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