2017/03/17 ペットフード業界最大手ネスレとマース、洋上転載を規制する方針発表 タイ・ユニオンは、人権問題と違法漁業の撲滅に向けた行動を

プレスリリース - 2017-03-17
2017年3月16日、ワシントンーー国際環境NGOグリーンピースは、国際的な世論の高まりを受け、世界のペットフード業界を率いるマースとネスレが、人権侵害及び違法に獲られた水産物を自社のサプライチェーンから確実に排除する方針を発表しました(注1)。マースとネスレは、漁獲した魚を洋上で運搬船に積み移す行為(洋上転載)を規制します。これにより、二社に水産物を供給する世界最大級の水産企業タイ・ユニオンは、自社のサプライチェーンから人権侵害やIUU(違法・無報告・無規制)漁業を根絶することが求められています。

ネスレは、自社のサプライチェーンにおける全ての洋上転載を禁止しました。マースは、人権問題やIUU漁業についてサプライヤーの対応が不適切な場合、洋上転載が行われた水産物の使用を一時停止することを発表しました。

洋上転載により漁獲した魚を海の上で別の船へと移すことで、船は長期にわたり港に戻ることなく水産資源を略奪し、規制を破り、漁師を労働力として拘束することが可能になります。洋上転載は、人権侵害に加え違法漁船が港の管理機関の目を避け、違法に獲った魚をサプライチェーンに紛れ込ませることにつながります。2015年における洋上転載のうち40%が、国の管轄外に当たる公海で行われたと推定されます。洋上転載はその他、麻薬、武器、野生動物の闇取引などの組織犯罪につながっています。

グリーンピース・アメリカ 海洋生態系担当 グラハム・フォーブスは「これまで多くのペットの飼い主や市民が、企業のサプライチェーンにおける人権侵害の撲滅を求めてきました。今回の洋上転載を規制する企業の動きは、積み重なる市民活動の結果です。ペットフード業界最大手のマースとネスレによる洋上転載規制の取り組みは、タイ・ユニオンのような水産物の供給企業がサプライチェーン改善に取り掛かるための追い風となります。グリーンピースは、今回のマースとネスレの方針が、海の生態系と労働者の権利を確実に守っていくよう、取り組みの進捗を見届けます」と述べました。

グリーンピースは、2016年12月に『Cats vs Bad Tuna』キャンペーンをマースに対して開始し、同社のサプライチェーンからいかなる人権侵害の疑いをも排除するよう求めてきました。グリーンピース・東南アジアが同年12月に発表したレポート『Turn The Tide(※日本語版『変化の波』近日発表)』は、ネスレやタイ・ユニオンを含む多数のサプライチェーンで、問題のある水産物が紛れ込んでいる可能性が非常に高いことを明らかにしました。レポートで名指しされたネスレは、問題に対する懸念を即座に表明しました。マースは今月、同社のペットフードのサプライチェーンで未確認の洋上転載について対応することを約束しています。

グリーンピース 洋上転載 海と人権をまもる

ネスレ・ピュリナペットケア  サステナビリティ部長 ジャック・スコットは「ここ数年間、ネスレとグリーンピースは、調達プロセスと責任ある水産物の調達を管理するための方針の強化をともに進めてきました。グリーンピースの調査結果に基づき、ネスレはすべての洋上転載を禁止するに至りました」と話しました。

マースとネスレの発表は、タイ・ユニオンに対し、サプライチェーンの洋上転載に対処するよう勧告するものです。グリーンピースは現在、労働者と海の環境のため、サプライチェーン全体における早急な改善を行うよう、タイ・ユニオンに呼びかけています。2015年よりグリーンピースは、タイ・ユニオンが水産業界のリーダーとなり、洋上転載を禁止し、乱獲や破壊的な漁業の問題に取り組み、海から食卓までのトレーサビリティーを強化することを求めています(注2)。 

マースペットケア グローバルサステナビリティ部長 イザベル・エールヴォットは「マースは、洋上転載が内包する危険性を認識しています。私たちは自社のサプライチェーンにおいて人権が尊重され環境が守られることを目指します。いま、非常に深刻な洋上転載問題に対し早急な対応が必要です。サプライヤーとともに対策を講じることを約束しましたが、私たちの求めるスピードでの問題解決が見込めない場合は、問題が解決されるまで洋上転載された水産物をサプライチェーンで扱うことを中止するよう努めます」とコメントしました。

最近、Global Fishing Watchによる新レポートが洋上転載の問題を浮き彫りにし、メディアで取り上げられています(注3)。同レポートによると、2012年から2016年までの間、5,000件以上の洋上転載が冷蔵貨物船で行われました。マースとネスレのサプライチェーンにおける人権侵害が疑われたのは、2015年のニューヨークタイムズの調査がきっかけです。

グリーンピースは、世界の著名な猫たちが今回のペットフード業界の前進を祝福する動画を公開しました(注4)。 

英語のプレスリリースはこちら 

注1)該当するブランド名:ネスレ(Purina, Fancy Feast)、マース(Iams, Whiskas, Dine)

注2)Greenpeace Sustainability, Labour, and Chain of Custody Asks for Retailers, Brand Owners and Tuna Companies 

注3)Global Fishing Watchレポート"The First-Ever Global View of Transshipment in Commercial Fishing" 

注4)ビデオ ”Cats score win vs bad tuna!”   洋上転載の画像はこちら


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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

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