グリーンピース調査:絶滅が心配されるニホンウナギ、大手小売業の不透明な調達と大量廃棄の実態が明らかに

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は本日4日、昨年9月から今年1月にかけて大手小売業18社(うち16社が回答)を対象に行なった、ウナギ加工品(以下蒲焼き)の調達に関するアンケート調査と、各社が販売した蒲焼きのDNA検査結果を発表しました。調査から、ウナギの調達はサプライチェーンが不透明で、トレーサビリティに重大な欠陥があること、また、ニホンウナギは絶滅危惧種であるにもかかわらず、処分量の回答があった5社だけでも昨年販売実績で、約2,730kgの蒲焼き(1匹200g換算で約13,650匹)が消費されずに廃棄されていた事実が明らかになりました。

主な調査結果と問題点

  1. 大手小売16社の主力はニホンウナギ。ヨーロッパウナギの販売はなし。

2017年に販売されたウナギの種を調べると、16社全てがニホンウナギの蒲焼きを販売。取扱量を回答した12社だけで、年間1,200トン超を販売していた。

  1. 絶滅危惧種のニホンウナギ、少なくとも5社で約2,730kgが食べられずに廃棄。

昨年、少なくとも10社(イオン、イズミ、オークワ、ダイエー、バロー、平和堂、マルエツ、ユニー、ライフ、ラルズ)では、消費者に購入されずに廃棄した商品があったと考えられ、うち処分量を回答した5社だけで、約2,730kgを廃棄。

  1. DNA検査とアンケートの回答に相違。仕入れ側も、ウナギの種を特定できていない。

ウナギの蒲焼き55点のうち2点で、アンケート調査で企業が回答した種とDNA検査の結果に相違があった。オークワとユニーは、「ニホンウナギのみ販売」と回答したものの、DNA検査ではアメリカウナギという結果が得られ、その回答にずれが見つかった。

  1. 11社で違法・無報告・無規制(IUU)漁業や不正取引への関与がないと保証できない蒲焼きを販売。サプライチェーンの全容も不明。

少なくとも11社(イオン、イズミ、コープデリ、西友、ダイエー、パルシステム、平和堂、マルエツ、ヤオコー、ユニー、ライフ)で販売されたニホンウナギの蒲焼きは、IUU漁業や不正取引への関与がないと保証できない商品だった。サプライチェーンの一部は、追跡不可能であることが判明。

  1. 全社、ウナギはIUU漁業への関与リスクが高いと認識しつつも販売。

回答した16社全てが「ウナギがIUU漁業や不正取引への関与リスクが高い魚である」と認識しながらも販売継続。しかし、そのリスクが消費者に語られることはない。

グリーンピース・ジャパン海洋生態系担当の小松原和恵は、「今回の調査から、ウナギの調達および消費には、環境・社会問題の両側面において解決すべき課題が山積みになっていることが改めてわかりました。特効薬的な解決策はなく、漁業・養殖業・販売業などウナギに関わる全てのステークホルダーが問題意識を共通のものとし、改善に向けた具体的な対策を講じることが必要です」と呼びかけました。
グリーンピースは、海洋生態系の保全活動の一環として、絶滅危惧種に指定されてもなお日本中で広く食されているウナギについて、スーパーマーケットを含む大手小売業の調達方針や問題意識に関する調査を、2013年より継続的に実施しています。今回の調査は、IUU漁業や不正取引への関与リスクが高いことで知られるウナギを原材料とする蒲焼きの取り扱い状況や調達方針に加え、サプライチェーンの透明性の如何およびウナギ調達における問題点を明らかにすることを目的に実施しました。

調査の概要

・DNA検査実施期間(蒲焼きの購入開始〜DNA検査終了) 2017年9月12日〜10月30日

・アンケート調査実施期間  2017年11月29日〜2018年1月22日

・対象企業 18社 イオン、イズミ、イズミヤ*、イトーヨーカドー、オークワ、コープデリ、西友、ダイエー、パルシステム、バロー、フジ*、平和堂、マルエツ、ヤオコー、ユニー、ヨークベニマル、ライフ、ラルズ *2社無回答

調査の詳細は、

グリーンピース・ジャパン ブリーフィングペーパー『不透明なウナギ調達の実態』

をご参照ください。

添付資料1 ファクトシート『今さら聞きたくても聞けないウナギ問題』

添付資料2 企業回答詳細『絶滅危惧種および準絶滅危惧種に指定されているウナギの加工品(蒲焼き)の取り扱い(2017年販売実績)』