国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は、本日、報告書『Less is more 少なくすることは、豊かになることーー肉・乳製品を減らして暮らしも地球も健康に』を発表しました(注)。増え続ける食肉生産は、生物多様性豊かな森林の破壊や、温室効果ガスの増加の主な原因の一つとなっています。肉食を減らすことは、非常に有効な気候危機対策であり、個人が身近にできる重要なアクションの一つです。また、人の健康やアニマルウェルフェア(動物福祉)の観点からも、重要な取り組みといえます。グリーンピースは2050年までに、動物性食品の生産および消費を世界全体で現状(2013年)より50%削減することを提案しています。

本報告書は、グリーンピース・インターナショナルが、地球環境と人の健康、食料システムの関連について、既存の科学的資料を調査し、2018年3月に発表した報告書の日本語版です。

要旨

  • 現在、気候変動を引き起こす温室効果ガス(GHG)総排出量の4分の1を占めるのが、農業に関連した土地利用の変化などをはじめとする食料システムである。
  • 対策を何も講じなければ、2050年には、食料システムに起因する排出量は、人間活動に伴う世界の総排出量の半分超を占める予測。
  • 食料関連の温室効果ガス排出量のおよそ60%を占めるのは、動物性食品である。
  • 食料システムは、現在、地球に残る最も生物多様性の豊かな森林を破壊する原因の80%を占めており、家畜や家畜飼料の増加は森林破壊に拍車をかけるひときわ顕著な要因である。
  • 動物性食品の消費の増加は、世界的な肥満の増加と関連づけられている。体によくない食べ物の消費が増えると、食生活が早期死亡の最大危険因子の一つとなり、病気リスクを高める。
  • 適切でない食生活(果物・全粒粉・野菜の低摂取および肉類の高摂取など)は、世界の早期死亡の主な危険因子で、死亡の5件に1件近くを占める。


グリーンピース・ジャパン  食と農業担当 関根彩子

「近年、猛威をふるい始めた気候変動をはじめ人為的な環境破壊を背景に、世界中で多くの生物種が急速に絶滅しています。今日、自分が何を食べるかは、地球規模で進む生物多様性や気候危機の進展とつながっています。つまり、植物性の食品を増やし、動物性食品を減らすという選択を通して、私たち誰もが、地球環境の未来を守ることに貢献できるのです。また、美味しさや健康のために植物中心の食を選ぶ人も増えています。地球環境と健康のために、政府や企業には、このような植物を中心とした食がもっと豊かに、またもっと身近になるように後押しする施策が求められています。」

(注)『Less is more 少なくすることは、豊かになることーー肉・乳製品を減らして暮らしも地球も健康に』
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関連資料:『気候危機を押し進めている森林破壊と食肉生産』  IPCC特別報告書『気候変動と土地』の分析 (2019年9月日本語版発表)