皆さん、こんにちは。海洋生態系担当の岡田です。

先週は夏日の所さえあったのに、今週は一転。10月中旬にしてはとても寒い日が続いていますね。

そんな中、南極からとても悲しいセンセーショナルなニュースが届きました[1]。


写真:目の周りの白いリングが印象的なアデリーペンギン
東日本の皆さんにはおなじみ、Suicaのマスコットキャラクターのアデリーペンギンに、とんでもないことが起きています。

フランス人研究者によると、アルゼンチンの南に位置する、南極大陸アデリーランド地方ペトレル島の約4万羽のアデリーペンギンのコロニーから、今年はたった2羽しかヒナが生き残らなかったというのです。

その原因は、ペトレル島周辺では海にただよう氷が増え、親ペンギンが餌をとる場所まで行くのに余計な時間がかかり、その間にヒナたちは飢えて死んでしまったというのです。孵化していない卵も島中で発見されました[1]。

実は4年前にも同じことが!


写真:アデリーペンギンのヒナたち
さかのぼること4年前の2013年にも、同じコロニーに同様の出来事がありました。その時は1羽のヒナさえも生き残らなかったのです。原因は、今回と同じで、周辺海域にただよう海氷の激増により、餌をとりに片道100kmも余計に旅をしなくてはならなかったこと。他にも、記録的な雨量にみまわれたこと[1]。ヒナたちの羽毛は防水性が乏しく、親ペンギンに守られていても、雨にぬれてしまっては体温をキープすることが不可能だったのです[1]。

海氷がふえたのは、一体なぜ?


写真:南極で氷ができる(結氷)現象
4年という短い間に、2度もこんな悲惨な出来事がおこったのは、2010年、東南極のメルツ氷河が断裂したことに原因があるのでは、といわれています。メルツ氷河からルクセンブルグとほぼ同じ大きさの氷片が分離したことで、同海域の海流の変化や、氷ができやすくなるなど、大きな影響を与えた、と考えられています[1]。この分離した断片は、世界人口の約1/3の人たちが、1年間に消費する水の量に匹敵します[2]。

また海氷は近年、増加し続けています。塩分を含んだ水のほうが凝固点(固まる温度)が低いのですが、近年の気候変動により大陸周辺の海に真水の量が増えたことで、海水の凝固点が上昇し、氷ができやすくなったことに起因する可能性も指摘されています[1]。

アデリーペンギンにしのびよる魔の手

この様に、いま大変な危機にさらされているペトレル島コロニーのアデリーペンギン。その生態には、人間の行動による他の危険も差し迫っているのです。それは、漁業の拡大とツーリズムによるものです[1]。

写真:南極アデリーランド地方にあるフランスのデュモン・デュルヴィル観測基地近くのアデリーペンギン
アデリーペンギンの餌であるオキアミの漁獲を、ペトレル島周辺の海で許可してしまうことは、漁船とアデリーペンギンによるオキアミ争奪戦になりうるということです。4年という短い期間に2度も繁殖に大失敗し大打撃をうけているアデリーペンギンのコロニー。やっとこの大打撃から回復したところに、オキアミ漁業によりさらに負荷がかかることは、絶対にさけなければならない事態です[1]。

写真:オキアミと呼ばれるエビに似た甲殻類。主にペンギンやクジラの餌になる。

ペンギンたちのパラダイスを作ろう!

南極海での海洋保護区設立の可能性を協議するため、10月16日から2週間の予定で、24の加盟国とEUが「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)」のためにオーストラリアのホバートで集まっています[1]。もちろん、日本もこの委員会の加盟国です。

写真:海氷の上のアデリーペンギン
海洋保護区は、主に商業的な漁業や石油採掘などの生態系に大きな影響を与える開発を制限し、そのエリアの生態系を守ろうという取り組みです。

去年、グリーンピース・ジャパンでもサポーターのみなさまにメールでお知らせしましたが、世界でいちばん大きい海洋保護区が南極ロス海に設立される事が決まったのも、まだ記憶に新しいのではないでしょうか[3]。

写真:氷河を移動するアデリーペンギン
4年という短い間に2度の繁殖大打撃をうけたペトレル島のアデリーペンギンたち。実は8年前、このペンギンたちが餌をとる海域を含んだ東南極を海洋保護区にしようという案が提出されています[1]。今年の委員会では、ペトレル島のアデリーペンギンたちに、これ以上の人為的圧力をかけないよう、東南極の海洋保護区の設立が期待されています。

グリーンピースは世界の海の40%が海洋保護区に指定されることをめざしています。ペンギンたちのパラダイスを作りたい!そう思うみなさん、海洋保護区設立の気運を盛り上げるため、ぜひこのブログをシェアしてください。


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参考文献

[1] The Guardians:Penguins starving to death is a sign that something’s very wrong in the Antarctic

[2] The Guardians:Giant Antarctic iceberg could affect global ocean circulation

[3]Sustainable Japan:南極海に世界最大の海洋保護区誕生。南極海洋生物資源保存条約で加盟国が合意

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