グリーンピース・ジャパン、プラスチック問題担当の渡邊睦美です。

日本政府は今、プラスチック問題への対策案について、パブリックコメント(パブコメ)を募集しています。正直、グリーンピースとしては、改善の余地が大きくある対策案だと思っています。グリーンピースは、パブコメを出します。パブコメは誰でも提出できます。あなたも、参加しませんか?

グリーンピースも参加している、減プラスチック社会を実現するNGOネットワークでは、9月に政府が示した「今後のプラスチック資源循環施策の 基本的方向性(「基本的方向性」)に対して、10月に、共同提言書を提出していました。その直後に開かれた政府の合同会議では、委員を務めるジャーナリストの崎田裕子氏が提言書について触れ、賛同してくれました。その他数名の委員も、代替品に対する懸念や、量り売りなどの必要性について語り、これまでよりも一歩進んだ議論がされていました。

しかし残念ながら、そのあと11月に、政府がまとめた対策案「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)」には、そういった重要な指摘は反映されていません。使い捨てプラスチック製品・容器包装の削減よりも、これまで通り、代替や軽量化という言葉ばかりが目立ちます。

さて、皆さんはパブコメを提出したことはありますか?

11月26日(木)から12月25日(金)まで、この対策案について、政府はパブコメを募集しています。この対策案をより本質的なものにするために、あなたも一緒にパブコメを出して、声をあげませんか?

「今後のプラスチック資源循環施策のあり方」内容は?

プラスチック資源循環戦略の基本原則には、「3R+Renewable(再生可能資源への代替)」が掲げられています。これは、皆さんおなじみの、ごみの「リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル」に、「再生材、バイオマスプラスチックの利用」が加わった考え方です。本来この取り組みは、「リデュース リユース リサイクル + 再生材、バイオマスプラスチック」と、 「リデュースに重きを置いた優先順位で進めるべきですが、現状の対策案は、「リデュース リユース リサイクル + 再生材、バイオマスプラスチック」といった感じで、リサイクルと代替品にかなり注力しています。

「リデュースの徹底」という言葉は入っているけれど、徹底と言えるの?と疑問が残ります。まず、リデュースのために環境配慮設計を進めるとありますが、軽量化という言葉しか出てきていません。軽量化とは、ペットボトルを薄くしたりすることで、プラスチックの使用量を減らすことですが、減らさなければいけないのは、使い捨てプラスチック製品の数量そのものです。その他は、代替品への転換を促すとされています。徹底というわりには、「軽量化と代替品への転換を進めることしか書かれていない」のが現状です。

また、「過剰な使用の削減をする」とありますが、具体的にどんな使用を削減するのかに関しては触れられていません。

「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案) 」それぞれの言葉の登場回数

どうして代替品はいけないのか?参考報告書:

仕組みを変えよう!

グリーンピースが今年10月に行った調査では、「不要な使い捨てプラスチック製品や過剰包装のサービスが多い」と感じている人は、「非常にそう思う」「多少そう思う」を合わせて全体の81.2%にのぼりました。そもそも、使い捨ての容器包装を使用をしなくてもいいような仕組みを整えて行くことが必要です。

リサイクルに関しては、この政府の対策案には、環境配慮設計をどのようにするか、分別・回収を促すために必要なこと、連携して全国に広めていくことなどなど、これまでの実施の課題に基づいて、さまざまなことが書かれています。

確かに、リサイクルシステムを整えていくことも大切です。しかし、そもそも、削減を進めていければ、リサイクルするべきものも減り、苦労して分別・回収を促したりしなくて済みます。

膨大な時間とエネルギーをかけてリサイクルにだけ取り組んでいるうちにも、日々、プラごみは増え続け、ただでさえ回っていないリサイクルシステムにさらに負担をかけてしまいます。プラごみの行き場は、もうなくなりつつあるのです。

削減するべき理由

1、プラごみが多すぎる

1分間にトラック1台分のプラごみが海に流れ出ています。その量は、年間で最大1200万トンにもなります。

2018年1月〜11月に、先進国から東南アジアなどに輸出されたプラごみは、600万トンにも登ります。日本からはマレーシアへ、2019年だけでも26万トンものプラごみが送られています。こうした先進国から送られる大量のプラごみには、汚れたものが多く含まれていて、そもそもリサイクルできないため不適切に処理され、環境への影響はもちろん、住民の健康にも被害を与えています。

2、リサイクル神話

世界で1950年以降に生産されたプラスチックのうち、わずか9%しかリサイクルされていません。日本では、「有効利用率84%」と言われていますが、実はその半分以上が燃やされています。熱回収と呼ばれていますが、燃やして発生した熱をエネルギーとして回収し、温水プールなどに使用しています。

ものからものへのマテリアルリサイクルは、わずか23%です。さらにそのうちの半分近くが海外へ送られています。これが1でお話しした国際的な取引です。残念ながら、リサイクルのシステムは機能していません。

3、「使い捨てない」社会への解決策

プラごみの解決策は何か? それは、使い捨ての文化や仕組みからの脱却です。特に、リユース(再利用)できる容器包装にシフトしていくことです。世界、日本でもすでにさまざまなリユースの取り組みが始まっています。

例えば、来年3月から東京で実証実験を開始する、Loop。リユースできる容器包装を使用して、食料品、化粧水やシャンプーなどのセルフケア用品、洗剤などのホームケア用品を購入できるプラットフォームで、牛乳瓶配達の仕組みをもとにつくられました。

それから、ロンドンのDabbaDrop (ダッバードロップ)は、リユースできる容器で、自宅や指定の場所まで食事を届けてくれるサービスです。自転車で届けてくれて、食べ終わった容器の回収もしてくれます。ウーバーイーツ(レストランのテイクアウトなどを代行して、自宅まで届けてくれるサービス)や、昔ながらの出前を組み合わせたような仕組みですよね。すでに、東京や、ウーバーイーツの利用が可能な都市でできそう!と期待を膨らませてしまいます。

このような取り組みをもっと増やして、「使い捨てない」社会をつくっていくことは可能です。上記の他にも、たくさんの解決策が生まれています。容器包装は、もう使い捨てでなくていいんです。

さらに、エレンマッカーサー財団によると、使い捨て容器包装の20%をリユース可能な容器にすることで、一兆円を超える経済規模が生まれる*1そうです。もちろん20%だけでなく、たくさんの製品がリユース可能になることが大事ですし、それ以上になればさらに大きな経済効果が期待できます。

引用:https://loopstore.com/

ひとり一人の声が社会を動かす力に!

「どんなに大きなオフィスビルも、ミリ単位でつくられる」グリーンピースのイベントでお話した、建築業の方からいただいた言葉です。国の政策は、時として、難しいことで声を出しても届かないように思われます。でも、どんな政策でも、私たちひとり一人の声で成り立っています。

今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(案)

パブコメって難しそう…と感じている方へ

ポイントは、大きく分けると2点です。「削減に力を入れること」そのために、「使い捨てなくていい仕組みづくりを進めていくこと」

例えば、削減をもっと真剣に盛り込んで欲しいという内容にしたい方は、

「2ページ目23行目、II.主な施策 1. リデュースの徹底について『企業が軽量化や代替品の前に、そもそも容器包装を使わなくてもいいものは使用しないように、根本から商品設計を直すこと』も加えて欲しい」

とコメントしてみるのはどうでしょうか?

何度も繰り返し使用できる容器など、リユースの取り組みを増やして欲しいという内容にしたい方は、

「3ページ目3行目から6行目について、行動を変えたくても、容器包装を避ける選択肢がそもそも少ない。事業者へ過剰な使用の削減や代替素材への転換を促したり、消費者の行動を変えることを促したりするよりも、何度も使える容器包装の導入など、誰でも削減に取り組めるような仕組みづくりを進めることが優先だと思う」

ということを伝えるのもいいと思います。

意見を声に出して届けることが大切!あなたも一緒にパブコメを出して、声をあげませんか?

パブコメの出し方

提出方法はとってもかんたん。このフォームからオンラインで意見を提出できます。

締め切りは12月25日(金)。意見提出の注意事項は、上の例のように、何ページの何行目に対する意見かを明記することです。

ウェブで送る場合は、一回につき2000字以内なので、どこか一カ所に対する指摘でもいいし、思うところ全てにコメントすることもできます。もし足りない場合は、「続く」「続き」と書いて複数に分けて出してもOKですよ!

しっかりと思いを伝えて、本当の意味で解決に向かうための規制ができるような施策にしましょう!