カリフォルニア、トルコ、ギリシャ、シベリア……。今年の夏も、世界中で大規模な山火事が発生しています。住民は避難を余儀なくされ、野生動物たちは住処を奪われました。悲惨な映像を目にして、心を痛めた人が多いのではないでしょうか。今回、大規模な山火事が発生している背景と気候変動の影響について明らかにされていることをお伝えします。
2020年のオーストラリアで起きた火災で保護されるポッサム

そもそも山火事はなぜ起きるの?

山火事のメカニズムはシンプルです。林野庁のデータによると、自然発火の原因は、主に高い 気温と乾燥、落雷などがあります。乾燥することによって落ち葉の水分が失われ、枯れ葉同士の摩擦で火が起こり、周りの枯れ葉や木々に燃え移ることで火災になります。人為的な原因では、焚き木、農業の火入れ、放火、タバコなどが主な原因とされます。

なぜ気候変動が悪化すると、山火事の被害が広がる?

「山火事は気候変動が悪化する前から存在し、森林管理の一環として野焼きがされることもあったが、近年はとにかく規模が拡大している」と、英ガーディアン紙の環境編集者は語ります。深刻化する山火事の背景には、気候変動による気温の上昇と、森林開発などによる生態系の乱れが挙げられます。

米国の独立調査機関は、気候変動は、山火事のリスクや規模が拡大している主な要因であり、山火事がどれほど燃え広がるかは、気温、土に含まれる水分、木の種類などに左右されるとしています。

米国で行われた分析によると、温暖化による気温上昇が土壌の水分を蒸発させ、地表の乾燥や干ばつを引き起こすことが分かっています。こうした大地が乾燥している状態が、山火事を発生しやすく、また被害を深刻化させているのです。

記録的な干ばつと森林火災がつづく米国カリフォルニア州

土壌の湿度の他に、山火事がどれほど燃え広がるかは、森の生態系の状態に左右されます。

英ガーディアン紙によると、植物や動物、苔や藻、小川など、多くの要素が複雑にからみあって森の生態系はできており、こうした生物の多様性が豊かな森では、山火事が起きても燃え広がりにくく、災害に強い傾向があります。

パプアニューギニアの原生林

一方で、プランテーションなど一種類の木が一定の間隔で並んでいるような森では、山火事が広がりやすいとされます。それは、木の根が深く張られておらず、苔なども増えにくく、森全体の水分量が少ないためです。最初に起こった火がとても小さくても、急速に燃え広がり大規模な火災へとつながってしまいます。

パプアニューギニアのパーム油プランテーション

実際に山火事は増えている?

近年、山火事のニュースが増えましたが、気候変動の悪化に伴い、実際に件数は増加しているのでしょうか。

上のガーディアンの記事では、山火事の件数自体は減ってきているが、世界的に報道されるほどの大規模な火災が急増していると解説されています。今年の夏も、さまざまな地域で記録を更新する規模の山火事が続発しました。

東京都の面積よりも広い森林が焼失ー米国カリフォルニア

7月中旬、米国カリフォルニア州で史上2番目の規模となる「ディクシー火災」が発生しました。米国カリフォルニア州森林保護防火局のデータによれば、発生から2カ月近くがたっても、完全には鎮火されずに続いており、これまで3500平方キロメートル以上の森林面積が焼失しました。その規模は、東京都の面積(約2,100平方キロ)よりも広大です。暑く乾燥した気候のため、火災が長引いているのです。

カリフォルニア州の山火事で続く消火活動

地中海の周辺国で山火事が続発

7月下旬、トルコで2週間ほど続いた山火事は、森林や農地を焼き払い、同国で史上最悪の規模になったと報道されています。

トルコでビーチから山火事を眺める人々 photo by STR/AFP via Getty Images

8月、ギリシャは過去30年間で最も苛烈な熱波に見舞われ、各地で山火事が発生しました。火は燃え広がり、多くの人々が避難を余儀なくされました。

最も深刻な火災が起きたエヴィア島の風景

イタリアのシチリア島では、8月に欧州の史上最高気温となる、48.8度を記録。同地域を中心に、山火事が発生しました。

北アフリカのアルジェリアでも、8月上旬から100カ所以上で山火事が発生し、鎮火に当たった90人以上の人々が亡くなりました。BBCニュースによると、その被害規模は、2008年から2020年までに同国で観測された全ての山火事を合わせたよりも大きいといいます。

その他にも、ブラジルやロシアのシベリアなどの地域でも大規模な山火事が報告されました。

日本では山火事は起きていない?

日本でも、小さいものからやや規模の大きいものまで、様々な森林火災が発生しています。

林野庁のデータによると、2015年から2019年までの5年間に、1年間に約1,200件の山火事が発生し、700ヘクタールの面積が焼けました。これを1日に換算すると、毎日全国で3件の山火事が発生し、約2ヘクタールの森林が焼失していることになります。

山火事で気候変動が悪化する、さらなる悪循環

大規模な山火事により、たくさんの木が燃えると、木が蓄えていた二酸化炭素が大気中に放出されてしまいます。それによって気候変動が進行し、さらなる山火事が起きるという悪循環が起きているのです。だからこそ、なるべく早く温室効果ガスの排出を抑え、同時に森林の生物多様性を回復させていくことが重要です。

森林火災で焼け焦げてしまったカリフォルニアの森林

自治体に声を届けよう

山火事を防ぎ、森の生物や私たちの暮らしを守っていくためには、気温の上昇を抑えるための緊急の行動が必要です。一人ひとりの行動も大切ですが、自治体や企業などのより大きな団体が一緒に取り組んでいくことで、より高い成果が生まれます。お住まいの地域の自治体に、気候変動への対策を強化するよう伝えてみませんか。