海から生まれたグリーンピース

50年前、アラスカ沖での核実験をやめさせるために、現場を目指して船で旅に出た人たちがいました。
このときの活動が発端となって、グリーンピースは生まれました。

以来半世紀、グリーンピースは人の目の届かないところで起こりやすい環境破壊の現場に行って、自らの目で確かめた事実に基づいて環境保護活動を続けています。
グリーンピースが活動船を所有・運航しているのはそのためです。

南極や北極の氷の海も航行できるグリーンピースの砕氷船、アークティック・サンライズ号

切っても切れない関係にあるグリーンピースと海。
その海で、いま、悲しい環境破壊が起こっています。

需要拡大を満たすための破壊的な過剰漁業

第二次世界大戦後の爆発的な人口増加と食文化の変遷、高速船や魚群探知機、GPSなど技術の向上によって、世界の漁業の産業規模は急速に拡大しました。

広大な海の真ん中で行われる漁業には、なかなか法の監視が行き届きません。
こうして、ジャンボジェット機が何機も入るほど巨大な魚網で海域一帯を底から攫うような過剰漁業や、洋上で船から船へ漁獲した魚を積み替える洋上転載といった違法行為が横行するようになってしまいました。

2017年、ギニアビサウで行われていた違法な洋上転載

そんなことを続けていたら、海が砂漠化し、生態系が破壊されてしまいます。
グリーンピースは独自の調査に基づいて、ツナ缶の世界最大手タイ・ユニオン社に対し、環境破壊につながる経営方針の改善を求めて対話を繰り返し、署名を集め、2年をかけて合意に導きました。

それでも、世界中の漁業が完全に持続可能=サステナブルに変わるのは、簡単なことではありません。

海の環境を壊すもの

近年は海のプラスチック汚染もひろく懸念されるようになりました。
現在、年間800万トンものプラスチックごみが海に流出しているのです。*1

エジプト、ワディ・エル・ガマル国立公園の海中を漂うプラスチックごみ

海を汚し、生きものたちの命を危険にさらしているのはプラスチックだけではありません。
地下水脈や河川を通じて海に流出する農薬や化学肥料、畜産や養殖で使用される薬品などの化学物質や工業廃水も、海でしか生きられない生きものたちの存続を脅かしています。

また、海は大気中の二酸化炭素を吸収していますが、二酸化炭素が増えると海水の二酸化炭素濃度も高くなり、海水が酸性化します。*2酸性化した海では植物プランクトンや小さな動物プランクトンが減少してしまい、海域の食物連鎖のバランスが崩れて生態系が破壊されます。*3

南極の生きものの命の源を奪う

グリーンピースの船は北極や南極でも調査活動を実施していますが、南極海で採取した海水からも、マイクロプラスチックが検出されています。

南極海に棲息するナンキョクオキアミ。体長6cm、体重最大2グラム。

南極海にはオキアミという小さなエビに似たプランクトンが棲息していて、これがクジラやアザラシやペンギンといった南極圏にすむ生きものたちの栄養源となっています。

ところがこのオキアミの栄養価の高さから、健康補助食品や加工食品の原材料、養殖の餌として世界中で消費されるようになりました。
オキアミ漁の拡大はそのまま、それをエサとする生きものたちの命の源を奪うことを意味します。

グリーンピースの活動船とともに南極を調査している科学者たちは、南極にすむペンギンの個体数を調べ、この半世紀の間に60%近く減少したと報告しています。
原因はエサ不足だけでなく、気候変動による南極の氷の減少などといった環境の変化が考えられます。

南極・ハーフムーン島に棲息するヒゲペンギン。

海の30%を海洋保護区に

グリーンピースは1980年代から南極の環境保護を訴え続け、1991年に南極の環境と生態系を包括的に保護する南極条約議定書が採択、1998年に発効されました。*4 *5

以後も南極の環境保護活動を続けてきましたが、近年になって漁業や観光による生態系への影響が拡大。
2019年から、南極を含め世界の海の30%を海洋保護区にする活動を始めました。

南極・ハーフムーン島のオットセイ。

そして今年1月、2030年までに地球上の陸と海の少なくともそれぞれ30%を保護するという目標を掲げる「自然と人々のための高い野心連合」が発足、日本を含む50カ国以上の国々が参加を決めました。

目標は決まりましたが、いまこの瞬間にも、南極の環境破壊は進行しています。

気候変動の影響で、昨年2月には観測史上最高の20.75度を記録*6、9日間も熱波が続いて、陸を覆っている氷雪が融解しました。*7
融解した水が夜の気温の低下で凍ると、真っ白な氷雪と違って太陽熱を吸収するので、より暖まりやすくなり、その下の氷雪も融解しやすくなります。

南極・パラダイス湾の海氷。南極海を漂う海氷の増加が生態系に影響を与える。

こうして変化していく南極と南極海の環境と、そこにすむ生きものたちの命をまもるために、グリーンピースはこれまで通り、これからも、行動を続けていきます。

ここまで読んでくださったあなたにも、今日、南極をまもるためにできることがあります。
グリーンピースの活動と、情報発信をあなたの周りの人たちにシェアすることです。
問題解決の第一歩は、まず知ること。

ぜひ、やってみてください。

そもそも、なぜ南極を守る必要があるのでしょうか。
私たちの暮らしにどう影響があるのでしょうか。
次回は11月19日に、気候変動が南極に与える影響と氷床融解による海面上昇の危機について解説します。

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*1 : https://www.wwf.or.jp/activities/project/4667.html
*2 : https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/oa/acidification.html
*3 : https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/oa/acidification_influence.html
*4 : https://wayback.archive-it.org/9650/20200212070835/http://p3-raw.greenpeace.org/japan/ja/info/success/
*5 : https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/s_pole.html
*6 : https://www.asahi.com/articles/ASN2G3J2PN2GULBJ002.html
*7 : https://www.cnn.co.jp/fringe/35149812.html

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