深刻化する気候危機。でも、まだ破局的な結末を回避する方法があります。それが2030年までに2010年と比べて60%以上のCO2を削減することです。なぜ、60%なのでしょう?それには科学的な根拠があります。そしてそれは可能なのか?このブログで解説します。
ドイツにある石炭火力発電所(2016年11月)

気候が危機!

気候危機は甚大な被害を引き起こします。

  • 豪雨や水害がより頻繁に
  • 台風はますます激甚化
  • 夏がより長く、より暑くなり、熱中症による死亡者が大幅に増加
  • 農作物や漁業など、食料安全保障への影響が深刻化
  • 海水温が上昇しサンゴが死滅(1.5度の上昇で9割が死ぬ可能性)
  • 海水面が上昇し、住む場所を失ったり、洪水や高潮の影響を受ける人が増加

地球温暖化は、人間の活動が原因であり、「疑う余地がない」と国連気候変動政府間パネル(IPCC)が結論づけています*

温暖化で地球の平均気温がお上がると、豪雨や強力な台風が起きやすくなり、被害もより大きくなる。2020年に西日本を襲った豪雨は、特に熊本県に甚大な被害をもたらした。(2020年7月)

地球の気温上昇を1.5度に抑える必要あり

破局的な気候危機を回避するため、世界中の国と地域が、地球の温度上昇を1.5度に抑えようと合意しました。1.5度とそれ以上では、人類、動物、生態系への被害に大きな差があるためです。

IPCC第6次報告書/WRIによるまとめよりグリーンピース作成

昨年のCOP26では、いまの各国のCO2削減の2030年目標を見直し、強化をすることが決まりました。

日本は60%以上の削減が必要

IPCCは、地球の温度上昇を1.5度に抑えるためには、世界全体で2030年までに2010年比で45%のCO2削減が必要としています。

どれくらい減らすべきかを考えるときに考えたいのが「炭素予算(カーボンバジェット)」です。炭素予算とは、地球の温度上昇を1.5度に抑えるためには、これしか排出できない、という炭素の量のことです。

IPCCの第6次報告書によれば、2分の1の確率で温暖化を1.5度に抑える場合、2020年初頭からの残余炭素予算は5,000億トン(CO2換算)です。

1.5度に抑えるための炭素予算とその可能性(IPCC第6次報告書より作成)

世界で年間約400億トンのCO2が排出されていますから、このままのペースでは2030年ごろには、1.5度温暖化してしまう恐れがあります。

では、日本としてはどれくらい減らすべきなのでしょうか?

国立環境研究所の地球環境研究センターニュース*には、炭素予算を日本の人口で割った数字を使ったグラフが掲載されています。これをみれば、1.5度に抑えるためには46%削減(2013年度比)はおろか、50%削減でもまったく足りないとわかります。

画像引用:地球環境研究センターニュース362号

いま、多くの自治体が2030年までの削減目標を決めようとしていますが、そのときに将来あるべき姿からさかのぼって政策手順を決める「バックキャスティング」を採用したとして、2022年の排出量から2050年まで、まっすぐ線を引き、直線的に減らすことを目標とするケースがあります。

下のグラフの赤い直線のようにまっすぐ線を引くのでは、排出量は1.5度の炭素予算を大幅に超えてしまいます。2030年に向けてぐっと減らす船底型の曲線で減らさないと1.5℃に抑えるための炭素予算をオーバーしてしまいます。

1.5度を守るためには、2030年までに60%以上を削減するしか、選択肢はありません。

60%削減はできる

60%削減はできるのでしょうか。やらなければ気候危機は回避できないので、できるか・できないかではなく、どうやるか、を考える必要があります。

国際環境NGO グリーンピース・ジャパンは、環境エネルギー政策研究所(ISEP)と協力して、東京都について2030年までに60%以上のCO2削減を可能とするシナリオを発表しています*。大都市でも十分可能です。

使うエネルギーを効率化し、省エネをすすめ、再生可能エネルギーに切り替えれば、2030年までに60%以上のCO2削減が可能です。

国際エネルギー機関は2050年ネットゼロに向けたセクター別ロードマップを作成してます。そこに、2030年までに行うべきことが書かれています。

主な対策は…

  • 全ての新築建物がゼロ炭素仕様
  • 世界の自動車販売の60%が電動車に
  • 重工業の新規クリーン技術を大規模実証
  • 年間1,020GWの太陽光、風力の容量増加

やるべきことははっきりしており、あとはやるだけです。

省エネと再エネで年間20兆円のお得

現在年間おおよそ20兆円も化石燃料を買っていますから、日本から年間20兆円も化石燃料費用が海外に流出しています。省エネと再エネへの切り替えで、その20兆円が日本国内で循環することにもなります。

福島県のコミュニティショップの屋根に設置される太陽光パネル(2016年1月)

すでに、2030年の目標として60%以上を掲げている自治体に長野県と鳥取県があります。

長野県は、案の段階では48%削減としていました。その後のパブリックコメントで多くの県民が60%以上を求めたことから、それを反映させて最終的に60%削減となりました。

また、省エネに欠かせない住宅の断熱政策でトップを走る鳥取県は、県知事のイニシアティブで2030年までの削減目標が60%にひきあげられています。

日本全体平均で60%削減が必要ですが、鉄鋼業など二酸化炭素を大量に排出する工場を抱えた自治体もあるので、できる自治体は、平均以上に削減する必要があります。

市民の力でCO2削減目標を60%以上に

ある自治体議員は「議員は住民の代表。住民が求めるなら、わたしたちもそれを求めなければ」と言っています。

自治体の主役は住民です。

グリーンピースは、自分が住む街に、60%以上のCO2削減を目標に掲げ、実現するように働きかけるグループ「ゼロエミッションを実現する会」の事務局として、全国で活動する市民をサポートしています。仲間と一緒に、あなたも、あなたが住む街で60%削減を実現するために動き始めませんか?

参考:リーフレット「深刻さを増す気候変動」

専門家を招いた勉強会に参加しませんか?

「なぜ、日本の2030年温室効果ガス削減目標は60%以上でなければならないのか Climate Action Tracker “日本の1.5°Cベンチマーク” 執筆者に聞く」

6/4(土) 17:00 @オンライン会議ツール zoomのウェビナー

2030年のCO2削減目標を60%以上に引き上げてほしいのに、気候変動について周りの人や自治体の担当者とコミュニケーションを始めると「2030年のCO2削減目標を60%以上に引き上げるなんて、できない」と言われることがあるかもしれません。そんなあなたのために「日本は2030年までに62%の温室効果ガス削減が必要」と分析した、クライメート・アクション・トラッカーのレポートを執筆した倉持壮さんに「なぜ」を教えていただきます!ぜひ、ご参加ください!

講師 / 倉持壮さん:NewClimate Institute主任研究員(ドイツ・ケルン)
オランダ・ユトレヒト大学博士課程修了後、地球環境戦略研究機関(IGES)勤務を経て現職。主要研究テーマは温室効果ガス排出シナリオ分析(国・地域、地方自治体、企業)。国連環境計画「排出ギャップ報告書」主執筆者(2016-現在)。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)Race to Zeroキャンペーン・外部ピアレビューグループ・メンバー(2021-現在)。SBTi (Science Based Targets initiative) 科学アドバイザリーグループ・メンバー(2021-現在)

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