2022年5月、ソニーグループ株式会社が、企業による脱炭素を加速させる重要な発表をしました!カーボンニュートラル達成の目標年を、10年前倒しすることを発表したのです。

実は、東アジアのICT企業10社の排出量を合計すると、タイの1年間の排出量よりも多くなるほど、ICT企業の気候変動へのインパクトは甚大です。

グリーンピースは、これまでもICT企業に注目し、フェイスブック、サムスンなどの世界最大手のICT企業に働きかけ、企業のゼロエミッション化を後押ししてきました。

東アジアの企業をリードするソニー。世界のICT企業と比べると?

去年12月、グリーンピースは、東アジアの10社のICT企業を分析した報告書『ハイテク企業は再生可能エネルギー競争を勝ち抜くことができるか?』を発表しました。

この分析でも、ランキングした10社の中でトップとなる「C+」の評価を得ていたソニーは、今回の発表で、東アジアの他のICT企業よりもハードルの高い目標を発表しました。

ソニーが発表した目標はこの2つです*

  1. カーボンニュートラルの達成年を、2050年から2040年へ10年前倒しすること
  2. 自社事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギーとする達成年を、2040年から2030年までに前倒しすること

また、この2つを達成するためにソニーは、

  • グループ会社全体で、省エネ化、太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー導入を加速などして継続的な環境負荷低減を行う
  • 部品、材料、完成品の製造委託先などソニーグループのビジネスパートナーに働きかけて、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減を目指す

などの行動計画を掲げています。

ソニーのような日本経済を牽引し世界でも影響力のある企業が、カーボンニュートラルへ向かって大きく目標を前倒しすることは、日本の気候変動対策を後押しするためにとても重要なことです。

グリーンピース・ジャパンの気候・エネルギー担当の関根彩子は、こう話します。

「グリーンピースは、ソニーの新しい目標と期限設定を歓迎します。こうした脱炭素目標の強化は緊急に必要なものです。今回ソニーは、東アジアのハイテク企業より高いハードルを設定しました。ただ、アップルやマイクロソフトといったグローバルな競合企業の公約に比べると、依然として弱いものであることも事実です。目標を設定するだけではなく、ソニーはより具体的に行動する必要があります」

島根県の海岸に立つ風力発電所(2013年11月)

現在の再生可能エネルギー利用率は、わずか7%

実際、2021年時点では、ソニーの事業活動における再生可能エネルギーの利用率はわずか7%。他のグローバル企業と比較してかなり低い数字です。より多くの再生可能エネルギーを調達するために行動する必要があります。

そして、ソニーの2030年の再生可能エネルギーに関するコミットメントには、ソニーの排出量の大部分を占めるサプライチェーンが含まれていないことも重要な点です。2030年目標を真に意味あるものにするためには、サプライチェーンの排出量も目標に含める必要があります。

グリーンピースの働きかけで変わった企業:フェイスブック、サムスン

東アジアの大手ICT企業30社の年間の電力消費量をすべて合計すると、タイの全電力消費量を超えるほど、ICT企業の環境インパクトは、実はとても大きいのです。さらに東アジア地域ではICT産業が急速に成長していて、東アジアで最も急増している二酸炭素排出源のひとつとなっているのです。

しかし、ICT企業の中には、アップル、グーグル、メタ・プラットフォーム(フェイスブック)など、スピーディーな行動力があり、社会全体への影響力が強い企業が多いのも特徴です。グリーンピースは、こうしたICT企業に注目して、2010年代から再生可能エネルギー100%へのシフトを促すキャンペーンを行い、フェイスブック、サムスン、アリババなどの大手ICT企業の脱炭素の加速に貢献してきました

フェイスブックの場合

膨大な量のデータを扱うICT企業は、データセンターから排出されるCO2が、排出量の多くを占めます。当時フェイスブックは、利用者の急増で新しいデータセンターを計画していました。グリーンピースは、2010年から20カ月間に渡ってフェイスブックに働きかけを行い、調査や交渉を行った結果、将来のデータセンター建設地は、再生可能エネルギーの供給が受けられる場所にするという方針が示され、グリーンピースとフェイスブックは共同のプレスリリースを発表しました*

また、このキャンペーンには、世界中から70万人の人が賛同し、グリーンピースとともに一刻も早い再生可能エネルギー100%での運営を求めたことも、フェイスブック社が素早く行動する原動力となりました。

そして2021年に、同社は再生可能エネルギー100%を達成し、当時現実的ではないと批判されていたグリーンピースのビジョンが現実になったのです。

フェイスブックに、石炭ではなく再生可能エネルギーと「友だち」になってと働きかけるグリーンピースとサポーター(2011年4月)

サムスンの場合

また、世界最大のスマートフォンシェア(当時)を誇るにもかかわらず、2016年に16,000GWh以上使用するエネルギーのうち、再生可能エネルギーがわずか1%だった、韓国のサムスン電子にも、働きかけを行いました。

そして2018年に同社は、世界38カ所の製造拠点のうち17カ所がある米国、欧州、中国で、2020年までに100%再生可能エネルギーを実現することなどを約束し、アジアのIT企業として初の再エネ100%を約束しました。フェイスブック社などに続き、再生可能エネルギーへの移行をリードする企業に名を連ねました。

サムスンの店舗前の広告スペースにポスターを掲出し、再生可能エネルギー100%への移行を求めた(2018年1月)

2.7℃もの地球温暖化を防ぐために

温暖化を1.5℃に抑えるためには、2030年までにCO2排出量を半減させる必要があります。しかし、各国政府の現在の取り組みでは、1.5℃を超えて、2.7℃まで上昇してしまうと研究者は警鐘を鳴らしています。

日本政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを発表したことを受けて、多くの企業が脱炭素を掲げるようになりましたが、さらに取り組みのスピードを上げなければ、私たちは安全に住み続けられる地球環境を守ることはできなくなってしまいます

グリーンピースは、企業による気候変動への取り組みを調査をして、報告書で現状を明るみに出すことで、脱炭素の加速を促しています。企業から資金援助を得ず、独立しているグリーンピースだからこそ、中立の立場で情報を発信し、企業や政府に対して発言することができます。

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