現在、地球上で絶滅する生きものは年間4万種にものぼります。100年前と比較すると、そのスピードは4万倍になりました。
原因は感染症や寄生虫による病気の流行なども考えられますが、乱獲や環境汚染、乱開発といった人間の経済活動もそのひとつです。そこに追い討ちをかけているのが、気候変動による環境の変化です。
このままにしておいていいのでしょうか。

ホッキョクグマ

狩りも繁殖も子育ても、一生のほとんどを氷の上で過ごすホッキョクグマ。
氷が減少する夏、彼らはエサを求めて氷から氷へと冷たい北極圏の海を泳いで渡りますが、その距離は氷が減れば減るほど長くなり、現在は数百kmにまで及ぶことも。
他の地域の2倍の速さで温暖化が進行する北極圏で、異常な長距離を移動する母親についていけず溺れる仔グマが増えており、このままでは2100年までに絶滅するといわれています。

コアラ

オーストラリア東部に生息し、ユーカリの葉を食べる有袋類。18〜19世紀には毛皮やレジャーのために乱獲されて生息数が激減したことがあります。
オーストラリアの森林火災は、熱波や干ばつといった異常気象によって年を追うごとに頻度も規模も拡大していて、2019〜2020年の火災では数万頭のコアラが犠牲になったといわれています。
この火災ではコアラだけでなく数億匹に及ぶ生きものが命を失ったり、住む場所を失ったりしました。

大規模な森林火災の頻発によって、オーストラリアは生きものの絶滅率が最も高い国のひとつになってしまいました。

ユーラシアオオヤマネコ

赤道以北のユーラシア大陸に広く生息する、体重20〜30kgにも達する大型のヤマネコ。
毛皮を目的とする乱獲で生息数が減少、乱開発や世界各地で頻発・拡大する森林火災によって、食物連鎖の頂点に君臨する彼ら大型肉食動物も生息地を奪われ、獲物となる他の生きものたちも減少しています。

アオウミガメ

国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)に掲載されているウミガメの一種。
気候変動や乱開発によって産卵できる砂浜が激減しただけでなく、ジャンボジェット機が何機もすっぽり入るほど巨大な漁網を使った過剰漁業による混獲や、毎分約トラック1台分が海に流出するプラスチック汚染が、彼らの種の存続を脅かしています。

ハチ

2000年代に「蜂群崩壊症候群」と呼ばれる現象が世界中で多発、北半球の4分の1のミツバチが死滅・行方不明になりました。
原因は伝染病や環境の変化などが考えられていましたが、2010年代には、ネオニコチノイド系農薬など、生きものの神経系に作用する危険な殺虫剤もその原因のひとつと判明しています。ハチなどの花粉を媒介する生きものがいなければ農業は成り立ちません。

この類の農薬は、ハチや昆虫や水生生物などの小動物だけでなく、人間の健康にも深刻な影響を与えるリスクが指摘されています。

ウラルフクロウ

スカンジナビア半島からユーラシア大陸北部、日本に生息する留鳥。その風貌から、世界各地で「森の哲学者」「危険を予知する予言者」などと呼ばれて親しまれています。
ネズミやノウサギ、小鳥、昆虫、カエルやトカゲなどさまざまな小動物をエサとすることや、樹木の穴だけでなく人家にも巣をつくり繁殖することができることから、世界全体での生息数は安定しているものの、日本国内では多くの地域で絶滅危惧種に指定されています。

ハイイロオオカミ

北極圏をはじめ、ヨーロッパからアジア、北アメリカからメキシコなどの北半球に広く分布する肉食獣。
家畜を襲うことから日本だけでなく世界各地で駆除され、絶滅に至った地域もありますが、それが原因で天敵のいなくなったシカなどの草食動物が増加、生態系が破壊され、それらの獣害によって却って農業に被害が発生しています。

アメリカ・イエローストーン国立公園では1995年にカナダから41頭のオオカミを導入する実験が行われ、20年後、乱れた生態系が本来の姿に戻りはじめたと報告されています。

カンムリカラカラ

赤道以南の南米に生息するハヤブサの一種。
小動物を獲ることもありますが狩りはあまり得意でなく、動物の死骸も食べます。足を器用に使って石を裏返し、その下にいる昆虫を食べることも。
彼らが生息する南米の草原や湿原では、気候変動による干ばつや熱波で毎年のように火災が発生しており、豊かな生態系が破壊されつつあります。

トラ

20世紀初めには10万頭いたといわれる生息数は、現在4,000頭にまで減少しました。
原因は家畜をまもるための駆除や、毛皮の取引を目的とした乱獲。インドネシアではパーム油の大量生産のために広大な森林が破壊され続け、この地の固有種であるスマトラトラやスマトラゾウ 、オランウータンなどの野生動物が絶滅の危機に瀕しています。

パーム油は、シャンプーや石けん、洗剤、歯磨き粉、ポテトチップス、アイスクリーム、インスタント麺、カレーなど、誰もが日常的に手に取るものの原材料として、世界中でひろく使用されています。

アフリカゾウ

肩の高さは3m、体重は6tにも及ぶ、陸上で最大の野生動物とされるアフリカゾウ。
150種類以上の植物を食べ、広範囲に移動することでその種子を運ぶという生態系に重要な役割を果たしている生きものでもあります。

密猟や生息地の環境変化、気候変動の影響などで生息数は減少傾向にあります。高額で取引される象牙をとるために、15分に1頭のアフリカゾウが犠牲になっているといわれています。

ヒゲペンギン

南極でも常に海が凍っている地域に生息するペンギン。
主なエサはナンキョクオキアミという小さなエビに似た動物プランクトンですが、近年、サプリメントや漁業用のエサとしての需要が高まり、乱獲が進んでいます。

他の地域の3倍の速さで温暖化が進行する南極では近年、雨が降るようになり、雨に耐えられないペンギンのヒナが大量に凍死するなど、過酷な環境下で繁殖するペンギンたちの生態に大きな影響が生じています。

オットセイ

北半球北部、もしくは南半球南部に生息し、魚やエビやタコなどの海洋生物を食べて暮らしています。
19世紀には毛皮をとるための乱獲で絶滅が危惧されましたが、1911年に保護対象になり、一部の種類は生息数が回復しました。
生息域が広範囲にわたること、ときにはペンギンも獲るなど多種の生きものをエサにすることから種全体では生息数は安定していますが、乱獲以降生息数が回復しなかった種類は現在も絶滅の危機に瀕しています。

ホッキョクギツネ

気温零下50度にもなる極寒の北極圏で暮らすキツネ。
雪の季節は真っ白に、夏の間は褐色や灰色に変化する被毛をもち、小動物や鳥や魚を獲って食べますが、エサが乏しくなる真冬はホッキョクグマの後をつけて、獲物の残りをいただくこともあります。

他の地域の2倍のスピードで温暖化が進行する北極圏で、彼らの生息環境も激変しています。

サンゴ

ポリプと呼ばれる小さな個体がたくさん集まったコロニーになっている動物。光合成の栄養分を供給し、サンゴと共生している褐虫藻と呼ばれる藻類の色が、サンゴ礁をカラフルに彩り、さまざまな海洋生物の生活の場として機能しています。
海水温の上昇や海水の酸性化によって褐虫藻が生息できなくなると養分を受け取っていたサンゴが死に絶え、白くなる「白化」が起こります。
近年の温暖化でサンゴの生息環境は悪化の一途を辿っていて、オーストラリアや沖縄など、世界各地で白化現象が発生しています。

できることを、今日、はじめよう

わたしたち人間の暮らしは、さまざまな生きものたちの営みのもとに成り立っています。

ものいわぬ生きものたちの未来の鍵を握っているのは、いったい誰でしょうか。
少なくとも、気候変動という地球全体を脅かしている現象に立ち向かう術をもっているのは、わたしたち人間だけです。

いま、あなたにできることをはじめてみませんか。
誰にでもきっと、ひとつくらいは何かあると思います。