新幹線の平均速度に相当する時速250kmを超える猛烈な風、地滑りや土石流を引き起こす豪雨、沿岸部を飲み込む高潮など、台風の破壊力は絶大で、生命さえも脅かします。

日本は台風の影響を受けやすい国の一つです。毎年、台風の発生シーズンになると各地で被害が報告されます。今でさえ被害が多く出る台風は、気候変動の影響を受け、私たちに与える影響も大きくなると予測されています。

気候変動はどのように台風に影響を与えるのでしょうか。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、熱帯低気圧を地域ごとに調べており、東アジアについては、「強力な熱帯低気圧の激化の速度と数が増加しており、熱帯低気圧の軌道が北に移動している」と述べています。

上記のIPCCの声明の重要なポイントは3つ。

  • 勢力の激化が加速している
  • 強い熱帯低気圧の数が増加している
  • 熱帯低気圧の軌道が北に移動している

それぞれ何を意味するのでしょうか。順番に見ていきましょう。

IPCC:勢力の激化が加速している

西太平洋(東アジアや東南アジア周辺の海の部分です)で形成される熱帯低気圧の年間平均発生数に関しては、いまのところ、データ上大きな変化は見られていません。しかし、平均的に台風の勢力は確実に激化してることが分かっています。

2016年に発表された研究*によると、東アジアと東南アジアを襲う台風は、1970年代後半から12〜15%勢力が激化していることがわかりました。

現時点では、台風の発生数は増えていないものの、一つひとつの台風の勢力は大きくなっています。

IPCC:強い熱帯低気圧の数が増加している

同研究*では、カテゴリー4とカテゴリー5の熱帯低気圧(それぞれ持続風速が209km/hと252km/hを超える暴風)の数が、1970年代後半から少なくとも2倍になったことも判明しています。

台風の発生数には、現時点では大きな変化がありません。しかし、東アジア・東南アジア地域での猛烈な台風と超大型台風の割合も2倍になっています。

東アジアだけでも、猛烈な台風と超大型台風は、1970年代後半以降、年間1個未満から4個以上へと4倍近くに増加しています。* 大型台風が全台風発生数に占める割合も、20%前後から60%に急増しました。

つまり、台風の半数以上が、最も破壊力の強いカテゴリーに属する大きさへと変化しているのです。

台風ライによるフィリピンでの被害(2022)

IPCC:熱帯低気圧の軌道が北に移動している

台風の発生場所と軌道が変わってきていることも分かっています。

台風が最初に形成される場所は、これまでより北(または極方向)へシフトしており、発生した台風は、北西方向に進むことが多くなっています。

このように発生場所と軌道が変わることで、台風の強さは高緯度でピークに達し、より勢力を保ったまま陸地に上陸しやすくなります。

この移動を記録した本研究*では、気候変動が今後これらの変化を悪化させる可能性があるとも警告しています。

気候変動は台風の発生場所を北に移動させています。

これらは気候変動の影響なのか?

気候科学は複雑ですが、このような台風の変化の原因は「気候変動が海を温暖化させていること」という点は、科学者の間での共通認識となっています。

同研究*で、海面水温を追跡したところ、1977年から2013年の間に東アジアや東南アジアの近海では大きく上昇していることがわかりました

2022年8月ソウルの漢江のそばでは、豪雨の影響で公園や道路が水浸しになっている

台風が強ければ強いほど、上陸したときの被害は大きくなります。台風は木をなぎ倒し、建物を破壊し、都市を浸水させ、村を土砂崩れで埋め、計り知れない損失をもたらします。

熱帯低気圧は、経済的にも人命的にも大きな被害を与えてきました*アジアでは1970年から2019年の間に、自然災害により100万人近くの人命が失われ、2兆ドルの経済的損害が報告されています。これらの災害のほぼ半数は洪水で、3分の1以上は暴風雨によるものでした。

私たちにできることは何でしょうか?

この8年間は、本格的な気候変動の危機を食い止めるための最後の8年です。いま以上の気候危機を回避するために、わたしたちは2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる必要があります。

私たちは、温室効果ガスの排出量が大きい業界を早急に変えていく必要があります。その中でも、燃料の燃焼による直接的な二酸化炭素排出量の24%を輸送機関が占めており、うち45%が乗用車です。

このままでは、運輸部門の温室効果ガス排出量は2020年比で90%増加することになります。自動車業界の変革は気候変動問題の解決に必要不可欠です。

グリーンピースは自動車業界最大手10社の動向を調査し、昨年11月、ランキング形式で発表しました。最新調査では、世界の自動車メーカーにおける脱炭素化の比較分析を行い、自動車環境ガイドとしてまとめています。

グリーンピースは、日本の基幹産業である大手自動車メーカーに対し、100%バッテリー式電気自動車に移行し、販売台数ではなく移動サービスの提供を主体とする持続可能な産業へのシフトを提案、対話を続けています。

この活動にあなたもぜひ力を貸していただけませんか?

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日本の脱炭素を加速させよう!