[Next100 PROJECT – スタッフVoice vol.2]
グリーンピース・ジャパンのスタッフ、⼀⼈ひとりの考えや今までの背景を紐解き、新たなビジョンとして策定した「地球の恵みを、100 年先の⼦どもたちに届ける。」への想いをご紹介します。 2回目は、グリーンピース・ジャパン、コミュニティアウトリーチ担当の儀同千弥(ぎどうちひろ)のインタビューをお届けします。

ボランティアをきっかけに、グリーンピースへ就職

グリーンピース・ジャパンには、さまざまな経歴を持ったスタッフがいます。民間企業から転職して来た人もいれば、非営利団体で社会課題に取り組んでいた人、海外で働いていた人などいろいろです。儀同千弥(ちひろ)さんは、グリーンピースでのボランティアから、パートタイム職員を経て、現在はコミュニティアウトリーチ担当として働いています。

ちひろさんがボランティアを始めたのは、2017年春。大学4年生だった彼女は、就職活動の真っ最中でした。

「働きたいと思える企業がみつからなかったので社会人としてやりたいことを改めて考えてみると、社会課題を解決する仕事をしたいと思ったんですね。その中でも環境問題に関わる仕事を考えたんですが、NGOやNPOは新卒採用がないかなと思って、まずはボランティアをして経験を積もうと思ったんです」

インターネットで検索をしてグリーンピースのボランティアとして登録、活動を始めます。就職活動を中断してボランティアに集中すると決めるほど、大きな決断でした。

ボランティアとして最初の活動は、東京・西新宿にあるグリーンピース・ジャパンのオフィス近辺のごみ拾い活動。地球規模の問題に取り組みたいという希望からはささやかな活動かもしれませんが、「とにかく何かしなきゃという気持ちだったので、少しでもできることがあるのがうれしかったです」と笑顔で振り返ります。その後、ちひろさんにとってターニングポイントともいえる、大きな機会が訪れます。

「ボランティア主催でイベントをしていたんですが、私も自分で企画して、『エシカルサンドウィッチパーティ』というイベントを行いました。みんなでオーガニックの野菜をはさんだサンドウィッチをつくったり、オーガニックについて学んだりするイベントでした。今でもとても印象に残っているのは、環境問題について人に伝える機会を自分でつくれたことにすごく達成感を感じたからだと思います

それは、何かやりたいという気持ちが、自分にもできるんだという実感に変化した瞬間でした。その成功体験が、今ボランティアの人たちに向かい合う姿勢につながっています。

その後もボランティア活動を積極的に続けたちひろさんは、大学卒業と同時にグリーンピースのパートタイム職員となり、2022年より現職になりました。

何かしたいという気持ちを継続的なアクションへとつなげる

現在の役職であるコミュニティアウトリーチ担当の業務内容を、ちひろさんは、「ボランティアの皆さんの気持ちやパワーを、グリーンピースが目指す社会の実現につなげるために、両方の間に立つお仕事だと解釈しています」と説明してくれました。

残念ながらコロナ禍で、オンラインでしかボランティア活動はできませんが、毎月ボランティア勉強会を開催するなど、その活動は活発です。ちひろさんが業務において心がけているのは、ボランティアの人たちの環境への思いをアクションにつなげ、それを継続できるようにすること。

ボランティアの皆さんが日々生活し、社会と関わりながら、グリーンピースが目指すシステムチェンジにどう協力できるのか、その仕組みを設計する方法を試行錯誤しています。最近力を入れている使い捨てプラスチックの問題では、東京杉並区・西荻窪で地元住民の人たちと一緒に活動しています。量り売りやマイ容器でお買い物するイベントを実施したり、自治体やお店の方にできるだけプラスチックごみを減らすように情報提供したりしています。西荻窪で市民の皆さんと一緒に取り組めるいい方法が見つかれば、それをほかの地域でも応用できるし、ボランティアの皆さんの関わりを増やせるのかなと考えています

仕事として環境保護に取り組んでいるわけではない一般市民の人たちが取り組めることは、少なくありません。署名や寄付といったアクションや、自分の住んでいる地域や働いている職場、通っている学校への働きかけもそのひとつです。ちひろさんは、「もっと何かしてみたい人たちのやる気や特技を生かしてアクションできる場を作りたい」と意欲を燃やしています。

このようにグリーンピースでは、一般市民であるたくさんの人びとの力を集めて社会を変えていく力を重視しています。それがピープルパワー。ちひろさんはその価値を、「いろいろな人が関わって力を集めれば、社会を変えられると思うんです。市民だけじゃないし、企業だけじゃないし、政府だけじゃない。みんなが協力していかないといけないんです」と実感を持って語ります。

環境問題に声をあげる若い世代と共に

現在、グリーンピースのボランティアには、全国からさまざまな人が登録しています。その中でも多いのは、20代、30代の人たち。

気候変動が喫緊の課題として注目を集める中、その被害を将来被ることになる若い世代の声は世界中でどんどん大きくなっています。ボランティアの大学生などからそのパワーを実感しているちひろさんも、グリーンピースのスタッフの中では若い世代にあたります。職場としてのグリーンピースはどんな風に見えているのでしょうか。

「多様性を受け入れる土台があるのがいいところだと感じています。環境問題はとても複雑だし、完全に予想できるわけでもない。だから臨機応変に動くことが求められる職場だと思うんです。そのためにも多様な価値観を受け入れ合おうとしているし、そういう雰囲気がとてもステキです。年齢を意識することは全然ないですね」

最後に、ちひろさんが目指す、100年後の理想の世界について尋ねると、「今の気候危機などの環境問題を乗り越えたとしても、違う危機があるんじゃないかと思っているんです」という回答が。そこには、危機に対して行動する人たちがたくさん存在し続けてほしいという、願いがありました。

課題解決のために取り組むことそのものに楽しみを見出しているというちひろさん。気候危機の解決に時間的な余裕はありませんが、そんな中だからこそ彼女のようにしなやかに課題に向き合っていくことが求められているのかもしれません。スタッフの誰もが問題意識を強く共有していますが、その向き合い方が人それぞれな点がまたグリーンピースらしいといえそうです。

儀同千弥(ぎどうちひろ)

2017年からグリーンピース・ジャパンでのボランティアに参加。活動を通じてイベントの企画や運営を経験したことから、よりたくさんの人々に気候危機などの課題を知ってほしいと考えるようになる。2018年2月よりアルバイトとして入職し、ボランティアコーディネーターとして働き始め、2020年2月から正職員。ボランティアだけでなく、大学生コミュニティを中心とした協力団体とのコラボ企画などを担当している。