国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日12月18日、報告書『スマート・スーパーマーケット』(日本語版)を発表しました(注1)。本報告書では、使い捨てプラスチックや包装材を使用しない仮想店舗「スマート・スーパーマーケット」を設定し、未来のスーパーマーケットのあり方を提示しています。世界各地ですでに実行されている解決策を集めて、スーパーの各売場から精算までのそれぞれの段階で、またテイクアウトやオンラインショッピングで、どのように使い捨てプラスチックに依存しないリユース(再利用)・リフィル(詰め替え)の仕組みが実現可能かを紹介するものです。

現在世界各地で、使い捨てプラスチックから代替素材への移行や、リサイクルへの取り組みなどが進んでいますが、素材を変えることによって別の環境問題を引き起こす恐れがあるなど、溢れる使い捨て包装の廃棄物に対応するには不十分な「まやかしの解決策」が多く、グリーンピースは大きな懸念を持っています。本日グリーンピースは、経産省と環境省の関連部署の担当者と本報告書をもとにリユース・リフィルについての意見交換を行い、提言書を提出しました(注2)。

以下は、本報告書で紹介しているリユース・リフィルシステムの事例 (一部抜粋) です(注3)。

青果売り場からプラスチック包装を取り除く

  • 「フード・イン・ザ・ヌード(Food in the nude)」ニュージーランド

「ミスト(霧)」で農産物の鮮度を保つ冷蔵設備を導入して以降、野菜や果物の裸売りが可能になり、一部の野菜では売上が300%も急増

量り売り自動販売システムなどで必要な分量だけをリユース可能な容器で購入

  • 「アルグラモ(Algramo)」チリ

米、豆類、洗剤などを必要な量だけ自分の容器で購入できる自動販売機が、2000以上の店舗に急速に広がり、すでに25万人が利用。大手消費財メーカーと提携して、電気自動三輪車を利用したリユース・リフィルの移動販売運用モデルを試験的に導入。

使い捨てプラスチック容器を使わずに輸送・販売できる商品を展開

  • 「ラッシュ(LUSH)」日本を含む44カ国で展開

商品のおよそ6割は「裸売り」で、包装されていない。固形のシャンプーバーは、世界全体で年間600万本近いプラスチック容器の節約に貢献。

使い捨てテイクアウト容器包装を使わない仕組み

  • 「リボルブ(Revolv)」バリ、シンガポール、香港

リユース可能なコーヒーカップを対象とした、デポジット返金の仕組みを試験的に実施。アプリを活用した返却可能なテイクアウト用のカップ、ボトル、食品容器を提供し、ごみ箱に捨てるのと同じくらい手軽に利用してもらうことを目指している。

マイバッグの持ち込みを奨励、無料貸し出しバッグやレンタルバッグを用意

  • 「ブーメラン・バッグズ(Boomerang Bags)」13カ国で展開

寄付された布でトートバッグを作成し、小売業者に配布する仕組み。マイバッグを忘れた利用者はトートバッグを借りることができ、使用後は「ブーメラン」のように店舗に返却。これまで20万個以上のトートバッグが手作りされ、捨てられる予定だった布など7万7862kgの廃棄物が埋立処分されずに済んだ。

リユース可能なオンラインシステムを構築

  • 「ループ(Loop)」米国、パリ

オンラインショッピングサイービスで、商品を耐久性のあるリユース可能な容器に入れて配達する「牛乳配達モデル」を試験的に実施。2020年までに米国の西海岸とトロント、英国、その後は日本での拡大を予定。

本報告書は、プラスチック汚染の危機に対するこれらの潜在的な解決策にそれぞれ利点と課題があることを示し、小売業者と消費財企業が協力して、使い捨てプラスチックからリユース社会への移行を加速するよう求めています。

グリーンピース・ジャパン プラスチック問題担当 大舘弘昌

「リユース・リフィルの販売システムを広めることは、地球環境を守るためだけでなく、ビジネスの将来にとっても可能性に満ちています。小売業者および消費財メーカーにとって、自分たちのビジネスと環境社会のつながりを重要視するならば、解決に向けた方向性は明確です。商品デザイン・販売方法を根本的に見直し、革新的なリユースの取り組みをいま始めることが求められています。重要なポイントは、既存の技術やアイデアなどを組み合わせるだけでも、すでに革新的な取り組みが世界中にあり、今すぐにでも取り組みを開始できることを証明しているということです。」

(注1)報告書『スマート・スーパーマーケット』英語版は2019年11月に発表

(注2)「真の循環型社会に向けて、リユース社会にシフトしていくための提言書」

(注3)本報告書の事例はすべて、世界各地の小売業者に求められる変化を紹介する目的で掲載しています。グリーンピースは、本報告書に記載される商品、ブランド、企業についていかなる保証・推奨もしていません。