こんにちは、食と農業担当の石原です。

スーパーさんへのアンケートで、消費者の食の安全のために「独自の農薬基準を持っていますか?」と質問すると、多くの企業さんがこう回答しました。

「国のルールに則って農薬を使用しているので、独自の基準はない」

でも、国が決めたルールに従うだけでは、消費者を農薬のリスクから守りきれないという事実があきらかになりました。

なぜなら…そもそも農家さんが購入する苗に、表示されていない農薬が使われている可能性があるから。

実際に、グリーンピースが独自に行った、野菜の苗の調査で、9点の苗のうち4点から、表示されていない残留農薬が検出されてしまいました。

つまり、苗の段階で使われる農薬の表示について、きちんとしたルールが存在しない、ということです。

苗にはどれくらい農薬が使われている?

今回の調査の目的は、有機栽培ではない慣行農産物の初期の生育過程を知ること。そして、「無農薬で野菜を育てたい」という思いで消費者が購入している苗に使用される農薬の実態を知ることです。

まず、2016年5月19日から21日にかけて、トマト苗3点、ナス苗3点、ピーマン苗1点、キュウリ苗2点のポット入り苗計9点を購入しました。購入場所は、農家さんや園芸を楽しむ消費者がよく訪れる首都圏のJA、園芸主力のホームセンター、一般のホームセンターです。

そして、専門機関に分析してもらったところ…

9点のうち4点から、表示のない農薬が検出

分析した9点の苗のうち4点から、使用が表示されていない農薬が検出されました。

表示なく検出された農薬は計4種。うち3種類がネオニコチノイド系農薬(ジノテフラン、アセタミプリド、イミダクロプリド)、1種類が殺菌剤のフルジオキソニルです。

農薬の抜け穴

今回の分析で、表示されていない農薬が検出された苗は、いずれも「接ぎ木苗」でした。「接ぎ木苗」とは、病気に強いほかの作物の根に、作りたい作物の芽をつないで栽培する、よくある方法です。

接ぎ木苗では、穂木(接ぎ木の上の部分)に使われた農薬は、種子処理に使用したものも含めて表示の義務がありますが、台木(下の部分)を育てる際に使用された農薬は表示されません。

このため、今回非表示の農薬が検出された理由は2つ、考えられます。

ケース1:穂木に使用した農薬を表示していなかった

この場合、穂木に利用した農薬は表示するのがルールなので、明らかな違反です。

ケース2:台木の育成に使用していた農薬だった

農林水産省のルールでは、「台木は苗のわずかな部分に過ぎない」「穂木と台木とダブルカウントになる」といった理由で、台木に使用した農薬を表示する必要はない、とされています。なので、”制度上は”、違反ではありません。

でも、実際今回の調査では、表示されている農薬に近い濃度で、非表示の農薬が検出されていますし、根元や土に使用された農薬は、植物に吸収されたり土壌環境に広がったりするおそれもあります。

ポットの苗は、土の部分ごと植え付けることが想定されています。台木の生育過程で農薬が使用されたなら、そのまま畑や菜園に持ち込まれることになります。

その事実が一切明らかにされないないのは、制度上の重大な欠陥です。

今回の調査では、2つの理由のうちのどちらなのか特定はできません。でも、いずれであっても、問題は大きいです

隠された農薬使用のリスク

苗の段階で農薬使用回数の表示に偽りがあると、イコール、野菜を口にする消費者の健康に被害がある、というわけではありません。

でも、きちんと情報が伝わらないことで、例えばこんなリスクが…

  • 表示義務がないことにより、トータルの使用農薬とその回数は誰にも把握できない
  • 特別栽培のように農薬の使用回数で付加価値を与える場合、回数を偽る結果となる
  • ただでさえ緩い農薬使用のルールが守られなくなる恐れがある

その結果として、安全性を信じて農産物を購入する消費者を裏切ることになります。

そして、「無農薬で野菜を育てたい」、とホームセンターで苗を買って育てている消費者をだますことにも…。

さらには、トマトやナスはすでに開花の時期。ネオニコチノイド系農薬が見つかってしまった作物で、受粉を頑張ってくれているミツバチにはすでに危険が及んでいるかもしれません…。

スーパーは独自の安全・安心の基準を

冒頭のスーパーさんの言葉。「ルールに沿って農薬を使用している」という姿勢が、実は危険をはらんでいること、おわかりいただけたと思います。

生協では生産者さんとの連携して、使っている農薬を把握し、安全・安心を守ろうという取り組みもあります。スーパーでもできるはず。そして、消費者に届ける側として、その責任があるはずです。

安全・安心の食卓のために、土や水を農薬で汚さないために、農薬に頼った農業の”あたりまえ”をスーパーや生協などのお店と一緒に変えるために、あなたも声をあげてください。

「有機を増やして!」 いますぐ署名 >

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調査の詳細は、こちらのブリーフィングペーパーをご覧ください。
グリーンピースが、スーパー6社と生協に対して実施したアンケート調査の結果はこちらのページから。

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非農耕地用除草剤の不適切な使用によって、日本から緑が全く亡くなってしまいます。各省連携を密にして、早急に対策をとってください。 樹木の幹にドリルで穴開けして、原液を注入する。 極めて悪質な行為が横行しています。裏に反社会的集団が居るとか・・・、その筋からもp調べください。 私も、被害に遭遇しましたが、千葉県にお聞きしましたら、第1号被害のようですが、2号・・・3号を防ぎたいのです。