こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。
6月19日の、韓国の新大統領がこれからは、原発にも石炭にもたよらないとする「エネルギーシフト宣言」をしました。（以下のビデオをぜひごらんください）
これを受けて、7月27日、「韓国もエネルギーシフト！現地からの報告」と題して、韓国で脱原発に取り組んでいるグリーンピースのエネルギー担当ダウル・チャンのトークイベントを開催しました。
（協力：国際環境NGO FoE Japan 福島老朽原発を考える会 eシフト）
その前篇です。（27日の発表および来日中のインタビューをまとめたものです）
わたしはグリーンピース東アジアのダウル・チャンです。
グリーンピース東アジアは1997年に香港事務所から始まり、2002年に北京、2010年に台北、そして2011年にソウル事務所ができました。
写真は、国会議事堂に「新しい韓国に新しいエネルギーを」とプロジェクション（投影）したグリーンピースのアクションです。
1. 韓国のエネルギー事情
韓国の電源構成は、設備容量でいうと、天然ガス3割、石炭3割、原発2割、自然エネルギーは5%程度です。
これが、実際の発電量のシェアでは、天然ガス2割、石炭4割、原発3割、自然エネルギー1.6%となります。
（スライドで自然エネルギーがそれぞれ8.7%、4.8%となっていますが、これには、燃料電池、水素発電、石炭ガス化複合発電も含まれており、太陽光、風力発電では、それぞれ5%、1.6%にすぎません）
設備容量と発電量でのシェアが違ってくるのは、安い石炭と、こまかに発電量を調整できない原発を優先して使っているためです。
韓国のエネルギー政策が決まるところ
韓国でエネルギー政策を決めるのは産業通商資源部です。
ここで25年分の国家エネルギー基本計画が決められ、5年毎に改定されます。現在のものは前政権のつくった第二次国家エネルギー計画で、2018年末までに改定することになっています。ここで、新政権が原子力の段階的廃止を含む基本計画を作ります。
それをもとに、発電所を何機、いつつくるかを入れ込む長期需給計画がつくられ、これは、2年毎に改定されており、新政権が2017年末までに改定(第8次計画を策定）することになっています。
これまでは….
これまでの計画では、原発は運営中が25基（そのうち１基は閉鎖されました）、建設中が5基、計画中が6基ありました。
石炭火力については運営中が57基、建設中が4基、計画中が９基です。
2. 韓国の原発事情
原発は現在西海岸に１カ所、東海岸に3カ所あります。それぞれ６基づつあります。
そのうちコリ原発に3基、ハヌル原発に2基が建設されている最中です。
ハヌル原発にはさらに2基の増設計画があります。
さらに東海岸に2カ所、２基づつの建設が計画されています。
韓国は世界6位の原発大国
韓国は世界６位の原発大国です。
アメリカ、フランス、中国、日本に比べるとそれほどでもないように見えますが、今、世界に30ほど原発のある国があり、下位15か国が持つ原発を全て合わせると韓国の規模になるほど、原発大国なのです。
韓国は最悪の原発密集国
また、アメリカは99基もありますが、広大な国土にあるわけで、国土の面積から考えると、韓国は狭い国土に24基がひしめく、世界で最悪の原発密集国になります。
人口の多い地域に建つ原発
韓国の原発のもう一つの特徴は、人口の多いところにあることです。
ウォルソン原発の30キロ圏には130万人が、コリ原発の30キロ圏には382万人が住んでおり、東京電力福島原発で避難したのが17万人ほどであったことを考えると、
いかに多いかわかります。「どうかしている！」としか思えません。
老朽化も進んでいる
さらに問題になっているのが、老朽化です。韓国の原発の11基が、2029年までに設計寿命に到達します。
（写真は、コリ原発に対するグリーンピースによるプロジェクション）
韓国の原発には、設計寿命が30年のものと40年のものがあります。（なお、比較的新しい原発の設計寿命は60年となっています）
東電福島原発事故の教訓
このような韓国の原発事情を考えたとき、東京電力福島原発事故の教訓は、なんでしょうか。
それは、原発がその敷地内に何基もある、という”複数基によるリスク”ではないでしょうか。
一つのサイトにいくつもの原発があれば
事故発生率は上昇します。
事故が次の事故を呼ぶ連鎖事故のリスクがあります。
共通の原因によって、同時多発事故もありえます。
放出される放射能の量も拡大します。
貯蔵してある使用済み核燃料も多くなります。
事故対応、管理がより困難となります。
事故による廃棄物の量も増大します。
世界では、１カ所に平均2.4基。 韓国は全てに6基づつ
今、世界には184カ所に446基の原発があり、1カ所あたりの平均は2.4基です。
しかし、韓国では、全てに6基づつあるのです。
世界に、1カ所に6基以上の原発は、11か所あります。
日本にも、福島原発以外にも、ありますね。どこだかわかりますか？
それは、7基を抱える柏崎刈羽原発です。
巨大原発トップ10のうち2,3,4,7位が韓国に
長年止まっている柏崎刈羽原発を抜かすと、韓国が世界の巨大原発トップ10の2,3,4,7位を占めます。
コリ原発で建設中の3基が完成すれば、世界最大の原発サイトに
コリ原発で建設中の3基が完成すれば、1サイトに9基となり、世界最大になります。
ここでもう一度注目してもらいたいのは、30キロ圏の人口です。
現状世界最大のカナダのブルース原発の30キロ圏に住んでいるのは3万人です。
コリ原発の30キロ圏には382万人が住んでいるのです。
韓国でも懸念が広がりはじめた「地震」
韓国では人が感じるような大きな地震はこれまであまりありませんでした。
ところが去年、マグニチュード5.8の地震がありました。
多くの人々にとって、生まれて初めての大きな地震でした。
多くの人が、日本の原発事故が地震によって起こったことを知っているので、
韓国でも、原発は大丈夫か、という懸念が高まりました。
韓国の原発が建設された当時は、活断層のことは調査されていませんでした。
しかし、現在では、コリ原発に近いプサン近郊に59もの活断層があることがわかっています。
3. コリ原発の許容不可能なリスク
コリ原発には、南のコリ原発1,2,3,4,5,6号機と東側の新コリ原発1号機と建設中の3基があります。
建設中の3基のうち、1基は95%まで完成しています。
残りの2基の進捗率は28%程度です。
コリ原発で事故があったら？
コリ原発は規模も大きく、また、韓国では使用済み核燃料はそのままサイトに貯蔵しているので、使用済み核燃料の量が膨大です。
さらに、30キロ圏に380万人が住んでいます。
福島原発事故の被害額が20兆円から70兆円にもなるという試算がありますが、これらを考えると、それをはるかに超えること被害が予想されます。
また、コリ原発から18キロにウルサン石油化学コンビナート、21キロにヘウンデという数万人が海水浴に訪れる観光地、25キロにヒュンダイ自動車工場、32キロに世界６位の大きさのプサン港があります。
日本への影響
コリ原発は、日本にとってどんな意味があるでしょう。
この放射能拡散予測図は、アメリカの学者によるものですが、風が大陸から海方向に吹いた場合（それがふつうですが）、コリ原発からの放射能を浴びるのは、韓国の人より、日本の人、ということになります。
コリ３号機の使用済み核燃料プールで火災事故があったら…
最悪のシナリオでは、54,000平方キロメートルが汚染されます。これは韓国の国土の約半分です。
避難しなければならない人口は2430万人。これは韓国の人口の約半分です。
感情的な言葉は使わないようにしているのですが「クレイジー」としかいいようがありません。
前篇終わり。後篇で、韓国のエネルギーシフトできるのか？ 市民はエネルギーシフトにどうかかわってきたのか、をお届けします。続きはこちら
7月27日のトークイベントのもようは、グリーンピース・ジャパンのフェイスブックブックからご覧になれます。
発表資料はこちらです。
発表者紹介：ダウル・チャン/グリーンピース東アジア・ソウル事務所(韓国)・エネルギー担当
経済学の学士号及び国際政策と再生可能エネルギーの分野でそれぞれ修士号を取得。政府機関、国連及びシンクタンクでの勤務の後、東京電力福島原発事故以降、グリーンピース東アジアのソウル事務所にて、韓国における原発の段階的廃止のキャンペーンを担当、グリーンピースの福島県での放射能環境調査にも複数回参加、現在に至る。
お礼
今回の報告会を設けることができたのも、サポーターのみなさまのおかげです。お礼を申し上げます。
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