病気、貧困、自殺、家庭崩壊、離婚、いじめ、地域社会の崩壊。これらは、 福島第一原発事故が生んだ目には見えない被災者たちの困難です。しかし、こうした問題が被災者の自己責任として扱われています。そのため、1万人以上の被災者が、日本政府と東京電力の責任を明らかにするため訴訟を起こしています。最小限の避難、最小限の補償、放射能は危なくないという原発事故に対する日本政府の対応が世界の常識になってはなりません。

とても迫力のある、心を打たれるスピーチでした。7分間、国連の各国政府代表者らが、原発事故被害者が受けてきた人権侵害を訴える福島のお母さんの、怒りと悲しみの声に耳を傾けました。

※イメージ画像

一人息子をもつ母であり、今なお避難生活を続けている園田さん。国連に向けてスピーチをすると決断したのは、自分やご家族のためだけではありませんでした。多くの原発事故被害者、避難者の声、原発のない未来のために立ち上がってきた人たちの声、みんなの声を届けるために、そこにいらっしゃいました。

先週スイス・ジュネーブにある国連欧州本部で開かれていたのは、国連の人権審査の関連会合。国連人権理事会は、全加盟国の人権状況を定期的に審査します。今年は日本が審査される年で、原発事故被害者の人権問題に国際社会のスポットライトをあてる、4年に1度の貴重なチャンスです。

この審査では、NGOの積極的な情報提供が推奨されており、今回グリーンピースのほかにも、4つの団体が日本国内でのさまざまな人権侵害を訴えるためにきていました。

園田さんは、原発事故被害者、特に女性と子どもが直面している現状を訴えました。

2011311日に出された『原子力緊急事態宣言』は、現在も解除されていません。東京電力は今年、福島原発2号機原子炉格納容器で毎時650シーベルトを観測したと発表しました 。人間が即死するレベルです。作業ロボットですら、壊れて機能しません。それでも政府は、原発から5キロしか離れていない地域にさえ、子どもと共に避難者を帰還するよう圧力をかけています。 

東京電力は先週、柏崎刈羽原発の再稼働審査の事実上の合格を得ました。政府は、国民の人権より原子力産業を守ることに躍起になっています。

園田さんを、ジュネーブに送ることを可能にしたのは、彼女と思いを同じくする方々の思いでした。彼女と私を含めグリーンピースのスタッフがジュネーブで活動するため費用をクラウドファンディングで募ったところ、676人もの方が、2,801,600円(1011日入金確認済)のご支援をくださいました。

みなさんの思いもジュネーブに連れていくために、スイスの折り紙アーティスト、シッポ・マボナさんと一緒に巨大な折り鶴アートを製作し、スピーチ当日、国連前に展示しました。全長4.5メートルの折り鶴の翼には、園田さんに託した思いや応援メッセージがいっぱいに広がり、園田さんの背中を押しました。

このスピーチの舞台裏で、グリーンピースと園田さんは、現地で積極的にロビー活動を行いました。この問題に関心を示してくれそうな国の担当者と一対一のミーティングを行い、また関連する国連の人権担当者らに会ってきました。

私たちの訴えを聞いた担当者たちは、「非常に深刻な問題。国際社会ではまだまだ知られていない」と重く受け止めていました。特に、福島の最大被ばく許容量が、いまだ国際基準の20倍という数字に、みなさんとても驚いていました。そして、イギリスのガーディアン紙をはじめ海外の大手メディアでも、園田さんの訴えが取り上げられました。

11月にはこの人権審査の作業部会(本会合)が、同じくジュネーブで開催されます。グリーンピースは、その際にも職員を派遣して、働きかけを続けていきます。この人権審査を受けて、国連人権理事会のレポートが発表されるのは来年3月。グリーンピースと園田さんは、原発事故による人権侵害が、日本の深刻な人権問題の一つとして国連に認知され、日本政府に正式に改善勧告されることを目指しています。

園田さんはスピーチのあと、お気持ちを話してくれました。

「多くの人の応援があって、被災者の声を国連や各国政府の人権問題担当者に届けることができ、深く感謝しています。原発事故以来、お母さんたちが子連れでデモに参加したり、訴訟を起こしたりして立ち上がりました。しかしお母さん達の声が政府に届きません。そんな状況や避難生活にお母さんたちは疲れています。

折り鶴アートに『諦めかけていたけど、ありがとう』という言葉を見つけた時、私の行動が一人のお母さんを勇気づけられたと知って、心から嬉しかったです」

[10月20日追記]

園田さんから、応援してくださったみなさんへメッセージが届きました。

女性や子どもは、原発事故が起きてからもっとも弱い立場に立たされてきました。その中で、子どもたちを守るために、勇気を振り絞って立ち上がっているのもまた女性です。逆境に立たされてなお、他者を奮い立たせるほどの、園田さんのしなやかな強さに、改めて敬意を表します。

そして、園田さんのスピーチと現地での活動の実現をご支援くださったみなさまに、深く御礼を申し上げます。

城野千里 エネルギーチーム 広報担当

園田さんに同行した、城野(左)と本プロジェクトのリーダーケンドラ・ウルリッチ

園田さんのスピーチはこちらからお聴きいただけます。

プラスリリース2017/10/12 :グリーンピースとともに福島のお母さんが、 国連の舞台で日本政府の人権侵害是正を訴え 「被害者への対応が、世界で今後起こりうる原発事故後のモデルになってほしくない」

関連ブログ:国連に、原発事故の人権侵害を訴える

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