アップルやイケアなど、世界の大企業が次々と自然エネルギー100%をめざすことを約束しています。なかでも動きが早いのが、フェイスブック、グーグルなどのIT企業。エコなだけではない、IT企業が自然エネルギーをめざす理由とは?

グリーンピース・アメリカの上級ITアナリスト、ギャリー・クック(「環境に優しい電子機器企業ガイド」執筆者)、そしてCSRスペシャリストのEY Japanのムーラン・ムー氏をゲストスピーカーに、先週日本のビジネスパーソンに向けて行ったセミナーからご紹介します。

このセミナーでは、世界のトップIT企業と自然エネルギー活用について対話を続けてきたクックが、ガイドの紹介とIT企業の自然エネルギー100%への取り組みをお話しました。ゲストスピーカーとしてEY Japanのムーラン・ムー氏、ファシリテーターとして株式会社クレアンの玉沖貴子氏という2人のCSRスペシャリストをお迎えし、IT企業にとどまらず、グローバルな視点から日本企業に求められる行動などについてもお話いただきました。当日は新電力ほかビジネス界から、約50名の方々がご参加くださいました。

企業が自然エネルギー100%・クリーン電力目指す理由:その1

それは、世界で喫緊の課題である気候変動をこれ以上悪化させないため。

下図はIT業界の電力需要を世界各国と比べたものです。これを見てみると、IT業界は中国、アメリカに続いて第3位でした(2012年時点)。今後もこの需要は伸びることが予想されています。

IT業界の電力は大きく4つに分けられます。それは、左から順にデータセンター、インターネット、IT機器の使用、製造で、なかでもデータセンターと製造に必要な電力に、グリーンピースは着目しています。

※鮮明なスライドは実際のプレゼン資料からご覧いただけます
クックのプレゼンテーションより(以下同様)

IT機器のライフサイクルのうち、製造段階で約8割の温室効果ガスが排出されています。その理由は、製造の多くが石炭火力発電に強く依存するアジア地域(とくに中国、ベトナム、韓国)で製造されているからです。
気候変動対策が手遅れになる前に、IT企業だけでなく、サプライチェーンも含めビジネス全体が自然エネルギー100%となる必要があります。
具体的に企業が自然エネルギー導入するためにできることとして、たとえば、アップルなどのIT企業が行なっているような敷地内での発電や直接投資にくわえ、エネルギー供給業者と協力することで、自然エネルギーの割合を増やしていくことができます。

企業が自然エネルギー・クリーン電力100%目指す理由:その2

それは、ビジネスの持続可能性にも直結するから。

自然エネルギーの導入メリットについて分析したDeloitte社のレポートを紹介するクックのスライド

具体的には、長期的に契約することで価格の変動を抑える、エネルギーコストの削減、近年企業の気候変動対策に関心を持っている投資家の評価にもつながります。

ほかにも、「すでに自然エネルギー100%を約束した企業は消費者の声だけでなく、従業員の声も気にしている。そうでなければ従業員をつなぎとめることができない」とクックは話しました。「エコなことをする企業」という従業員の望む企業像を示すことは、つなぎとめにも大切なことです。さらには、これから就職をする世代は、企業がどのように気候変動対策を行なっているかという点を見て就職活動をしている、とクックは紹介しました。

企業が自然エネルギー100%・クリーン電力目指す理由:その3

それは、リーダーになることで、先駆者ならではのサポートが得られ、また、そのあとに続く”フォロワー”が出てくるから(他業界への波及効果)。

2011年にフェイスブックが初めて自然エネルギー100%を目指すと宣言したあと、アップル、グーグルが後に続き、IT企業が中心となり自然エネルギー100%利用宣言の波が起きました。

下の図は、実際に企業がどれくらい自然エネルギーを調達したかを表にしたものです(アメリカ国内のみのデータ)。当初はIT企業が多くみられましたが、年を追うごとに小売企業や自動車メーカーなどの姿もみられます(詳細はクックのプレゼンテーション資料の10ページ目から確認できます)。

セミナーでは、目標達成の方法が明らかになるまで約束をしない、宣言をしない、といった日本企業の傾向があるとムー氏から指摘がありました。「まず自然エネルギー100%を宣言し、実行していく」というステップが及ぼす影響力の大きさはこの図にもあらわれています。

また、当初、フェイスブックが宣言したとき、どのように達成できるかは彼ら自身も分かっていなかったと言います。それでも、明確な目標を対外的に示すことで、達成するために必要な方策などをアドバイスしたり、サポートをする人たちがでてきます。これは、先駆者ならではのメリットと言えます。

自然エネルギー・クリーン電力100%への道のり

CSRスペシャリストとして様々な企業のCSR活動をサポートしているムー氏からは、ビジネスモデルの例として、フェアフォン(オランダ)の環境負荷の少ない循環型の生産モデルについてご紹介がありました(ムー氏は元フェアフォン社員なのです)。最後に、持続可能なビジネスのためには、コミットメント、実行力、透明性、そしてNGOとの協働という4つの柱が必要だと強調されていました。企業は、NGO(市民社会)と対話・協働することによって、自然エネルギー導入の壁となっている制度や規制などを解消していくことができるとのメッセージをくださいました。

クリーン電力への変化はわたしたちの声で!

2011年、フェイスブックが初めてデータセンターを自然エネルギー100%を目指すと宣言したあと、現在に至るまで約20社が同様の約束をしています。みなさんはIT企業が自然エネ100%にすすむ原動力となったのが、市民や従業員の声が企業に届いたから、ということを知っていましたか? 

2011年、Facebook上に作ったUnfriend Coal(石炭と友達をやめる)ページ上で、24時間以内のコメント数世界記録を目指し、8万件を超えるコメントで世界記録の更新を達成!Facebookも自然エネルギーと友達になることを約束しました。

グリーンピースはこれまでも、市民社会の声に耳を傾けるよう企業に対しキャンペーンを行ってきました。市民からの声を効果的に届け、その結果、フェイスブックやアップルといったITトップ企業の自然エネルギーへの転換を生みだしてきました。
現在私たちは、自然エネルギーを1%*しか利用していないことが明らかになったサムスン電子CEO宛に、気候変動を悪化させないよう求めるメールアクションを展開しています(「送信する」を押すと、CEO宛に直接メールが届きます!)。

※このアクションは終了しました。

詳しくは、ブログ『みんなの声がサムスンを変えました!』をご覧ください。

*サムスン電子のサステナビリティレポートより

セミナー当日資料はこちらからご覧いただけます。

右からギャリー・クック、ムーラン・ムー氏、玉沖貴子氏

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パブリックエンゲージメント 石川

ライターについて

パブリックエンゲージメント 石川
3.11の経験を通して、人と環境を犠牲にしていたこれまでの生き方に気がつき、命の源である環境を守ることをライフワークにすると決心。人と人がつながることが大きなムーブメントをつくり、社会を少しずつ変えていけると信じています。

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