これまで大勢の人が懸念を表明してきたネオニコチノイド系農薬の一種である殺虫剤スルホキサフロル(*1)が、昨年末、日本でも登録(承認)され、国内でお米や果物、野菜への使用や、食品への残留が認められるようになってしまいました。(*2)

スルホキサフロルの解禁に対しては、消費者、養蜂家、科学者ほか幅広い市民が危機感をもち、3回のパブリックコメントによる合計約1000通にのぼる意見(*3)や、約8,000筆の署名(*4)をとおして、厚生労働省や農林水産省に対して、危険な農薬はいらないと訴えてきました。

今回の決定は、こうした度重なる声や科学的意見を無視した、容認しがたいものです。

一方、こうした市民の力強い声のおかげで、スルホキサフロルは、

  • 審査のプロセスが一旦保留になり(*5)
  • 厚生労働省の審議会でも「重く受け止める」(部会長)、「パブリックコメントの意見を踏まえて、適切な対応を」(委員)といった意見がだされ(*6)
  • 同時期に申請された他のネオニコ系農薬とくらべると、2年以上も登録を遅らせる

ことにつながりました。

その間に、日本でもやっと、ハチや鳥など陸上の野生生物などを農薬から守る基準の検討や(環境省(*7)、ハチへの毒性をより慎重に審査する方法の検討(農水省*8)を始める、といった動きが出てきたことは重要です。

厚生労働省にとどいた合計で1000件ちかいパブコメ

今後、お米や野菜、果物にも使用されていきます

スルホキサフロルは今後、商品名「エクシード」(水田用)とか「トランスフォーム」(園芸用)として一般に販売されていきます(要注意!)。

メーカーの日産化学工業㈱のウェブサイトをみるとこんなこともかかれています。

「水稲で問題となる斑点米カメムシ類、ウンカ類、ツマグロヨコバイに安定した効果を示します。(中略)各種斑点米カメムシ類に対し、優れた斑点米抑制効果を示します。」(*9)

斑点米(はんてんまい)とは、カメムシが若い穂の汁を吸った後が黒く残ったお米。 斑点米が1,000粒に2粒混じるだけで買取価格が下がってしまうため、カメムシを殺すための農薬が散布されるのです。

でも、殺虫剤を田んぼにまいて斑点米をなくそうというのは、もう時代遅れの道。

なぜなら、斑点米は精米の時に機械で取り除けるから。今、農家や地方自治体、生協などから、斑点米カメムシ退治のために田んぼにネオニコなどの農薬散布するのはやめようという声がつぎつぎと上がっています。

農薬による土や水の汚染・ミツバチ大量死を防ぎ、食の安全をまもるため、そして農家の農薬散布の負担を減らすために、農薬散布をやめる取り組みも広がりつつあります。

農薬に頼らない方法へシフトを急ごう

斑点米を取り除く機械があるにもかかわらず農薬を使ってしまうのは、斑点米の混入を農家の出荷段階で制限しようとする時代遅れのルールを政府がつづけているため。農家が、このルールを見直すよう政府に声を上げています。あなたもオンラインアクションに参加して、農家のみなさんの声をさらに大きくしてください。どれだけたくさんの農家や消費者が、安全安心のお米を求めているか、政府に伝えましょう。

賛同する >

*1 殺虫剤スルホキサフロルは、ミツバチへの毒性が強いことから製造元のダウ・アグロサイエンス社のあるアメリカでは養蜂家らが裁判を起こし、一時認可が取り消された農薬です。なお、物質の構造からスルホキサフロルを別系統に分類する見方もありますが、浸透性、ミツバチへの毒性、虫への作用のしくみなどからネオニコチノイド系農薬に含めて考えるべき殺虫剤です。

*2 [平成29年12月25日生食発1225第4号]食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について

*3 パブリックコメント内訳:食品安全委員会に80件、厚生労働省に537件、386件。

*4 共同プレスリリース:環境NGO4団体、厚生労働省へ署名7,818筆を提出

*5 ブログ 新しいネオニコの解禁が、みんなの声で初めて止まりました!

*6 審議の模様は2017年6月22日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録2017年6月26日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会議事録から見ることができます。以下一部抜粋:

「再度、パブリックコメントの意見を踏まえて、適切な対応を行えるように、厚生労働省からも(農林水産省等に)お伝えいただきたいと思います」
「(ミツバチへの影響や生態系の影響は厚生労働省の部会の審議する範囲ではない、とした上で)「このパブリックコメントにおいて強い懸念が多くの皆様から寄せられたことは部会として重く受けとめております。」
「パブリックコメントのところで、これだけミツバチへの影響、環境への影響という意見がたくさん出てきて、(中略)米国ではある程度規制をかけているにもかかわらず、日本では何もそういう規制がなく、そのまま認めるというところは、一消費者としてちょっと不安に感じるところがある」
「(中略)今のようなお話をパブリックコメントで心配していらっしゃる方々にお伝えするというか、そういう方々が見てくださるような方法はとっていただいているのでしょうか。」

*7 ブログ 環境省、野生のハチたちも農薬から守る方針を決める

*8第17回 農業資材審議会農薬分科会配付資料 資料5-2  その他の改正事項 2ページめ「2.蜜蜂への影響に関する評価の改善」

*9 http://www.nissan-agro.net/products/single.php?id=24020

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グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。世界中の300万人以上の人々からの寄付に支えられ、企業や政府、一般の人々により良い代替策を求める活動を行っています。ぜひ私たちと一緒に、行動してください。

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