「ウミガメ、海鳥、アザラシ、そしてクジラが、制御不可能なプラスチック汚染の犠牲となっていることは明らかな事実です。しかし、世界規模のプラスチック危機によって苦しんでいる「人」の映像を最後にみたのはいつでしょうか?」

もしあなたが、人間はプラスチック汚染の影響を受けることがないと信じていたとしても、仕方ないかもしれません。実際、プラスチック汚染によって被害を受けている人の話はめったに報道されません。
私たちの(少なくとも私の)SNSは、変形したストローがカメの鼻に詰まった動画や死んでしまった鳥の写真、使い捨てのプラスチックがお腹の中に溜まってしまったクジラの写真で溢れています。

しかし、プラスチック汚染による被害から身を守るための支援もないまま、世界中に、そしてあなた自身の国にも、プラスチックごみが流れ込みんでいます。プラスチック汚染は人権問題でもあるという事実に目を向ける必要に迫られているのです。

グリーンピース東アジアと脱焼却グローバル連合(GAIA)による新たな調査では、世界中の「リサイクル可能な」プラスチックの流れと、それが人に与える影響を詳細に記されています。

1. プラスチックごみは、受け入れを止められない、または受け入れてもうまく処理できない国に流れ込んでいる

2018年のはじめ、中国はプラスチック、紙そして布を含む世界中の廃棄物の受け入れを停止しました。以前まで中国のリサイクル業者は、資源の国内需要を満たすために、世界のトップ廃棄物輸出国ーアメリカ、イギリス、ドイツそして日本ーのリサイクル可能なプラスチック廃棄物を受け入れていました。しかし2018年から実質的に受け入れを停止すると、今度は東南アジアへ廃棄物が流れ込んでいきました。

最初はタイ、マレーシア、ベトナムなど、プラスチック廃棄物の流入を制限するルールを設けた国へ運ばれました。いったん流入規制がうまくいくと、プラスチックごみは次の犠牲者へと移っていきました。もっとも顕著であったのはインドネシアでした。

脱焼却グローバル連合はそれらのコミュニティへ流れ込むプラスチック廃棄物の影響を調査しました。調査したのは、ごみが約3メートルも積み重なり、作物が汚染され、野焼きされているようなところでした。プラスチックが燃えることで大気中に放出される汚染されたガスによって、周辺に住む住民に深刻な被害をもたらしていたのです。

2. プラスチックごみを輸出できないと、結果的に貧弱な地域へとたどり着いてしまう

プラスチックごみの輸出先がなくなると、北アメリカやヨーロッパの多くの廃棄物輸出国は国内にごみが積み重なっていくのを見ているしかありません。報道では、経済的に裕福ではない、よりリスクに晒されやすいコミュニティに、ごみの山が積み重なっていることが伝えられています。そしてそこでは、公衆衛生の問題が発生するのです。

現在の”リサイクルシステム”は、世界各地やあなたの暮らす都市の周りにある傷つきやすい地域が被害を被ることで、成り立っているのです。

3. プラスチックは誰かの利益のために生産される

ネスレやユニリーバのような企業はその利益の多くを使い捨てプラスチックのパッケージから得ています。プラスチック問題はリサイクルによって解決できると言いながら。
しかし、プラスチック問題について真剣に考えている人は、日常生活で使う大量のプラスチックが決してリサイクルでは処理しきれないことを理解しているはずです。

また、プラスチック自体が化石燃料から作られたものであり、石油会社によってロビー活動が行われていることは忘れてはならないことです。企業は問題に根源から取り組むのではなく、使い捨てプラスチックの現状を必死に維持しようとしています。

プラスチック危機は、使い捨てプラスチックの生産を停止することこそが問題解決になります。しかしそれらの企業は、企業の利益を確保するために、プラスチック汚染問題はリサイクルによって解決できると主張し、私たちが本来の解決策が見えないように目隠しをしています。プラスチックごみによって影響を受ける、私たちを犠牲にしてまで。

さらに知りたい人はこちらの報告書をどうぞ。

翻訳:妻井瑞季(グリーンピース・ジャパン SNSインターン)