ごみが出ないゼロウェイストのまち。車じゃなくて人が中心の、安全で大気汚染のないまち。空き家を活用してコミュニティのつながりが次々と生まれるまち。

あなたが最高に住みたいと思うまちには、何がありますか?

新型コロナ感染症で、これまでの「普通」は一変しました。働き方について、家や家族との時間の過ごし方について、自分が暮らす地域社会について。もっとこうだったらいいのにという思いが芽生えた方も多かったのではないでしょうか。

東京都知事選に先立って、グリーンピース・ジャパンのスタッフ、ボランティアメンバー、寄付サポーター、東京で環境や社会問題について活動するみなさんと一緒にワークショップを行って、「最高に住みたい東京」の姿を描きました。

ここで紹介する12の方法は、そのワークショップから生まれたアイデアです。人々にとって暮らしやすくて安全で、地球環境にとってもプラスになる方法を見ていきましょう。

1.ファーマーズマーケット

近くにファーマーズマーケットや直売所があり、農家から直接買うことができたら、自然の循環に沿った農業を直接サポートすることもできるし、その食べものの輸送にかかるエネルギー(フード・マイレージ)を減らすこともできます。

日本よりもファーマーズマーケットが広がるアメリカでは、スーパーマーケットでは平均して1,600キロ輸送されているのに対して、多くのファーマーズマーケットでは輸送が320キロ以下の食品しか取り扱いを認めていません。また、ファーマーズマーケットに出店する5人に4人の農家が、お客さんと農法について話していると答えています。*1 

食養の考え方に「身土不二(しんどふじ)」という言葉があります。人はその土地に合った作物に順応して生きてきたので、「その土地のものを食べ、生活するのがよい」というう意味です。作る人と出会う場所は、新鮮、おいしいというだけではない、長い目で見た健康や心遣いを受け取ったり、手渡したりできる場所でもあります。

2. 誰でも土に触れられる都市農園

街のいたるところに市民農園があり、だれでも季節の食べものを育てられる緑の拠点が都市の中にたくさんあれば、いのちを育む土や、作物の実りを支えるミツバチのような小さな生きものたちとの共生を感じることができます。

デンマーク工科大学、マサチューセッツ工科大学の研究者は、都市型農園は、都市から出る生ごみや排水などの有効活用につながり、輸送にかかるCO2を減らし、食品ロスや無駄なパッケージを削減し、ヒートアイランド現象の緩和にも役立つ、と評価しています。*2 

3. 自然の再生

両岸がコンクリートが当たり前の都市の川を、メダカやトンボもいる自然本来の姿に近づけ、洪水対策も兼ねた広い河川敷の緑地は、四季折々の花が咲いています。海の水質を改善し、魚たちが戻ってきて、人間も遊びに行けます。都会の中に、そんな生きものと人間のオアシスを取り戻すことができます。

都市の自然の再生には、再生工事に加えて、例えば河川敷を住民が管理できるようにするなど、住民が環境づくりに参加できるように自治体が後押しすることで、環境教育にもなります。

例えば、アサリやカニなどの生きものが暮らしていて、水鳥がやってくる中継地にもなっている千葉県の三番瀬は、昭和の埋め立て事業によって三方がコンクリートで固められていましたが、現在、行政と専門家、市民が参加する再生計画を進めています*3

4. 循環型でごみゼロへ

自宅で出る生ごみは地域で回収・堆肥化される。新鮮な野菜が裸売りされている。自分が持っていくリユース容器で商品を購入でき、プラスチックごみが出なくなる。そんなまちに住んでみたくはないですか?

徳島県上勝町では、焼却や埋め立てに依存したごみ処理でなく、そもそもごみが発生しないまちづくりを目指し、2003年に日本で初めて「ゼロウェイスト宣言」を行いました。

ごみをださない取り組みを地域の人々が一緒に行ってきたことで、生ごみは100%堆肥化され、町としてごみ処理費用を6割も削減することに成功しています。*4

5. 安全でエコな交通手段

歩道を広げて、歩道を車椅子やバギーも安全に、歩道や車道とわかれた自転車レーンを拡充して、より安全に。バス停にはシェアサイクルポートも併設すれば、困った駐輪もなくせて、もっと便利になります。

例えばデンマークのコペンハーゲンでは、市内の一部で完全に車を禁止して、自転車レーンを進めています。他にも、住民以外の車を禁止したり、ピークの時間帯に通行料を課したりするところもあります。*5 日本にも、東京都の国立市のように、安全な自転車レーンの設置を進めているまちもあります。

安全で手頃な値段で都市を移動できるようになれば、自動車の必要性はぐっと減ります。タクシーやバスなど必要な自動車の燃料は自然エネルギーにすれば、空気もきれいになり、騒音もCO2も削減されます。

6. エシカル消費

ファストファッションのように次から次へと消費する代わりに、ずっと使いたいものを選んで、大切に手直ししながら使い続けるような、エシカルな消費を実践するには、消費を勧める店ばかりではなく、直す場所や技術がコミュニティの中に必要です。

例えば、リペア(お直し)カフェという場所が世界中に存在します。何か壊れてしまったら、修理に必要な道具や素材が揃っていて、手伝ってくれるエキスパートがいる、リペアカフェに持ち寄ります。こうした場所が街の中にあれば、直しながら長く使う暮らしを実践できます。*6 また、ミシンなどをあまり使わないものや高価で所有できないものを、コミュニティ内の誰もがシェアして使える、ツールライブラリー(道具の図書館)がある街も増えています。*7 

7. 支え合う、誰も取り残さない経済

生活に必要な最低限のお金を受け取れるベーシックインカムの仕組みや、医療・福祉・介護・教育が、必要な人に人に届くセーフティネットが整った社会だと、いいと思いませんか?

すでに市民のイニシアティブで始まっている以下のような試みも、政治の後押しで必要な人すべてに届けることが可能になります。

  • 食料を困っている人に低価格や無料で提供するフードバンク。
  • 農作物や製品を、適正な価格で買って、生産者を支えるフェアトレード。
  • 市民の生産活動や社会的事業を支える市民バンクやマイクロクレジット。

スペインでは、コロナ危機後の経済再生として、ベーシックインカムの導入を発表しました。対象者は462ユーロを毎月受け取ることになります。*8ドイツには、賞味期限切れの食品だけを低価格で販売するスーパーマーケットがすでに存在しています。*9

8. 自然エネルギー100%

すでに日本でも、100もの自治体が、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロをめざすことを宣言しています。自然エネルギーの出番です。

電力消費の多い都会でも、省エネと高効率化で使う電気を減らした上で、太陽光、風力、地熱、海の波、川の流れなどの自然エネルギーの設備に投資し、市民が自然エネルギーの電気を安く買えるようにすることが可能です。電気以外にも、熱(料理やお風呂、暖房)や動力(自動車、バイク)も、太陽の熱や自然エネルギー由来の電気に置き換えていきます。

東京都足立区の「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ」は、会員の出資で建物の屋根などを使った太陽光発電所を作り、電気を売ったお金を会員に返却する仕組みで、市民立発電所を作っています。*10

9. 地域がつながるフリースペース

マルシェや、フリーマーケット、物々交換、リモートワーク、教室、スタートアップ事業のオフィスなどに誰にも開かれていて、自由に使えるコミュニティスペースが地域にあったら。そこに集まることで、夏にはクールシェア、冬はウォームシェアで省エネもにつながります。また、地域でお互いが知り合いになることで防犯の効果も期待できます。

こども、大人、外国籍の人、障がいや疾病を持った人、性的少数者の人など多様な人々が、そんなスペースで出会えたら、差別やいじめのない社会に近づくはずです。

例えば、東京都豊島区にあるRyozan Parkは、シェアハウス、シェアオフィス、5歳までの子どものためのプレスクール、イベントスペースを兼ねたコミュニティスペースです。地域がつながり合う、ハブになっています。*11

10. テクノロジーと自然の融合

最新のテクノロジーの導入によって、交通システムや電力システムもより安全な省エネにしていくことができます。コストの問題で省エネ技術や効率化されたモーターなどが導入できない企業があれば、税金を投入して導入を支援できます。

市民に対しても、例えば東京都は、省エネ型家電の買い替えに対して独自のポイントを付与する事業を行っています。そのような、最新のテクノロジーを市民が使いやすくする制度がもっと充実したらいいですね。

コロナ危機は、オンライン化・ペーパーレス化の可能性も見せてくれました。リモートでの診療や会議は、感染防止になるだけでなく、移動が困難な人や、子育て中の人の社会参画を手助けします。

11. 8時間働けば豊かに暮らせる仕組み

1日8時間働きさえすれば、安全でおいしいものが食べられて、ゆっくり体を休め、週末を家族と過ごしたり、ささやかでも趣味を楽しんだりことができる。安心して、気兼ねすることなく休暇が取れ、好きなことをする時間と心の余裕をとっておける働き方ができる。こうした働き方の実現のためにはワークシェアリングを取り入れたり、それを支えるルールが必要です。

フランスでは、勤務時間外に仕事関連のメールを送ったり返信したりすることを法律で禁じています。*12ニュージーランドの首相が、コロナ危機のグリーンリカバリーの一環で、週休3日を検討すると発言しました。*13 イギリスの労働党も、選挙公約として週休3日を掲げています。*14 

12. 考えて行動する力を育む教育

学校で守るべきルールは生徒たち自身が主体的に決められる。気候変動や、プラスチック汚染など、深刻さを増す地球環境問題について学び、考え、行動できる。そんな学校で学びたかったと思いませんか?

イタリアの公立学校では、2020年9月から、気候変動が必修科目になります。地理、公民、数学、物理学などの授業で、気候変動と私たちの社会の関連について、横断的に学ぶことになります。アメリカでも、70%の保護者が、学校で気候変動を学ぶことを支持しているというデータがあります。*15

どれを実現したい?

この12のアイデアのなかで、特にみなさんが実現したいと思うものに、投票してください!

6月18日から、東京都知事選挙が始まりました。コロナ後の、これからの東京を担う次のリーダー候補に、みなさんから集まった12のアイデアへの投票の結果をグリーンピースが伝えます。そして、候補者からコメントが返ってきたら、公開していきます。私たちが思い描くこれからの東京を、本気で実現してくれる方をリーダーに選べるように。

アイデアには3つまで投票できます。みなさんは、どんな社会なら暮らし続けたいと感じますか?そこには、なにがありますか?