千葉県で化学農薬や合成肥料を使わずに栽培される田んぼの稲刈り。農家の小川さんは、虫やカエルなどの生きものが暮らせる田んぼを、という想いで農薬を使わないお米作りを行っている。

新米がおいしい季節になりました。

ミツバチの大量死の原因と言われ、ヨーロッパでは原則使用禁止されている「ネオニコチノイド系農薬」という毒性の強い農薬が、水田でも使われています。いま、無駄な農薬をつかわず、米作りをより安全に、地球環境にも優しくする可能性のある、新たな道筋が提案されています。

そもそもネオニコチノイド系農薬と斑点米って?

カメムシが若い稲穂の糖分を吸うことによってできる黒い点のあるお米(斑点米)は、1000粒あたり2粒まざるだけで、収穫したお米の買取価格が落ちてしまうことから、そのカメムシを殺すために、ミツバチに有害なネオニコチノイド農薬が、空中散布や粒剤で水田に撒かれています。実は、日本で最も多くのネオニコ系農薬が使われているのも水田です。

ネオニコチノイド系農薬が空中散布される田んぼ。グリーンピース撮影

斑点米は、見た目以外には味にも匂いにも影響はありません。しかも、現在では、変色したお米などは精米時に除くことができます。そうした技術ができる前に決められた等級制度が時代遅れのまま現在も使われ続けているため、水田でのミツバチの大量死を引き起こし続けています。

真ん中あたりに黒く見えるのが斑点米。通常は、流通の過程で取り除かれる。

ムダにネオニコチノイド系農薬が使われてしまうのを止めるために、見た目でお米の等級を決める制度を見直すことを求めて、グリーンピースでも、消費者団体や農家、養蜂家のみなさんと一緒に昨年農林水産省に署名や消費者アンケートを提出し、それらは国会でも取り上げられてきました。*1

水田でのネオニコ系農薬を止める新たな道筋 

そもそもみなさんは、等級を意識してお米を買ったことはありますか?それよりも、例えば新潟産コシヒカリの新米!など「産地」や「銘柄」、「生産年」でお米を選んでいませんか?いま、内閣府の会議で、等級とは関係なく、米農家さんが「産地」や「銘柄」、「生産された年」など表示できるように基準を変えることが検討されています。*2

等級検査を受けないと、「産地」や「銘柄」を表示できない!

お米を検査して等級などを決める農産物検査を受けることは、そもそも農家にとって義務ではありません。それでも、斑点米の混入など見かけで等級を決めることに疑問を感じている農家でも毎年検査を受けてきた理由のひとつは、受けないと産地や品種や収穫した年を表示できないからでした。表示できなければ、つくったお米を銘柄や産地で選んでもらえないどころか、「どこでいつ穫れたかわからない品種不明のお米」になってしまうので、検査を受けざるをえない仕組みなのです。

水田からより早くネオニコ系農薬をなくすチャンス

いま、この基準を定める「食品表示基準」の改正が内閣府の消費者委員会から提案されています。

農産物検査を受けないとお米の産地、品種、生産年を表示できなかったのを改定して、農産物検査を受けなくてもお米の産地、品種、生産年を表示できる、という案が出ています。

そうするとなぜ水田からネオニコ系農薬をなくせるのかを整理すると…

農家にとっては、見かけで等級判定される農産物検査を受ける強い動機がなくなり、1等米の判定を得るために、斑点米の原因となるカメムシを殺す農薬を水田に散布する必要性も低くなることが期待されます。

農産物検査そのものの見直しは農林水産省で継続されますが、表示の変更は今年度中にも決まる見通しです。この案のようになれば、より早く、ネオニコ系農薬が水田で無駄に使われる現状を、変えることができるかもしれません。

千葉県で化学農薬や合成肥料を使わずに米を栽培する農家の小川さん。虫やカエルなどの生きものが暮らせる田んぼを、という想いで農薬を使わないお米作りを行っている。

具体的に表示はこう変わる

消費者庁では、現在この表示について私たち一般市民からの意見、パブリックコメントを募集しています。内閣府が検討している食品表示基準の改正は、以下の通りです。

  • 農産物検査による証明を受けていない場合であっても産地、品種及び生産年を表示できる
  • 産地、品種、産年の 根拠を示す資料の保管を義務付ける
  • 表示された事項の根拠の確認方法を表示できる
  • 生産者名など、消費者が食品を選択する上で適切な情報は、枠内への表示を可能とする
消費者庁食品表示企画課「食品表示制度の見直しについて」より。
下段の等級検査を受けていないお米では、これまで産地や品種、生産年が表示できなかったが、今回の改正案では右側のように可能にすることを提案。

この改正によって、斑点米の混入率など、見かけで決まる等級制度に疑問を持っている農家さんは、(等級を決める)農産物検査を受けなくても「産地」や「品種」「産年」が表示できるようになります。それは、斑点米の原因のカメムシを殺すネオニコ系農薬を水田で使わなくてすむことにつながります。

表示法の改正でデメリットは?

一方、規制を緩和することで、輸入したお米が流通しやすくなることなども考えられますが、農家や消費者に不利益はないのでしょうか。

農家や消費者とともにお米の等級制度などのもつ問題を調査し、改善をもとめる活動を行ってきた 「米の検査規格の見直しを求める会(以下「求める会」)」は、農産物検査を受けなくても、品種や産地や生産年を表示できることを評価しつつ、次のように分析しています。*3

  • 輸入米の場合は生産者の自主的な確認を適用せず、従来どおりの農産物検査か輸出国の公的機関の証明を必要とすべき。(理由:表示の根拠となる資料の確認に困難が予想されるため)
  • 「複数原料米(ブレンド米)」の場合は国産、輸入ともに産地と割合表示に加えて「産年」表示を義務付けるべき。(理由:改定案ではブレンド米の場合古米の産年を表示しないことも可能になってしまう。特に輸入古米にはカビ毒のリスクがあり輸入を含むの複数原料米に産年表示の義務付けは不可欠。)
  • くず米や砕けた米については「特定米穀」の定義を設け、表示を義務付けるべき。

グリーンピースも、農産物検査を受けなくても品種や産地や生産年を表示できることを支持しています。また、求める会の上記の指摘も重要と考えています。

パブリックコメントを送ろう!

“Together, We Can” 農家と消費者と養蜂家が協力すれば、オーガニックはもっと身近になる。
有機農家とのコラボレーションイベントにて。

農産物検査を受けなくても、品種や産地や生産年を表示できるとする改定について、あなたの意見を送ってみませんか?こちらにウェブから送ることができるフォームがあります。

詳しい改正案意見募集要領 意見記入様式 も掲載されています。

支持はするけど…消費者や農家、その他の立場から心配な点があればそれも合わせて書きましょう。

締め切りは11月15日の日曜日(郵送の場合必着)です。ウェブの提出フォームが手軽でおすすめです。(募集ページの一番下にフォームへのボタンがあります)が、特殊文字などを含むとなかなか受け付けられなかったりするので、余裕をもって送りましょう。

電子メール、FAX、郵便でも送れます。

例えば、上記の「求める会」の意見なども参考に、こんな感じで、あなたの疑問や意見を書いてみるのはいかがでしょう?

  • 斑点米など見かけでの検査をしないと産地や品種や産年の表示ができないために、ネオニコチノイド系農薬などの農薬が過剰に使われることは消費者として望みません。
  • 検査以外の表示の根拠の資料とはどのようなものを指しますか?また、輸入の場合には従来どおりの農産物検査か輸出国の公的機関の証明のほうが安心です。
  • 産年、品種、産地が表示されることはお米を選ぶときに大事な情報なので、見かけの検査を受けていてもいなくても、表示できるようにしてほしいです(特に産地や生産年は、必ず表示)。でも表示の根拠はしっかり確認できるようにしてください。

また、おいしさ(食味値)や、有機栽培、ネオニコフリー、その他、あなたがお米を選ぶために表示が必要だと思うことを書くのも良いと思います。もちろん根拠がしっかり確認できることが必要だという点も忘れずに。

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注釈

*1: 第200回国会 農林水産委員会 第7号(令和元年11月13日(水曜日))

*2:7月にまとめられた内閣府の規制改革推進会議のなかでは、お米については次のように指摘されています。–規制改革推進会議の答申(2020年7月)より:

斑点米の混入率などで等級を決めてきた「農産物検査」について

  • 「等級は、消費者や外食・中食事業者の食味や食感などのニーズを踏まえたものではないため、それらの品質要求に応じたものでなく、コメの付加価値向上にはつながっていない。」
  • 「検査」という名称が原因となって、(中略)等級が、あたかも食味などに関する格付けであるかのような誤解が存在するという意見がある。
  • 食品表示基準上、公的検査によらなければ、食品表示すら許されないのは、全ての食品のなかでもコメのみである

河野太郎行政改革担当大臣も

「米だけこのような検査をやる必要があるのか」

「消費者で1等2等で買っている人はいなないのではないか」等と発言しています

こうした流れをうけ、答申に続く規制改革実施計画に沿って、農産物の「”表示」”にの改定が提案されています。

*3:ここでは部分的な要約を紹介しています。意見書が提出されたら米の検査規格の見直しを求める会のホームページに掲載される予定。

Yearly Harvest at Ecological Rice Farm in Japan. © Viktor Cibulka / Greenpeace
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