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地球規模で広がるプラスチック汚染。新型コロナウイルス対策で使い捨て容器の使用が増え、気になっている方も多いのではないでしょうか?近年の研究により、マイクロプラスチックが汚染物質の運び屋になっていることや、プラスチックに含まれる化学物質の人体への影響などが明らかになってきました。マイクロプラスチック汚染の研究者である東京農工大の高田秀重教授に、詳しくお話を伺いました*。

*以下は、市民環境フォーラム第10回「マイクロプラスチック汚染研究の最前線」(2020年12月14日開催)での、東京農工大・高田秀重教授のお話をまとめたものです。

おさらい:マイクロプラスチックとは?

プラスチックが粉砕され、5ミリメートル以下の微細になったものがマイクロプラスチックです。海や河川を汚染し、生きものや人体への影響も研究で明らかになってきています。最近わかってきたことですが、プラスチックは陸上でマイクロ化し、廃棄物処理から漏れてしまった分が雨で洗い流され、道路の排水口や河川を通じて海に流れ出ています。

全てのプラスチックは、遅かれ早かれマイクロプラスチックになってしまいます。これは、プラスチックの素材としての本質的な問題が原因です。金属やガラスに比べ、炭素の結合が緩いため加工しやすく便利な素材ですが、これが欠点にもなります。紫外線によって結合が切れて劣化していき、マイクロ化します。この数十年間で多くの製品がプラスチックに代替されましたが、ようやく最近になってマイクロプラスチックが発生することがわかってきました。

提供:高田秀重教授

マイクロプラスチック汚染はどれだけ広がっているのですか?

世界の海では、50兆個以上のプラスチックが世界の海を漂っています。食物連鎖を通して汚染は生態系全体に広がり、大きなプラスチックから小さいものまで隅々に行き渡っているんです。ただし、海を浮遊しているマイクロプラスチックはごく一部で、その多くが海底に溜まっています。

東京湾で行われた調査でわかったことですが、とりわけ1970年以降、海底の泥の中に多くのマイクロプラが入っています。河川などから東京湾に流入したマイクロプラの約95%が海底に堆積しているとみられます。

提供:高田秀重教授

マイクロプラスチックの生きものたちへの影響は?

800種以上の海洋生物(海鳥、魚、貝、ウミガメ、クジラ)などがプラスチックを摂食していて、物理的なダメージが報告されています。マイクロプラスチックは生物にとって異物なので、毒性があり、生物組織に炎症が起こります。

多摩川河口で生物調査を行ったところ、ハゼ、貝類、蟹など全ての生物からマイクロプラスチックが検出され、汚染の広がりが示されました。

提供:高田秀重教授

マイクロプラスチックが汚染物質を運んでいるって本当ですか?

マイクロプラスチックが、海中の汚染物質の運び屋になることも問題です。1ミリから5ミリの比較的大きめのサイズのプラスチック片は、海流によって運ばれやすく長距離移動します。プラスチックが大きいと、汚染物質が染み込み外に出されるまでに1年以上かかると考えられます。そのため、汚染物質が染み出す前にどこかに漂着してして、汚染物質を移動させてしまうのです。

例として西表島での調査があげられます。プラスチックの漂着が多い浜と少ない浜で、オオナキヤドカリ内に含まれる化学物質のPCBs(ポリ塩化ビフェニル)濃度を測ったところ、漂着が多い浜のヤドカリの方が濃度が高く出ました。離島の浜という一般的な汚染源から遠い場所でも、プラスチックが吸着性の汚染物質の運び屋となっていることを示しています。

提供:高田秀重教授

プラスチックの添加剤が抱える問題とは?

また、これまでの研究では、プラスチックが海中から汚染物質を吸着することが注目されていますが、実は離れた地域の汚染でプラスチックの添加剤による影響が顕著です。

プラスチック年間生産量4億トンのうち、添加剤が重量にして7%を占め、2800万トンが生産されています。添加剤にはいろいろな種類があり、紫外線で壊れないようにする吸収剤、加工しやすくする可塑剤、燃えにくくする難燃剤などが使われています。その中には、環境ホルモンと呼ばれる多くの種類の化学物質が含まれるのですが、これまで影響調査が追いついていなかったので、いまだに多くが使われています。人体への影響として、最近の調査で免疫力の低下、アレルギー、肥満とのつながりがあることもわかってきました。

例えば、長く使われてきた紫外線吸収剤の一つ(UV-P)が環境ホルモンであることがごく最近わかったのですが、身近な商品にも高濃度で含まれています。調査によると、お〜いお茶、アクエリアス、三ツ矢サイダーなどの市販ペットボトルのキャップから検出されました。その他にも、何種類もペットボトルのふたから添加剤が検出されます。添加剤の多くは、油に溶け出しやすく水に溶け出しにくい性質を持ちますが、水に溶け出しにくいのでプラスチック中に残留しているのです。

葛西臨海公園で採取したプラスチック片には、免疫力の低下につながる物質が検出されました。別の研究では、アホウドリが吐き戻したプラスチック片から紫外線吸収剤が見つかっています。

提供:高田秀重教授

添加剤の野生生物や人への健康影響はありますか?

プラスチックから添加剤が溶け出すには何万年もかかるという研究もあり、溶け出しにくいならプラスチックを食べても大丈夫なのでは?と思われるかもしれません。しかし、最新の研究では海水には溶け出しにくくても、生物の消化液に含まれる油分に反応して添加剤の溶かし出しを進めてしまい、化学物質が生物の体内に溜まってくることがわかってきました。人間でも同じことが起こるのではないかと想像できます。

沖縄の調査でも、プラごみの多い浜のヤドカリに添加剤が吸収・体内に蓄積していることが確認されました。プラスチック片が細かくなるほど添加剤が染み出しやすくなります。さらに、私たちにとってより身近な生物である魚の身からも添加剤が検出されました。まず動物プランクトンがマイクロプラスチックを食べ、魚がその動物プランクトンを食べることによって魚の身に添加剤が吸収されていきます。このように、マイクロプラスチックは食物連鎖を通した添加剤の運び屋になっていることが示されています。

どのような健康影響が考えられますか?

まず、野生生物への影響が出始めています。プラスチックを多く取り込んでいる鳥は、血液検査で中性脂肪が高かったり、カルシウム不足になったりしています。すると、卵の殻が薄くなり、孵化する前に敵に襲われやすくなり、出生率が低下、個体数が減少し、ひいては種の絶滅につながっていきます。

これは鳥の問題だけでなく、人への問題とも考えられます。ヨーロッパでは、成人男子の精子数が過去40年で半減したという報告があります。ストレスの増加、ライフスタイルの変化などいろいろな要因が考えられプラスチックに直接結びつけることはできませんが、プラスチックには生殖系に影響を与える環境ホルモンが含まれるということは事実です。

さらに、プラスチックの添加剤が生殖系だけでなく、免疫系にも影響を与えることがわかってきました。生物の体にとって必須な成分、ビタミンや代謝に必要な成分が攻撃されてしまうことで、免疫力が下がります。

いろいろな添加剤がプラスチックに使われていますが、内分泌撹乱作用を網羅的に調べるべきだと私は考えています。プラスチックが化学物質の運び屋になる以上に、添加剤がプラスチックに含有されていれば、海に流れ出たマイクロプラスチックが魚に取り込まれ、その魚を人が食べることによって人間の体にも添加剤が取り込まれてしまいます。

新型コロナウイルス対策のプラスチック利用をどう考えたらいいでしょうか?

コロナ対策だからといってプラスチックを大量消費することは、対症療法的で短期的には良いかもしれませんが、長期的には影響があります。

第一に、プラスチックの添加剤には、免疫系に影響を与える可能性があります(例えば、紫外線吸収剤UV-326)。アメリカのミズーリ大学で長年にわたって環境ホルモンを研究している教授は、新型コロナウイルスの重症化と化学物質が関係していると主張しています。リスク要因になる慢性疾患は、免疫系機能がバランスを崩して炎症を起こす病気です。新型コロナウイルスによる死亡者数が多い北米や西ヨーロッパでは、プラスチックに含まれる化学物質の濃度が高いことを示しています。

第二に、石油ベースのプラスチックの利用は、気候変動を加速させます。パリ協定に基づき、2050年以降は石油を燃やせない時代に入り、日本政府も2050年までにカーボンニュートラルにすると宣言しています。これまでのように石油ベースのプラスチック製品を使い、焼却処理することはできなくなります。

そのため、緊急避難的対策を恒久化してプラスチックを多用することは悪循環です。なるべく使わなくて済む方法を考えていく必要があります。

プラスチックに依存しない、目指すべき社会とは?

まずは、プラスチックの使用量を減らしていくことです。そのためには、物流や商品の提供方法を変えないといけません。これまで食料品はグローバルに輸出入してきていますが、新型コロナウイルスの影響で物流が滞ったことも考慮して、今後は自給自足や地産地消によって流域単位で物を回せば、結果的にプラスチックの包装を減らすことにもつながるでしょう。グリーンリカバリーの中にプラスチック削減を位置付けると良いと思います。

写真:野菜やくだものもばら売りにすれば、無駄なプラスチックを減らせて、必要な分だけ帰るから食品ロスも減らせる

その上で、どうしても必要なプラスチックは、石油ベースからバイオマスベースの素材に転換し、安全な添加剤を使い、最終的にはリサイクルしていくことになります。添加剤の安全性は、現在使われている物でもきちんと調べられておらず、新たに試験をしていく必要があります。また、プラスチックの焼却は事故が起こったときに対処が大変ですし、焼却炉に依存しない社会づくりが必要です。再生可能な小規模分散型のエネルギー使用を増やしていく中で、プラスチックの削減も考えなければならないでしょう。

(以上、東京農工大・高田秀重教授によるお話です。)

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