地球上では今まさに、環境危機の連鎖反応がドミノ倒しのように起きています。地球温暖化、気候変動はなぜ起こるのでしょう?脱炭素化の意味とは?自然エネルギーへの移行は、気候変動という大きな地球環境問題の解決の鍵となるのでしょうか?

気候変動はなぜ起こる?

地球は太陽からの熱(エネルギー)で暖められ、暖められた地面が放出する熱を温室効果ガスが吸収することで、大気が暖かさを保ちます。このように温室効果ガスが大気中にバランス良く存在することにより、様々な生物が住みやすい地球の温度を保ってきました。

しかし、産業が発達し、電気やガス、ガソリンなどのエネルギーを大量に消費し、二酸化炭素などの温室効果ガスを過度に放出してきたことで、地球の大気中には温室効果ガスが蓄積し続け、その濃度の増加により大気中に吸収される熱が増加し、地球規模での気温上昇(温暖化)を急激に進めてしまっています。


そして、気候変動は、温暖化の影響で地球の気象や気候システムに起きている変化を説明するときに使われます。

地球温暖化は、気温を上昇させるだけでなく、異常気象の深刻化、海氷の融解による海面上昇、感染症媒介生物の生息域の変化や感染拡大、野生生物の住みかや生態系の破壊などの様々な影響、つまり「気候変動」を引き起こします。

インド西部グジャラート州で「気候変動は洪水がより頻繁に起こることだ」とバナーを掲げるグリーンピース(2007年7月)

気候変動の最大の原因は、二酸化炭素

ここまで説明したように、地球温暖化を引き起こしている人為的な要因は温室効果ガス、その中でも二酸化炭素の増加が大きな要因となっています。

そして、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書などでは、石油や石炭など化石燃料の燃焼などによって排出される二酸化炭素が地球温暖化の最大の原因であることを報告しています*1

日本でも2020年に菅首相が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにする(すなわち2050年脱炭素社会の実現を目指す)」ことを宣言しました。つまり、これは化石燃料からの脱却を意味します。

いま地球で何が起こっているのか? 日本、そして世界各地で起きている干ばつ、森林災害、異常気象。今まさに私たちの生活に忍び寄っている気候変動について、以下のページで詳しく解説しています。

温室効果ガスの「実質ゼロ」とは?

多くの分野では、すでに二酸化炭素排出量をゼロにする技術が存在します。

例えば電気は、太陽光や風力などの自然由来の発電、つまり自然エネルギーから得ることができます。電気や水素で走る交通システム、断熱性の高い住宅、ガスではなく電気をベースにした産業プロセスなど、自然エネルギーによってほぼすべての分野で排出量をゼロにすることは可能です。

しかし、航空産業や農業などいくつかの分野では、技術的な選択肢は現段階ではまだ限られていて、排出量がゼロになることは困難です。

そのため、全体で排出量を限りなく減らし、それでも排出される二酸化炭素を相殺するために、森林、植物、海洋など地球上の二酸化炭素を吸収する働きを利用し、排出した分の二酸化炭素を大気中から除去して、排出量を事実上ゼロにするのが「実質ゼロ」ということです。このようにして、大気中の温室効果ガスの濃度をこれ以上増やさず、安定化させ、気温上昇の程度をより小さく抑えようとしているのです。

なぜ自然エネルギー100%?

この表のように、現在日本では、発電を石油や石炭などの化石燃料に大きく依存しています。自然エネルギーは、化石燃料と違い、発電時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないので、自然エネルギーへの移行は地球温暖化対策としてとても有効です。

※日本の一次エネルギー供給構成
(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より)

IRENA(国際再生可能エネルギー機関)の分析でも、自然エネルギーへの移行は、地球温暖化を加速させるエネルギー起源二酸化炭素*のパリ協定の目標を達成するために必要な排出削減量の90%以上を達成することができる、安全で信頼性が高く、最も費用対効果の高い方法です*2

*燃料の燃焼で発生・排出される二酸化炭素

下の円グラフからも2018年度の日本の温室効果ガス排出量は、約12.4億万トン(CO2換算)で、そのうち約92%が二酸化炭素、そして温室効果ガス排出量全体の85%がエネルギー起源の二酸化炭素であることがわかります。

※国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ」より経済産業省作成

自然エネルギーはエネルギー自給にも役立つ

また、有限な資源である化石燃料とは違い、自然エネルギーは太陽光、風力、水力、地熱といった地球資源の一部であることから自然界に常に存在し、繰り返し生起するエネルギーであることから、「枯渇しない」資源でもあります。

日本は世界でもトップ5のエネルギー大消費国ですが、その自給率はわずか11.8%(2018年)*3でOECD35カ国中34位ととても低い国です。このように海外にエネルギー源を依存していることから、国際情勢などに影響されて安定的にエネルギー源を確保できないことが実際起きています。

※日本の化石燃料輸入先(2019年)(財務省「日本貿易統計」、海外依存度は総合エネルギー統計より)

記憶に新しいものでは、2020年12月末から新年にかけて起きた電力価格高騰*4です。これは寒波による電力需要増加による電力不足だけでなく、パナマ運河の通関手続き遅延や産ガス国での生産トラブルなどの問題が絡み合って、天然ガスが不足したことで起きました。純国産である自然エネルギーは、海外からの輸入化石燃料への依存から脱却することを意味し、日本のエネルギー自給率を高めるためにも重要なのです。

また、自然エネルギーは地域に密着した分散型エネルギー源であることから、電気の地産地消を実現し、災害緊急時などにも柔軟に対応でき、エネルギー供給リスクの分散化が可能になります。つまり、自然エネルギーの主力化によって、地域のレジリエンス強化をもたらすことが可能なのです。

島根県の沿岸に立つ11基の風力発電タービン(2013年撮影)

そして、地域との共生に配慮した地域貢献型自然エネルギー導入事業は、地域資源の有効活用となり、地域のエネルギー関連産業などによる利益創出や地域経済の活性化に貢献することができます。もちろん自然エネルギー導入が加速する前に、特に自然エネルギーの導入ポテンシャルが大きい地域では、法制度を十分に整え、環境アセスメント(環境影響評価)の見直しやゾーニングなど、国と自治体レベルの規制や条例の制定していくことが急務です。

東京・四ツ谷駅に設置された太陽光パネル(照明や空調の電力に使用されている)shutterstock.com

世界で進む自然エネルギー100%

自然エネルギーは、多くの国ですでに主要なエネルギーになりつつあります。REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)の調査では、世界的には、大都市を含む617の都市が電力を100%自然エネルギーでまかなう目標を掲げ、少なくとも125の都市(そのうち47はアメリカ)は、2020年末までに自然エネ100%電力の目標をすでに達成しています*5

国レベルでも欧州を中心に2030年、2050年までに自然エネルギー100%を掲げ、すでに100%もしくはほとんど100%に達している国も増えています。このように私たちにはすでに学ぶことができる各国の具体的事例があります。

また、自然エネルギー100%戦略グループは2021年2月、電力を100%自然エネルギーでまかなうことは技術的にも経済的にも可能であり、専門家による研究を根拠にした適切な政策があれば2030年までに実現可能であるという「10ポイント宣言」を発表しました*6

そして、ドイツのポツダム気候影響研究所の創立者・名誉所長ハンス・J・シェルンフーバー博士、ペンシルベニア州立大学のマイケル・マン博士、自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長などの数多くの著名な気候科学者たちがこの宣言に共同署名しています。

南オーストラリア州に建設された世界最大のリチウムイオンバッテリー蓄電システム「Megapack」*7
壁面太陽光発電システム(BIPV) – パリのシテ・ドゥ・ラ・ミュージック (La Cité de la Musicale, Paris) shutterstock.com

国内の状況に目を向けると、日本政府の掲げる発電電力量に占める自然エネルギーの割合は、2050年目標でも50-60%*8と、自然エネルギー100%とは程遠いものです。

とはいえ、希望もあります。2011年の東日本大震災により生じた原発事故以降、日本の自然エネルギーはほぼ2倍のペースで増え、2020年上半期(1-6月)に23%を超えた*9ことがIEA(国際エネルギー機関)の調査でわかっています。これは政府の従来の自然エネルギー比率の2030年目標(22-24%)を10年も早く達成したことを意味し、2030年には日本政府の現目標を上回ることが容易に予測できます。

また、環境省による日本の自然エネルギーの導入ポテンシャル(発電設備容量)は、単純計算では現在の消費電力量でも十分なことを示しています*10。もちろん制度改革などそのために解決すべき課題はありますが、自然エネルギー導入拡大を省エネ・蓄エネと同時に進めた、需要と供給両サイドに対応したエネルギーの効率的利用を促進するなど、今行動を起こせば、日本でも遅くとも2050年までに100%自然エネルギーへ移行することは十分可能なのです。

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