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2021年8月9日、世界の第一線で活躍する科学者で構成される、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が最新の報告書を発表しました。この第6次評価報告書では、人間の活動が地球を温暖化させていることは「疑いの余地がない」とはじめて断定され、国連のグテーレス事務総長は「人類に対する緊急警報 (Code Red for humanity)」だと訴えています。

しかし、私たち人間は確かに危機的な状況にあるけれど、決して絶望的ではない。IPCCの報告書は、私たちにそうメッセージを送っています。世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えることはまだ物理的には可能で、原理上は実現可能だということです。絶望して歩みを止めるのではなく、今日から学び、行動を始めましょう。

世界はすでに1.1℃温暖化している

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年8月9日、気候変動の自然科学に基づいた最新の知見がまとめられた第6次評価報告書の第1作業部会報告書を発表し、温暖化に伴う地球の状態、過去と現在の比較、その理由、将来的なリスク評価などを明らかにしました。 

気候変動の影響がますます深刻化している現在、世界各国の政府が炭素排出量の削減に向けた取り組みを見直すための重要な報告となります。

IPCCとは?

IPCCとは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画 (UNEP)により設立された国連の「気候変動に関する政府間パネル」のことで、国連が招集した195の加盟国政府と数千人の第一線の科学者・専門家からなるパネルです。 IPCCは、人為的な気候変動のリスク、その潜在的な影響、及び適応と緩和方策について、科学的、技術的、社会経済的な側面から、各国政府に提供する研究報告書の発行を行っています*

IPCCは客観性・中立性を保ち、各国の政策決定に干渉することなく、専門的な立場から、報告を行っています。 グリーンピースはIPCCの公式オブザーバーであり、レビューに参加する権利を有しています。

今回発表された報告書は、IPCCの第6次評価報告書の第1作業部会報告書(自然科学的根拠)で、残りの第2、第3作業部会報告書(『気候変動の緩和』及び『気候変動の影響・適応・脆弱性』)は2022年に発表される予定です。第5次評価報告書が発表されたのは8年前で、2018年には『1.5 °C特別報告書』が発表されました。

大気中の二酸化炭素濃度は410ppm(パーツ・パー・ミリオン/百万分率)に達し、少なくとも200万年ぶりの高水準となりました。 大気中に蓄積された大量の二酸化炭素が熱を吸収し、地表の温度を著しく上昇させています。

報告書では、このようなデータがまとめられています。

  • 2011年から2020年の間、世界の平均気温は、産業革命前のレベルと比較して約1.1℃上昇。2015年にパリ協定で定められた気温上昇を1.5℃以内に抑える目標に対して、あと0.4℃しか残っていない
  • 過去5年間(2016年〜2020年)の平均気温は、1850年の記録開始以来、最も暖かくなった
  • 2010年から2019年にかけて、グリーンランドの氷床は1992年から1999年に比べて6倍の速さで失われ、南極の氷床は3倍の速さで失われた
  • 氷冠や氷床の融解に伴い、海面上昇率も上がり、近年では、1901年から1971年の間に比べて約3倍のスピードで上昇。 気候変動が不可逆的な氷床の消失を引き起こしているため、最良のシナリオでも2100年には海面が0.28〜0.55m上昇する可能性が高く、排出が多いシナリオでは、海面水位が2100年までに2m、2150年までに5m上昇する可能性も排除できない

温暖化ってそんなに悪いことなの?

IPCCによると、世界の平均気温の上昇がが1.5℃でも異常気象の発生頻度は高くなるものの、2℃上昇すると少なくとも2倍、3℃上昇すると4倍になるとしています。

2021年7月には、北米西海岸域で熱波による高温が49.5℃に達し、数百人の死者や山火事、送電網の障害が発生したほか、ギリシャ、トルコ、フィンランド、ロシアなど世界各地で火災が発生したのと同じように、乾燥した高温が続いています。 この火災により、森林が燃え、蓄えられれていた炭素が燃焼し、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが大量に大気中に放出され、気候変動を悪化させています。

極度の高温と乾燥が原因で、アメリカ・カリフォルニア州で発生・拡大した山火事は、自然だけでなく民家や施設にも被害をもたらした(2020年8月)

クライメート・アクション・トラッカー(CAT)は、現行の政策では、各国政府が掲げる二酸化炭素削減目標が実行されたと仮定しても、今世紀末までに世界の平均気温上昇は3℃に達すると予測しています。

80年後というと遠く感じるかもしれませんが、例えば今年生まれた赤ちゃんは、生涯にわたって、熱波や豪雨などの異常気象に高頻度で見舞われ、気候危機に直面し続ける可能性が高いということです。

インドネシア南カリマンタンは、豪雨と、パーム油プランテーションと石炭採掘のための開墾によって、最大2メートルの洪水に襲われた。ボランティアに救助される子どもたち。(2021年1月)

いまの二酸化炭素削減目標では間に合わない

第5次評価報告書が発表されたのは8年前ですが、その報告書ですでに、人為的な温室効果ガスの排出量と、豪雨、干ばつ、台風、そして山火事につながる極端な高温などの異常気象との間には、すでに相関関係が認められていました。 

しかし、なぜこれほどまでに、二酸化炭素排出削減の量やペースが目標ラインに追いつかないのでしょうか?

2015年、各国は2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に署名し、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に抑えること、そして1.5℃に抑える努力を追求する」という共通目標に基づいて、温室効果ガスの削減目標を設定することに合意しました。

その後、2018年にIPCCが発表した『1.5 °C特別報告書』では、温暖化を1.5℃に抑えるには、世界の温室効果ガス排出量を2030年までに半減させ、遅くとも2050年までに実質ゼロにする必要があるという行動の指標が示されました。

しかし、2018年の報告書以降、世界各国の二酸化炭素の排出削減が、IPCCの提言に沿ったものになったとは言えません。

今回発表されたIPCCの報告書によると、世界の排出量を現在のレベルから削減できなければ、2030年までに1.5℃目標に対する残余カーボンバジェット(ここまでなら排出してもよいと許容される炭素予算)を使い果たしてしまう可能性があります。

現在、人類の活動によって大気中に排出されている二酸化炭素の量は年間約400億トン。 2分の1(50%)または3分の2(67%)の確率で地球温暖化を産業革命以前の水準から1.5℃に抑えるためには、2020年初頭からの残余カーボンバジェットはそれぞれ5000億トンまたは4000億トン(CO2換算)となります。

つまり、脱炭素化政策を積極的に進めなければ、世界の炭素排出量は残る炭素予算を超過し、2018年時点の想定より10年も早く気温上昇は1.5℃に達してしまう可能性があり、さらに上昇し続けることになります。

ドイツの石炭火力発電所前で、グレタ・トゥーンベリさんのスピーチから引用した「How Dare you? (どうしてそんなことができるのか?)」とメッセージを掲げるグリーンピース。(2020年5月)

「まだ止められる」グリーンピースの世界各国政府への提言

私たちは、気候危機が恒常化する未来に、絶望するしかないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。まだ最悪の状況を避けることができます。IPCCの報告書でも、1.5℃に抑える目標は物理的に達成できるとしています。

しかしそれは、各国政府が二酸化炭素の排出量を速やかに実質ゼロ、またはそれ以下に削減した場合に限られます。さらに、CO2の排出量を差し引きゼロにするだけでなく、他の温室効果ガスも大幅に削減する必要があります。 温室効果ガスの排出を効果的に削減すれば、大気中の温室効果ガス濃度増加傾向が抑えられ、温暖化の速度が減速し、大気の質も改善されます

グリーンピースは、IPCCの公式オブザーバーとして、気候危機を最小限に抑えるため、世界中の政府に温室効果ガス削減目標及び対策の実施を求めています。 グリーンピースは、各国のリーダーたちが、2021年10月31日から11月12日に開催されるCOP26 (国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)までに、気温上昇を1.5℃に抑える目標を達成できる削減目標と削減計画を設定するよう提言します。

日本では特に、現行の2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比46%減から60%以上の削減へ引き上げ、確実に政策を実行していくことが必要です。また、石炭火力でのアンモニア混焼といった温暖化のスピードに対応できないようなイノベーションや、バックアップ電源として火力発電に依存せざるをえない原子力発電に頼っているいまの政策を見直し、新築建築物の断熱性能基準の十分な強化・義務化や、自然エネルギーによる電力調達など、今ある確かな資源や技術でできることをすぐにやることで、脱炭素社会への移行へ早急かつ積極的に取り組むことが求められます。

島根県沿岸の風力発電所。燃焼時に二酸化炭素を大量に排出する化石燃料を自然エネルギーに置き換えることは、気候変動緩和の最大の目標。現在のペースで炭素削減しても、気候の急速な悪化に追いつくことは困難。 (2013年11月)

1.グリーン・リカバリーの機会を積極的に活用する

現在のゆっくりとした排出量削減ペースでは、世界は2.9℃の温暖化に向かっています。また、現行の公約を段階的に実施したとしても、2℃を超える確率は80%に近いと言われています。

しかし、新型コロナウイルスの影響を受けた経済の回復・社会の再生は、政策を再構築し、強力なグリーン・リカバリー(持続可能な環境重視の経済復興策)を実施する好機とも言えます。グリーン・リカバリーを成長戦略として位置づけ、実施されれば、新しい持続可能な社会を築く鍵となり、温暖化の速度を遅らせることができるでしょう。

2. 化石燃料への新たな投資はしない

地球温暖化の主な原因は、温室効果ガスが増え続けていることにあります。その大半を二酸化炭素が占め、二酸化炭素排出の主な原因は化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)の燃焼によるものです。また化石燃料は採掘しても燃焼しても大量の温室効果ガスを大気中に放出します。 

したがって、気候変動を緩和するためには、新規の化石燃料プロジェクトへの投資を中止し、既存の化石燃料インフラを段階的に廃止する必要があります。 特に、太陽光エネルギーと風力エネルギーは、世界のほとんどの地域で、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料に代わる最も安価な電力源となっています。

3.自然の生態系を守り、回復させて、レジリエンスを高める

避けられない気候危機に直面しても、健全な生態系があれば回復力を発揮することができます。 自然の力を借りるには、2030年までに世界の陸域と海域の少なくとも30%を開発などから守られる保護区に制定し、海洋生態系を圧迫する人間の侵入を減らす必要があります。

海洋は、大気から二酸化炭素をを吸収し、膨大な酸素を生成することで、気候変動の緩和に大きく貢献していますが、現在、汚染や資源の枯渇の危機に瀕しています。自然の生態系を取り戻すためには、2030年までに少なくとも世界の海の30%を保護する必要があります。

4.二酸化炭素除去技術は特効薬ではない

現在の大規模な炭素除去技術は理論的なものが多く、実現したとしても生物多様性や水資源、食糧生産などに影響を与える副作用が広範囲に及びます。私たちは、より多くのCO2の排出を止め、発生源での炭素の削減に議論とリソースを集中させるべきです。

5. 金融機関も二酸化炭素削減に責任を持つべき

銀行、資産運用会社、保険会社などの金融機関は、化石燃料事業への資金提供をやめ、自らの保有する投融資ポートフォリオ全体の見直し、パリ協定の目標にに整合する脱炭素化ポートフォリオへの転換を実施すべきです。

6. 包括的で公平な地域計画

政府は、将来の開発計画、水管理計画、インフラプロジェクト、食料安全保障計画のすべてにおいて、気候関連リスクの変化を考慮しなければなりません。そして気候変動への適応と補償の取り組みの中心には、「汚染者負担」の原則がなければなりません。

まだ間に合う。いま行動しよう。

2019年11月、東京で行われた気候変動への対策を求めたマーチに、何百人もの参加者が集まった。

日本でも、豪雨に端を発した静岡県熱海市の土石流災害や、オリンピック真っ只中に北海道札幌市で統計史上最も長い18日連続で30℃超える真夏日が観測されるなど、毎日のように、豪雨または熱波の注意報が全国各地で発令されています。

しかし、自分たちにできることから行動に移すことこそが、未来への希望になります。

  • 肉を食べる量を減らして、野菜中心の食生活を心がける
  • フードロスを減らす
  • 生態系への負担が低いオーガニックの食品を優先する
  • 自宅や職場の電気を自然エネルギーに変える
  • 資源とエネルギーを無駄使いするプラスチックや紙の使い捨てを減らす
  • ファストファッションより、長く大切にできる服を選ぶ
  • 選挙では気候変動対策を優先する議員に投票する
  • CO2削減など温暖化対策に積極的な企業の製品やサービス、地球環境や人、社会、地域に配慮した「エシカル」な商品を選ぶ
  • 移動手段として、CO2の排出量が少ない公共の交通機関を利用するようにする

など、今日から始めて、続けられるアクションの選択肢はたくさんあります。

そして、IPCCの世界の第一線の科学者がまだ間に合うと言っているということを、周りの方にも伝えてください。仲間の輪を広げ、誰もが安全に、健康に生きられる未来へ、今日行動を始めましょう。

資料:IPCC『自然科学的根拠』報告書(AR6 WG1)の主な論点(グリーンピース・ジャパン作成)