プラスチックは年々増加し、2020年の生産量は3億6700万トンに上りました。しかも、プラスチックの99%は化石燃料由来なので、製造から廃棄まで、すべての工程で温室効果ガスを排出しています。その排出量は、もしプラスチックが”国”だとすれば、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで世界第5位になるほど…。グリーンピースの調査では、世界中で使い捨てプラスチックの容器包装を流通させているコカ・コーラなどの大手メーカーが、化石燃料の企業と結託して、使い捨てプラの増産を推進している事実も明らかになりました。

大手メーカーと化石燃料業界の隠されたつながり

プラスチックの99%は化石燃料由来なので、「プラスチックが気候変動に影響を与えている」と言われれば、多くの人が同意するでしょう。

実際、グリーンピースが最近行った意識調査でも、プラスチックが化石燃料由来と認識している人がほとんどでした*

しかし、飲み物やお菓子などを作っている国際的な大手消費財メーカーが「化石燃料業界と一緒になってプラスチックの増産を促進し、気候変動に影響を与えている」という話になると、中々ピンとこない方が多いのではないでしょうか?

グリーンピースは、サプライチェーン調査などを通じて、コカ・コーラ、ネスレ、ペプシコなどの大手メーカーが、世界で販売しているプラスチック容器包装をエクソンモービル、シェブロン、シェルなどの化石燃料大手から調達しているという事実を明らかにし、報告書にまとめました*

そしてこれらの企業が、使い捨てプラスチックの生産自体を減らすという、一番必要とされている解決策から世間の目をそらさせるために、リサイクルなどを”目くらまし”として用いていることを指摘をしました。

アメリカ・テキサス州にある、化石燃料大手・イネオス社の石油化学製品工場。プラスチックの原料となる石油化学製品は、石油使用量の14%を占める。(2020年12月)

プラスチックが”国”なら、世界第5位のCO2排出国に

1950年代以降、プラスチックの生産は大幅に増えました。

2020年には3億6700万トンと言われており、2018年と比較しても800万トンも増加しています。そして、このままプラスチックの増産が続けば今後10年ちょっとでプラスチックの生産は今の倍になり、2050年までには3倍にまで増えるとも予測されているのです。

実際に、オーストラリアのミンダルー財団の報告では、世界の主要な使い捨てプラスチックポリマー原料の製造業者5社は、2020年〜2025年の間だけで、生産能力を30%も増強し、生産量では7,000万トンの追加となるとされています。

プラスチックは石油やガスの原料採掘、精製、生産、販売、廃棄など全ての過程(ライフサイクル)で温室効果ガスを排出しているので、もしこのままプラスチック生産の世界的な増加を許せば、同時に温室効果ガスの排出も増え、気候変動への影響もますます大きくなります。

原料の採掘から廃棄まで、プラスチックはすでに年間石炭火力発電所約200基分の温室効果ガスを排出しています。

もしプラスチックが”国”だとすれば、原料採掘から廃棄までの排出量は、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで世界第5位になるのです(5位の日本を抜いて)。

コカ・コーラなど3社が出す、プラスチックの量は?

プラスチックごみの約半分は、ペットボトルやお菓子の小包装などの容器・包装です。

世界最大手の消費材メーカーである、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレなどは、国際的な脱プラネットワーク「Break Free From Plastic」が実施する調査でも、「世界をプラスチック汚染している企業」ランキングで、毎年トップにランクインしています。

これらの企業が排出するプラスチック容器包装の量は莫大で、大幅削減とリユースの大規模導入をしなければ、プラスチック汚染も気候変動も、解決に向かいません。

毎年、この3社が排出しているプラスチック容器包装の総量はどのくらいでしょうか?

コカ・コーラ
年間プラスチック生産量:2,981,421トン
CO2換算:1,500万トン

ペプシコ
年間プラスチック生産量:2,300,000トン
CO2換算:1,150万トン

ネスレ
年間プラスチック生産量:1,524,000トン
CO2換算:760万トン

3社のプラスチック容器包装の量を合計すると約700万トンになり、これは日本のすべての(使い捨て容器包装以外も含めた)廃プラスチックの年間総量(850万トン)に匹敵します。

オーストリアにあるコカコーラのボトル詰め工場で、”プラスチックの洪水を止めて”とメッセージを掲げるグリーンピース。(2020年1月)

いっこうに減らないプラスチック容器包装

コカ・コーラなどの大手消費財メーカーは、国際的なプレッシャーの高まりもあり、プラスチック問題への取り組みを大々的にアピールするようになってきました。

例えばコカ・コーラは、1本販売するごとに1本の空きペットボトルを回収するといった約束も発表しています。こうしたPRの甲斐もあり、日本では一般的に、プラスチック問題にしっかり取り組んでいる企業としても認識されているようです。

実際のところは、どのような変化が見られるのでしょうか?

エレンマッカーサー財団が今年11月先日発表した報告*によると、同財団のグローバル・プラスチック・コミットメントに署名した企業の中では、バージン(新しい)プラスチックを使用した容器包装の消費量が数十年の増加を経てピークに達し、これから減少傾向となる見通しと言われています。

しかし同時に、バージン材の減少が起きているのは、主にリサイクル素材が増加してきているからであり、使い捨てプラスチック容器包装そのものが減少しているからではないことも指摘されています。

実際に、グローバル・プラスチック・コミットメントに署名した企業によるプラスチック容器包装の使用は、2019年には0.6%増えていたのです*

スーパーに並ぶコカ・コーラのペットボトル。(2019年6月)

そして、プラスチック容器包装を減らす取り組みについても、植物由来などの他のプラスチックや紙への代替に偏っており、使い捨て容器包装そのものを減らす取り組みが極端に少ないことが分かっています。

使い捨て容器包装のニーズを減らすために有効であると既に証明されている、繰り返し使えるリユースの容器包装は、なんと全体のうちわずか1.6%でした*

イギリスでは、ガラスのボトルが3回以上リユースされれば、使い捨てと比べて年間50,000トンのCO2を削減できるという調査結果もあり、気候変動対策としてもリユースは有効なのです。

こうした数字を見ていくと、よく報道されているような、使い捨てプラスチック問題に積極的に取り組んでいる印象とは真逆で、実際は、大手メーカーの取り組みは全く不十分であることが明らかになっています。

日本と世界のギャップ

グリーンピースは約5年に渡ってコカ・コーラなどの消費財企業に対してグローバルキャンペーンを展開してきました。

今年発表した報告書で明らかになった、コカ・コーラなどの大手消費材メーカーが化石燃料企業と一緒になって、使い捨てプラスチックの増産を促進しようとしていたという事実は、メーカー企業が、使い捨て容器包装を使い続けることで、気候変動へ加担しているということを決定づけました。

海外では、環境団体だけでなく、メディアなどの調査によっても、こうした視点の発信は増えてきています。しかし日本では、特定の業界や企業とプラスチック問題の繋がりを示した報道や調査などはほとんどありません。

そうしたギャップを埋めて、ガラパゴス化した一部地域だけを取り残すことなく全世界で脱使い捨てが加速するようにしていくことも、世界で活動する私たちグリーンピースの役割だと考えています。

アメリカの国会議事堂前で、”Break Free From Plastic – プラスチックを終わりにしよう”とライトアップするグリーンピース。(2021年5月)

コカコーラ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバに伝えよう

グリーンピースは、世界55の国と地域で活動するグローバルなネットワークを生かして、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバへ「プラスチック危機の原因ではなく、解決の立役者になって」と働きかけを続けています。

世界700万人がすでにこのキャンペーンに賛同して署名していますが、日本での働きかけは始まったばかりです。日本からも大手メーカーに期待の声を届けるため、ぜひ力を貸してください。

コカ・コーラのアイコニックな赤いキャップのボトルは世界中で見つかっています。海で見つかったボトルを手に、”御社のボトルでは?”とメッセージを送るグリーンピース。(2018年10月)
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