南極から、水深1万メートルのマリアナ海溝まで、私たちが暮らす日本の海や川から塩、空気、ミネラルウォーターまで、いまやそこら中に存在するマイクロプラスチック。 今回初めて、人間の血液からマイクロプラスチックが検出されたという研究結果が発表されました。 健康への影響はまだ証明されていませんが、科学界は、マイクロプラスチックが体中を移動し、臓器に残留することも懸念しています。

私たちの健康を守るためには、プラスチックごみを発生源から減らし、繰り返し使えるリユースの仕組みへのシフトを急がなければなりません。

臓器残留やヒト細胞へのダメージが懸念される

人の血液から、マイクロプラスチックが見つかったというこの衝撃的な研究結果は、学術誌『Environment International』に掲載されました。

イギリスのガーディアン紙の報道によれば、オランダのアムステルダム自由大学の研究チームは、0.0007mmという小さな粒子を検出・分析する技術を用いて、健康な成人22人の血液を調査したところ、約80%(17人)のサンプルに飲料ボトルでよく使われるポリエチレンテレフタレート(PET)や食品パッケージに使われるポリスチレンなどのマイクロプラスチックが検出されたとのことです*

研究者は、健康リスクはさらに評価される必要があると述べていますが、これまでの分析(ラボ内での実験)では、高レベルのマイクロプラスチック摂取が人間の細胞を損傷すること、乳幼児は特に化学物質や粒子に対して脆弱であることが示されています。

地球の隅々まで広がるマイクロプラスチック

マイクロプラスチックは、プラスチックごみが細かくなってできた5mm以下のプラスチック粒子で、取り除くことが困難です。 近年の調査では、塩、空気、ペットボトル入りのミネラルウォーターなどへの混入が確認され、マイクロプラスチックが世界の隅々まで広がっていることが明らかになりました。

2016年:東京農工大学の研究チームが東京湾で採取したカタクチイワシの8割からマイクロプラスチックを検出*

2017年:京都大学の研究チームが本州各地で採取した魚の4割からマイクロプラスチックを検出*

2018年:グリーンピースと韓国の仁川大学校の教授の共同企画による調査で世界の39の塩ブランドを分析した結果、サンプルの9割からマイクロプラスチックを検出*

インドネシア産の塩から検出されたマイクロプラスチック(2018年10月)

2018年:グリーンピースの南極遠征チームが水と雪のサンプルを採取から、マイクロプラスチックと有害化学物質の汚染を確認

2018年:ニューヨーク州立大学の研究チームがペットボトル入りミネラルウォーターの9割からマイクロプラスチックを検出*

2019年:福岡工業大学が、同大学の屋上で採取した空気や降水中の成分からマイクロプラスチック片を確認*

2020年:グリーンピースとエクセター大学の調査で、海洋食物連鎖の上位に位置するサメの3分の2がマイクロプラスチックとプラスチック繊維を含んでいることが明らかに

変化は起きつつある

プラスチック危機を解決するためには、一人ひとりの生活者が努力するだけでなく、そもそも作られるプラスチックを大幅に減らし、繰り返し使えるパッケージや包装のいらない販売・流通を確立することが必要です。

プラスチックごみを大量に製造・流通させている大企業が、使い捨てではなく代わりにリユース・リフィルシステムに切り替えることで、使い捨て社会からリユース社会へシフトしなければなりません。

プラスチック危機に関心を持ってこの記事を読んでいるみなさんや、世界中の数え切れないほどの専門家や市民が使い捨てプラスチックを発生源から減らすことが必要だと声を上げて、変化は起き始めています

今年3月には、国連でプラスチックの製造から廃棄までの規制も視野に入れた法的拘束力のある「プラスチック条約」の制定に向けた動きが決まり、今後政府間交渉が始まります。

また、オーストリアが、2025年までに飲料の25%を繰り返し使えるリユースパッケージで提供することをめざす法律を制定、ポルトガルは、2030年までに流通するすべてのパッケージの30%をリユース可能なものにしなければならないとするなど、国単位で、リユースを加速させるための法整備も始まっています

3月には、世界の海や川でごみが見つかるブランド4年連続No.1で、年間1,200億本のペットボトルを世界中に流通させている大企業、コカ・コーラが、グリーンピースと世界中の団体、賛同する市民の働きかけの結果、2030年までに25%の商品をリユース可能容器にすることを発表しました。グリーンピースは、さらに目標を50%まで引き上げることを求めています。

日本でも、レジ袋の有料化に続き、スプーンやフォーク、ホテルの歯ブラシなどが新たに規制の対象となる「プラスチック新法」が4月1日から施行されました。一人あたりのプラスチック使用量が世界2位である日本で、深刻なプラスチック危機を止めるには、まだ不十分な内容ですが、確かに変化は起き始めています。

使い捨て社会からリユース社会への変化を加速させるために

私たちにできるのは、そもそも作られるプラスチックを減らす動きを最大限加速させるために、企業や政府に働きかけることです。グリーンピースはこれからも、国際的なネットワークや、国内の環境団体とも協力して、プラスチック汚染の現状の調査や、政府や企業へリユースの仕組みを取り入れるよう働きかけるキャンペーンを続けていきます

グリーンピース・ジャパンでは現在、業界のリーダーでもある大企業に、リユースの取り組みを取り入れることを求める2つの重要なキャンペーンを行っています。ぜひあなたも、この署名に参加して、普通に暮らしていても無駄なごみが出ない社会を、一緒に実現しませんか?