2022年2月24日、ロシア軍はウクライナに侵攻したその日に、キーウ(キエフ)の北100キロのプリピャチ市にあるチョルノービリ(チェルノブイリ)原発を攻撃、掌握しました。
世界で初めての原発への軍事攻撃が、36年前に史上最悪の事故を起こした原発で起きたのです。
そこで科学的にどんなことが起きているか、グリーンピースが調査しました。

免責事項:グリーンピースは政治的に独立しており、領土問題のいずれの側に立つこともありません。地図上の境界線は、法的要件および/または出典元に従っています。

史上最悪の大事故を起こした原発

爆発事故後のチョルノービリ原発。

1986年4月26日、旧ソビエト連邦のチョルノービリ原子力発電所4号機で爆発事故が発生、7〜9トンの高放射能核燃料が破片や粒子となって大気中に拡散されました。ヨーロッパの実に40%にあたる広大な地域が、4,000Bq/㎡を超えるセシウム137で汚染されたのです。
およそ13万5,000人が避難を余儀なくされ、事故処理に従事した作業員を含む13万人以上が被ばくしたと記録にはあります。
原発の半径30キロ圏はいまも、高い放射能汚染のため立ち入り禁止となっています。

グリーンピースは1990年代から継続的に、チョルノービリ原発事故の影響を調査・分析・発表してきました(詳細はこちら)。

チョルノービリの事故処理にあたった「リクビダートル」と呼ばれる作業員たち (2006年4月) © Russian Look Ltd./ Alamy / mauritius images

ロシア軍の侵攻

検問所を通過してチョルノービリ原発に向かうロシア軍 Provided by the State Agency of Ukraine on Exclusion Zone Management (SAUEZM) to Greenpeace Germany. 22 Mar, 2022

2022年2月24日、ロシア軍はチョルノービリ原発を占拠・掌握しました。

ウクライナや近隣地域の人々は皆、36年前の事故を知っています。一方で、ロシア軍の中には事故を知らされていない、もしくは知っていてもその危険性を認識していない兵士がいたと思われます。占拠は3月30日まで続きました。
数百人の作業員が武装警備員の監視下に置かれ、原発の安全・保安機能維持に不可欠な電源の喪失、核研究施設などの建物への被害も報じられました。

原発は常にすべての設備を最上の状態に保っておく必要があります。廃炉作業中のチョルノービリ原発も、厳重な放射能遮断状態を維持管理しなくてはなりません。
戦時下では、それらのシステムが正常に機能しなくなり、深刻な事態を招く可能性があるのです。

原発への軍事攻撃のリスク

グリーンピースの委託を受けた専門家は数十年にわたり、原発や関連施設が軍事攻撃を受けた場合のリスクと影響についての分析をし、各国政府に示してきましたが、国際原子力機関(IAEA)や原子力産業界はこの警告を無視してきました。

今年2月のロシア軍の侵攻によってウクライナの15基の原発が危機にさらされ、ヨーロッパ大陸の広大な地域が何十年にもわたって居住不可能になるかもしれないという事態に陥っています。
グリーンピースは5月、ウクライナの原子力発電所とロシア軍との位置関係を一定時間間隔で見ることができるインタラクティブマップを公開しました。このマップで、どの原発にどのくらい軍事的な危機が迫っているかがわかります。

マップの閲覧はこちらから

グリーンピースの放射能調査

チョルノービリ立入禁止区域内の調査は、数カ月かけて綿密に計画され、地元当局の承認を得て実施されました。
メンバーはグリーンピース・ドイツを中心に、ウクライナをはじめ世界各地から国際的なチームを編成。ロジスティクス担当者、無人航空機パイロット、通訳、写真・映像のプロも参加しました。

出発前に、ウクライナで日常的に軍事攻撃を受け続けている東部や南部地域とは異なり、チョルノービリ周辺はすでにロシアの占拠下、攻撃下ではないことが確認されました。

チョルノービリ立入禁止区域で使用された機器類。 © Jeremy Sutton-Hibbert/ Greenpeace

主な調査結果

1. ロシアの軍事行動はチョルノービリの放射線モニタリングシステムに深刻な被害を及ぼした。

2. 人や環境への放射線の影響の研究に必要な実験装置が損壊した。

3. ロシア軍が立入禁止区域に多数埋設した地雷によって、科学者の命は危険にさらされ、消防士や一般市民、国際社会に重要な情報を提供する必要不可欠な活動が妨害されている。

4. ロシアが軍事行動を展開した地域の放射線量は、国際原子力機関(IAEA)の推定値の少なくとも3倍以上。

5. セシウム137の空間濃度は45000Bq/kgから500Bq/kg以下まで大きなばらつきがある。

6. ロシア軍の軍事行動によって立入禁止区域に蓄積された放射性物質が攪拌され、大気中の放射性核種の増加につながる可能性がある。

7. 専用の無人航空機(ドローン)を使って地上100メートルの高さで測定したところ、南側の広い範囲でより高い放射線量が観測された。

8. ロシア軍キャンプの上空では約200cps(毎秒カウント)が計測されたのに対し、南側600〜700メートル地点では約8000cpsと40倍も高い放射能が計測された。

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地雷が埋設されている可能性があるため、ロシア軍の塹壕や防衛施設跡地から長い棒に装着した計測器で放射線を測定するグリーンピース。(2022年7月17日) © Jeremy Sutton-Hibbert/ Greenpeace

無人航空機(ドローン)を使用した調査

グリーンピースが開発した超軽量小型放射線測定器をドローンに搭載した機器で、空間線量調査も実施しました。
この機器で、地上100メートルから10メートルまでの複数の高度でマッピングをしました。

南北方向のエリアを地上100メートルで測定したより広域の図(上図)では、比較的狭い範囲で放射線レベルのバラつきがあることがわかります。ロシア軍キャンプ跡の北側と中心部でのガンマ線の測定値は150〜500cpsでした。
キャンプ跡から500メートル以内の測定値は1250〜3900cpsに上昇します。キャンプ跡から500メートル〜1キロメートル南に離れた場所では、6600〜8197cpsとなっています。
この結果から、ロシア軍のキャンプ跡の放射線レベルの測定値だけでは、立入禁止区域全体の放射線レベルを正確に把握できないことがわかります。

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土壌調査

ロシア軍の塹壕跡から土壌サンプルを採取するグリーンピース。

ヤノフにあるロシア軍キャンプ跡では、16の土壌サンプルを採取しました。
CZT検出器を内蔵した小型測定器での現場分析では、最も放射線量が高いサンプルのうち3つが、低レベル放射性廃棄物の基準である1万Bq/kgを超えており、他のサンプルは500Bq/kg未満でした。ロシア軍が土壌を掻き回し、地表および地中に蓄積されていた放射性物質が攪拌され、大気中に拡散されている可能性があります。

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国際原子力機関(IAEA)の報告

チョルノービリ視察の報告をするIAEAのラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長。(2022年4月28日)

IAEAは2022年4月27日、ヤノフのロシア軍キャンプ跡で調査を実施しています。
その結果、放射線レベルは「立入禁止区域が設定されて以来測定されたものと同様に低く、運用可能な範囲内であり、したがって、公衆に危険を及ぼすことはないと考えられる」と結論づけました。

IAEAはロシアの国営原子力企業であるROSATOMとの結びつきが強く、グリーンピースは、世界の原子力の安全とセキュリティを守るというIAEAの役割が著しく阻害されている可能性を危惧しています。

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グリーンピースは行動しています

グリーンピースのチョルノービリ調査チーム。後ろに見えるのは2016年に完成した新シェルター。(2022年7月18日) © Jeremy Sutton-Hibbert/ Greenpeace

1日も早く原発をなくし、気候変動をくいとめ、より安全な再生可能エネルギーへの転換を実現するため、グリーンピースは実効的な対策を求めて世界中で活動しています。

2011年3月の事故発生直後から11年以上にわたり、福島をはじめとする日本全国で放射能調査を続け、その結果から導き出された科学的根拠をもとに原発の危険性を明らかにし、事故の影響を受けた方々の人権保護を国際社会・日本政府・電力会社に求めています。
参考:グリーンピース 放射能測定室 シルベク

温室効果ガスを最も多く排出する石炭火力発電の廃止のため、世界中の石炭火力発電に出資している日本の3大メガバンクと根気強く話しあい、新規の石炭火力事業への投融資を中止させることができました。

日本の基幹産業である大手自動車メーカーに対し、販売台数ではなく移動サービスの提供を主体とする持続可能な産業へのシフトを提案、丁寧な対話を続けています。

日本中の自治体に脱炭素政策を実行してもらうための草の根運動を立ち上げ、地元の人たちが自分の手で我が町のエネルギー政策を転換させるように後押ししています。

国際社会と世界中のあらゆる国と自治体と企業に対し、グリーンピースは原発なしで実現できる気候変動対策を提示し、行動を求めて交渉を続けています。
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