©︎ Planet, 2020

画像をクリックして爆発前の8月1日と爆発後の8月4日の写真を比較  ©️ Planet, 2020


8月4日にレバノンの首都・ベイルートの港湾地区で起きた大規模な爆発によって、これまでに130人以上が死亡するなど、大きな被害が出ています。今回の爆発は、肥料や爆発物の製造に使われる約2750トンもの硝酸アンモニウムを貯蔵している施設で起きたとみられます。

この事故では、爆発による直接的な被害も甚大ですが、大気汚染、そしてそれによる健康被害も懸念されます。ベイルートにあるグリーンピース事務所は、イギリス・エクセター大学内にあるグリーンピースのサイエンスユニットと協力し、状況を分析しました。


大気汚染の現状は?

今回のような爆発による火災は、大量の汚染ガス、特に窒素酸化物(NOx)を放出します。オレンジ色の煙は、二酸化窒素によるものです。吹き上がった煙が街や周辺地域に分散する際にも、オレンジ色の煙が目撃されました。火災や爆発は、他にもPAH(多環芳香族炭化水素)や粒子状のすすなどの燃焼生成物を発生させます。こうした化学物質や細かいすすも健康被害を引き起こす可能性があります。

NOxが大気中で反応することで、有害なオゾンガスが発生する可能性があるほか、大気中に放出された大量のNOxは、風下に酸性物質を沈着させる可能性もあります。また、今回の事故は、大量の一次粒子状物質、二次粒子状物質による汚染を発生させる可能性があります。正確な影響は、生成された有害物質の濃度と、浄化作業後に地表に堆積または大気中に戻る量次第です。


地元の人々が大気汚染から身を守るために

火災がおさまった現在、最も深刻な大気汚染は終わったと思われますが、それでも、一部の人々はかなりの大気汚染にさらされている可能性があります。

この時点で、短期的に生じる可能性の高い健康への影響としては、呼吸困難、目や皮膚の炎症が考えられます。子どもや高齢者、心臓や呼吸器に基礎疾患を持つ人は、特に大きな影響を受ける可能性があります。
グリーンピース中東・北アフリカとサイエンスユニットは、現地の人々に向けて、大気汚染から身を守るガイドラインを発表しました。


グリーンピースの科学調査

グリーンピースはこれまでも、こうした人命や地球環境に大きな影響を与える悲劇的な事故の影響について、迅速な対応ができる専門家チームを派遣し、中立的な立場から科学調査を実施。現地の人々や政府、メディアに対して情報を提供するとともに、現地で何が起こっているのか、事故の目撃者となってきました。


ロシア 30年で最大の石油流出事

今年5月と6月には、ロシアの北極圏で、この30年で最も重油な石油事故となった、ディーゼル流出事故が発生しました。ロシア政府は緊急事態宣言を発令しました。グリーンピースの専門チームは、汚染された地域と環境への影響を分析し、ロシア政府に、一刻も早く化石燃料から自然エネルギーへ移行することを求めました。こうした北極圏の悲劇的な事故や猛暑が、政府が自然エネルギーを元にした新しい経済モデルへより迅速に向かう、後押しになることを願います。


中国 危険化学物質の工場爆発事故


2015年には、中国の天津市で、何百トンものシアン化ナトリウムを含む危険な化学物質を貯蔵していた工場の爆発事故が起きました。死者・行方不明者は、173人に及びました。グリーンピースの北京事務所は、事故の2日後に調査チームを派遣しました。爆発の中心地点から9キロ以内に位置する、4つの地点で、水中にシアン化ナトリウムやシアン化物があるかどうかを調査しました。事故があった地区で働いていたグリーンピースのサポーターからも連絡を受け、状況を聞きながらの調査でした。(参考:グリーンピースブログ


日本 福島第一原発事故

©︎ Digital Globe

日本でも、2011年の東京電力福島第一原発事故の際、事故直後の3月26日に調査チームを派遣しました。

チェルノブイリ原発事故の経験から、団体内に蓄積されていた放射線防護に関する知識や、モニタリングの技術を活かした、調査チームでした。

調査によって、福島県浪江町や飯舘村など、当時避難指示が出されていなかった地域も広範囲に汚染されていることが明らかになりました。その後、政府は避難区域を拡大しています。事故からまもなく10年がたとうとしていますが、グリーンピースは地元の方々のご協力のもと、継続的に放射線調査を行っています。

写真は2011年撮影のもの ©︎ Christian Aslund / Greenpeace

真実を明らかにすることが、安全な未来をつくる

汚染や危険のない社会をつくるためには、起きてしまった悲劇に蓋をせず、真実を明らかにすることが欠かせません。

グリーンピースには、世界55以上の国と地域で活動する国際ネットワークと、団体内の科学チームの知見、様々な分野の専門家との協力体制があります。そしてこうした活動を支えてくれる皆さまの支援を活かして、環境破壊により助けを必要としている人たちをタイムリーに支援し、すべての人の生活がより良く、より緑豊かな世界を実現できるよう、引き続き努力を続けていきます。

グリーンピースは政府や企業から100%独立しています。今この記事をお読みになっているあなたのような、一人ひとりからのご寄付によってのみ成り立っています。