グリーン経済の行方

2006年のグリーンピースの活動より「国連持続可能な開発会議(地球サミット)」が本日からブラジルのリオデジャネイロで開催される。

この会議は、1992年に同地で開催された開発会議から20年目であることから、「リオ+20」とも呼ばれている。

しかし、20年前と比べて地球環境や貧困格差などの問題は改善されているだろうか。

この会議では、さまざまな「環境保護」や「発展途上国の発展」などの仕組みが議論される予定だ。

その中でも注目されているキーワードが「グリーンエコノミー」もしくは「グリーン経済」だ。より深刻になる環境問題に対して、その取組みを経済の中心に据えることで、経済発展と環境保護の両方の課題を同時に解決することを目指すというものだが、残念ながら、各国の本気度は伝わってこない。

本会議が始まる前の、会議成果文書をめぐる事前交渉において、「グリーン経済」については、参加各国に自主的な努力を促す内容にとどめることで大筋合意したという。各国が「グリーン経済」に移行するための共通のルールづくりは見送られてしまった。

地球の資源や汚染浄化機能の限界を考えずに、「右肩上がりの成長」を前提とする現在の経済システムから、「地球の限界内」という制限つきの経済システムへの転換は困難を伴う。その挑戦が自主努力に任せられてしまうというのでは心もとない。

グリーン経済は、企業がCSRの取り組みの一環として、慈善活動的に環境保護活動を行うだけでは実現できない。経営そのものの方針転換、ましてや経済全体のシステムを変えていくというような大掛かりなパラダイムシフト(劇的な変化)が必要となる。これを実現するためには国際的な強制力のある枠組みが必要だった。本会議での議論を期待したい。

 

グリーンウォッシュ+20

「グリーンウォッシュ」もしくは「グリーンウォッシング」という言葉をご存じだろうか?

主に企業が、環境に良くないことを、ある一面だけを取り上げて環境に良いと過剰に宣伝し、環境に良いことをしているように振る舞うことを言う。

グリーンピースは20年前のリオサミットの直前に、「GREENWASH」という本を出版し、「グリーンウォッシュ」という言葉を世界的に広めた。それから20年、このリオ+20にも多くのグローバル企業が参加するが、残念ながらグリーンウォッシュは現在でも続いている。

「グリーン経済」という新しい考えでさえ、この会議の現場で各国政府が美辞麗句を並べる強制力のない合意文書へと「グリーンウォッシュ」されてしまいそうだ。

 

原子力発電のグリーンウォッシュ

「グリーンウォッシュ」の典型例として挙げたいのが原子力発電所だ。

スリーマイルやチェルノブイリでの原発事故後、その危険性から多くの国々で原発の建設が見合されてきた。しかし、気候変動問題が議論されるようになると、原発そのものや使用済み核燃料などの危険性、ウランなどを採掘し輸送する際のCO2排出量を無視し、地球温暖化対策に寄与できると原発推進の過剰な広告が見られるようになった。

日本の各電力会社が多額のお金を費やしてきた「原発は安全です」、「原発は地球温暖化対策に役立ちます」の広告は、日本人であればだれでも見たことがあるだろう。これらが虚偽であったことは東電の福島第一原発事故で明らかになった。

リオ+20を前に、各電力会社に「グリーンウォッシュ大賞」を与えたいぐらいだ。

 

原発再稼働から考える経済の転換点

政府が福井県の関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の再稼働を決めたのも、電力不足が原因ではない。結局は、電力会社やその周辺の原子力ムラが既存の「右肩上がり経済システム」の基盤としてがっちり組み込まれてしまっており、それを改革する舵取りができないでいるからだ。

これは、「右肩上がり」という幻想を抱く暴走列車を止められず、原発の再稼働をなし崩しにしてしまった状態で、問題の先送りにすぎない。

原発再稼働は、私たちが築きあげてきた「右肩上がり経済システム」が、国民の意見を無視して暴走を始め、政治がそれを止められないという顕著な例となった。

 

経済は「右肩上がり」ではなく「最適化」

このリオ+20において、国際社会がどこまで現状の破壊的経済システムの方向性を変えることに同意できるかに注目したい。

リオ+20では、GDP(国内総生産)に代わって、幸福度をはかる指針が必要だと合意する予定だが、具体化するかどうかは疑問だ。

地球には限界がある。その限界の中でGDPを指針とする経済に象徴される「右肩上がりの成長」を唱え続けるのであれば、リオ+20でも議論されるような環境と経済の両立は成り立たない。限界の中でいかに経済を「最適化」するかが問われる社会になるべきだ。

 

節電の夏を「最適化」の事例に

今年の夏は、電力供給に制限がかかる。電力供給を無尽蔵に増やすのではなく、供給限界の中でどう社会を営むのか。これこそが経済の「最適化」の一例だ。節電アイデアや省エネ技術、自然エネルギーの推進を新しい「グリーン経済」の主役とする機会が日本にはある。

自然エネルギーを語ると「何を夢みたいな話をしているのだ」と言われる。私には、「右肩上がり」の成長を追い求め、次世代がさまざまな地球の限界への答えを用意してくれるという方が夢のような話だ。この問題の先送りは、むしろ悪夢という結果をもたらすだろうし、すでに原発事故という現実をもたらした。

リオ+30ではもう遅い。節電・省エネの夏から、経済を「最適化」することを具現化することで、日本の中小企業の技術力、創造力を活かしていけるのではないか。そしてその技術力こそ、先進国による資源の搾取を止め、世界の格差・貧困の是正と公平・公正な社会の発展に役立つだろう。

「リオ+20」が「グリーンウォッシュ+20」にならないことを願うとともに、節電の夏を好機とする機運を盛り上げたい。

 

<オンラインで参加を!>

現在グリーンピースでは、6月27日に行われる関西電力の株主総会で、脱原発提案支持の賢明な判断をしてくれるよう株主に訴える「なんでやねん?!再稼働」を行っています。ぜひご参加ください。

 

このブログは、事務局長の佐藤潤一が書いています。

Twitterでも発信しています⇒  @gpjsato