【佐藤潤一の事務局長ブログ】

グリーンピースは世界中に26の事務所を構え、55以上の国と地域で活動する国際環境NGO(非政府組織)だ。近年、地球規模の環境問題を解決するため、活動の中心を中国、インド、東南アジア、ロシア、南米、アフリカなど環境破壊が深刻化している地域に移行してきている。

その移行の中で、欧米などNGOの社会的地位が高い国々での活動とは異なる対応が迫られつつある。その典型例がインドで起きている。

 

銀行口座の凍結

インドはガンジーに代表される民主主義の国だ。しかし、インドの現政権は国策企業を優遇しナショナリズムを煽ることによって経済発展を遂げようという意向が非常に強い。どこかの政権とよく似ている。

そんな中、インド政府が4月に突如、グリーンピース・インドの銀行口座を凍結した。さらに報道では、アメリカのフォード財団やビル・ゲイツ氏のビル&メリンダ・ゲイツ財団にも調査の手をのばそうとしていると報じられた。

その理由はグリーンピースをはじめとする国際NGOが、インドの経済発展を妨げようとしているというものだ。

グリーンピース・インドは14年前に始まり、今では、340人のスタッフ、75000人以上の会員を抱える大きな組織となった。原発を止めるための活動や、石炭火力発電所建設を止める活動も行っているが、インドの市民とともに史上最悪と言われるボパール事件(化学工場爆発による汚染)の米国企業への責任を追及したり、森林保護や、電気の通じていない村への自然エネルギー設置に取り組むなど「非持続可能な経済」から「持続可能な経済」への移行を促す活動も行ってきた。今回の口座凍結には、グリーンピースが問題視している国策企業の意向もあると言われている。

 

組織存続の危機に、その時スタッフの反応は?

(「地球は私の給与よりも大事」と掲げるグリーンピース・インドのSeemaさん)

この状況で、グリーンピース・インドの事務局長は、スタッフに、口座凍結によって組織が運営できるのはあと1ヶ月だけだと告知。しかしスタッフの多くが、その後は無給で、政府の不合理な決定を覆すために働くと事務局長に伝えた。このストーリーが広く海外メディアに伝わった。

スタッフの強いサポートとともに、グリーンピース・インドは政府に対して口座凍結が不当であると裁判に打って出た。

そして昨日、デリー高等裁判所は、政府の決定が不当である可能性を指摘し、裁判が最終結論を下すまで、政府に対して一部の口座凍結をやめるようにとの判決を下す。これでグリーンピース・インドは一部の銀行口座にアクセスすることが可能になり、当面はスタッフの給与などを支払うことができるようになった。

ひとまずは活動が継続できるようになったが、政府の規制は今後も強まるため、ここからが正念場といえる。

 

国連事務総長への訴えにご協力を!

このように、時の政権が市民活動やNGOの動きを規制し、民主主義の根幹を揺るがそうとする動きがインドで起きている。日本でも同様の動きは現政権下で強まっている。

グリーンピースは、環境保護や平和の維持のためには、民主的な市民社会が形成されていることが重要だと考えている。よって、このような市民社会やNGO、非営利団体への過度な規制は許されるべきではないと考える。

市民活動やNGOへの過度の規制を国際社会が許すことがないように、グリーンピースでは国連事務総長あての国際的な署名を始めた。1分でできるので、日本からもぜひ多くの人に参加してほしい。

署名は以下のバナーをクリック。