こんにちは。海洋生態系を担当しています、花岡和佳男です。


12月9日、国内スーパーマーケット大手5社(イオン、イトーヨーカドー、ユニー、ダイエー、西友)の魚介類商品の調達や、情報公開等に対する取り組みを調査・評価して「お魚スーパーマーケットランキング3」を発表しました。持続可能性や安全性の観点から継続的に調査・評価をしてきたこのランキングは今回で3回目となりますが、第1回第2回で共に第1位だったイオンが、今回ついにその座をイトーヨーカドーに明け渡し、2ポイント差で2位となりました。

1位と2ポイント差の第2位。イオンの評価点は?

今回の調査項目は魚介類商品における「調達方針」「取扱商品」「トレーサビリティ」「情報公開」「放射能汚染問題」の5つ。その中でイオンは、「調達方針」で同率1位、「取扱商品」と「放射能汚染問題」で1位、総合評価で2位となりました。

  • 調達方針(同率1位): イオンは、商品の仕入れをするにあたっての方針/基準である「調達方針」の大枠として「サステナビリティ基本方針」をウェブで公開しています。今後は全ての魚介類を対象としたより具体的で持続可能性を確保する調達方針の作成と公開が必要ですが、その第一ステップは踏み出しているとして、評価されました。イオンは、対象スーパーで唯一、国際機関や政府に準ずるだけでは持続可能性は確保できないことを把握し独自の明確な調達基準の策定に取り組んでいます。
  • 取扱商品(1位): サステナビリティを考慮した基本方針が実際の商品採用にある程度反映されています。2013年、太平洋クロマグロについてはその資源状態の悪化を深刻視し、イオングループ全体でメジマグロ(太平洋クロマグロの幼魚)の販売を自粛したり、ヨーロッパウナギにおいても新たな仕入販売を中止したりと、業界を先導する取り組みがありました。ただしまだまだ店舗を見渡せば、絶滅危惧種や乱獲されている種も多く売られているのが実態。今後はこれらの「今は取り扱うべきでない種」の調達を減らし、その代わりに資源管理の行き届いた「いま取り扱うべき種」の調達を増やしていくことが求められます。また行政等に資源管理を働きかけることで「いま取り扱ってもいい種」を増やす取り組みも、大きな役割です。
  • 放射能汚染問題(1位): 2011年11月に「放射能ゼロ目標宣言」をしており、対象他社を大きく引き離し1位となりました。
  • 総合(2位): 前2回のランキングでは首位を独走し、今回のランキングではトップとなったイトーヨーカドーに2ポイント及ばず2位となったイオン。業界を先導する地位にありますが、それでも今回の獲得ポイントは100ポイント中65ポイントと、ステップアップの余地がまだまだ大いにあるものです。特にナショナルブランドの加工品におけるトレーサビリティ体制の構築は課題で、サプライチェーンを通じてプライベートブランド同様の体制作りが求められます。

交渉にあたって

グリーンピースはこの調査に先駆け10月に、皆様からお預かりした「未来に魚を残すため、放射能汚染、乱獲、違法漁業の魚を売らないで」とする約8000通のオンライン署名を、イオン含む大手5社及び業界団体に届けました。多くの「消費者の声」が、イオンの業界を先導する動きを後押しし、日本のスーパーマーケット業界に持続可能性や安全性を確保する取り組みを更に強化させる力となりました。署名にご参加いただいた皆様、有難うございました!

ランキングの準備段階から海浜幕張にあるイオン本社に複数回足を運びました。水産調達部、水産商品企画開発部、デリカ・フードサービス部、商品戦略部、グループ環境・社会貢献部など多岐に渡る部署の担当者と意見交換を行い、海洋環境に関する問題意識や持続可能性や安全性を追求する責任が、対象他社よりも広く社内に浸透していることを感じました。

今日もランキング3の結果を受けての情報共有のために本社を訪れました。「1位の座を明け渡し非常に残念です」「今回のランキングを通して、今後取り組むべき課題が何なのかが明確になりました。これから具体的な対策として具現化していきます」「特に4位と低評価のトレーサビリティについて、今後はナショナルブランドの加工品についても、もっと調達前に商品について知っていくことをしていかなくてはならない」などと仰っていました。イオンに対して、「調達方針」「取扱商品」「トレーサビリティ」「情報公開」「放射能汚染問題」其々における取り組みの強化と、それをイオングループのスーパー(ダイエー、マックスバリュ、いなげや、ベルク、マルエツ、カスミ、まいばすけっと、等)にも適応するよう、求めてきました。

イオンが「放射能ゼロ目標宣言」の実施を続け、メジマグロやヨーロッパウナギの取扱いを中止し、持続可能性を考慮した具体的な魚介類の調達方針の策定に取り組み、「1位の座を明け渡し非常に残念」とする理由は、たくさんの消費者の声や目にあります。スーパーマーケット業界では、店舗に寄せられる一通の「お客様の声」の後ろに10~100の需要があると考えます。今回寄せられた8,000名の署名がもたらす効果がとても大きいことが、また目に見える形となりました。

実際にお金を落とす消費者の力で、スーパーは変わります。食卓に並ぶお魚の約70%はスーパーを経由しています。これからも多くの「消費者の声」でスーパーの前向きな取り組みを応援し、子どもたちの海と食卓に豊富で美味しいお魚を残していきましょう。

スーパーを変えるオンライン署名、まだやっています。一人でも多くの「消費者の声」をお寄せください!

次のブログでは、今回のランキングで3位・4位となった西友とユニーの取り組みやその評価についてお知らせします。

 

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