こんにちは、海洋生態系担当の花岡和佳男です。今日は福岡で行われている「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第9回北小委員会(NC9)」の2日目。初日は各政府や機関からのプレゼンテーションが主体でしたが、今日から議論が少しずつヒートアップ。休憩時間などに開かれるサイドミーティングも活発になってきています。

昨日のブログでは太平洋クロマグロはもう約4%しか海に残されていないことを紹介しましたが、いま私が福岡で参加しているWCPFC-NC9でも、加盟国政府代表団はそれを前提として議論が進んでいます。更に、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)から報告がありWCPFC-NC加盟国政府代表団が共通認識するのは、太平洋クロマグロは親魚だけでなく子マグロの量が深刻な状態にまで減少しており、資源量は今後も更に落ち込む可能性が高い、ということ。

そもそも、太平洋クロマグロ、なぜ子マグロの量が減少しているのでしょうか。

太平洋クロマグロは一本釣りで獲られた何百キロもある巨体がセリにかけられるイメージが強いですが、実はその総漁獲量の約98%もが、海に次世代を残さない成熟前の若いマグロで占められています。中でも0~1歳の幼魚は、食用および養殖用の種苗向けとして主に九州や韓国のまき網や西日本の曳き網などが漁獲していますが、これが総漁獲量の実に約90%を占めています。それに加えて2歳魚は食用や蓄養種苗向けとして主にメキシコのまき網が、3歳魚は食用として主に日本海のまき網が、大量に漁獲しています。太平洋クロマグロが初めて産卵をするのは3歳~4歳。海での産卵経験がない若いマグロが一網打尽にされているのですら、海を泳ぐ魚の数が減るのは当然です。

WCPFC-NC、何が話しあわれているの?

今回のWCPFC-NC9の議論の中心は、この太平洋クロマグロの保護・管理措置の強化についてです。既存のルールはもともと未成魚の漁業規制が甘いうえに例外措置が多いことが問題で、国内の零細漁業や韓国の漁業などはこの例外措置が適応されルールに則らなくていいことになっていました。

今回の一つ目のポイントは、暫定的な緊急措置として、この甘い漁業規制の強化と、例外措置の排除。日本政府代表は会議の初っ端から積極的に規制強化案を提案し、例外措置の撤廃にも前向きで、複数の加盟国政府代表から大枠の同意を得る流れ。より厳しい未成魚の規制強化を提案するアメリカ政府代表等にも、昨夜のレセプションや今日の休憩時間などを使い交渉している様子です。世界最大の太平洋クロマグロ漁業国および消費国として、持続性を最優先させ厳しい措置を取ってほしいと期待します。一方でタジタジなのが、何とか「例外措置」の恩恵を受け続けようとする韓国政府代表。あと2日間、攻防は続きそうです。

今回の会議のもう一つのポイントが、長期資源回復計画の策定。まず、恐ろしいことに太平洋クロマグロは、○○年までに□□の状態にまで資源状態を回復させようという管理基準値すら、まだ設定されていないのです。まずは予防原則と科学に基づいた明確な限界管理基準値および目標管理基準値の設定が急務。日本政府代表はこの基準値の設定にも積極的です、ぜひ議長国として加盟国政府代表を先導し、その設定をしてほしいものです。

その上で、長期資源回復計画策定へのロードマップ作りが必要です。太平洋クロマグロ漁業を持続的なものにするには、まずは資源回復を最優先させ、同時に漁業をコントロールする、長期的な計画を作らなくてはなりません。しかし今のところこの会議は、「暫定的な緊急措置は今年決めるが、長期資源回復計画は来年考えよう」ともなりかねない雰囲気もあり、これではこれから1年間が無駄になり、実際に長期計画が出来上がるのが数年後になってしまいます。緊急に長期資源回復計画策定へのロードマップを作り、必要な調査をISCにリクエストするなど策定に必要な準備をこの1年で行うことで、来年の会議で計画を具体的に固める流れを作ることが、この会場に集う加盟国政府の責務です。

この会議、国際的関心も高く、国内外から多くのNGO・NPOも参加しています。今日グリーンピース、WWF、PEWの3つの国際環境NGOは共同で、会場で加盟国政府代表の前で、この会議が果たすべきことについて発表しました。

3年前に私が参加したときとは大きく違い、前進する流れを感じる今回のWCPFC-NC。その流れの度合いをどれだけ大きく効果的なものにできるか、あと2日間の会議に最後まで参加し、また皆さんにもレポートしていきます。

消費者の力で変わります!オンライン署名はこちら