みなさん、こんにちは。
「海洋調査サポート」として虹の戦士号に乗船しています宮地です。

今回の虹の戦士号には世界12カ国から23人の乗組員が乗船しています。みながそれぞれの思いを持って、今回の調査にのぞんでいます

今回このブログで紹介する、ヤコブ・ナミンガ(グリーンピース・オランダ 放射線安全アドバイザー)とジェレミー・サットン・ヒバート(写真家)は、特別な思いを持って参加しています。

ヤコブは、3月にはじまった第1回放射線調査から参加しています。彼が最初に福島を訪れた時はまだ、福島第一原発の状況が全く不透明でした。日本に住んで写真家として活躍しているジェレミーは、原発事故が起こった直後に、真実を世界に伝えるため写真家として福島第一原発近くまで取材に行きました。今回の海洋調査には、幼稚園に入園したばかりの娘さんと、日本人の奥さんを残しての参加です。


ヤコブ・ナミンガ(グリーンピース・オランダ 放射線安全アドバイザー)
「東日本大震災が起こった時、私はオランダの自宅にいました。ニュースを聞いてすぐにテレビをつけました。その時、目の前に広がっていた光景は津波と地震によって日本の家屋が破壊されていくものでした。そして、福島第一原子力発電所の事故は起こり、『信じられない、日本の美しい景色が破壊されていく』という気持ちになりました。数日後、グリーンピースから日本での放射線の調査を頼まれたとき、この調査活動が正確な情報の提供につながり、日本のみなさんの為になるならと思い、参加を決意しました」

「私が福島を訪れた時、最も心配だった事は避難命令が出ていなかった30キロ圏外でも、高いレベルの放射線量が検出されたことでした。この地域に住んでいる方々が、が長い間家を離れなければいけないという事実に心が締め付けられます。私は、この美しい山々、田畑が広がる地域をもう一度訪れたいと思っています。それほど、美しい場所でした。津波、地震、放射能すべてがみなさんに苦しみを与えていると思います。しかし政府に対しては、正確な情報の提供を求め続けてください」。



ジェレミー・サットン・ヒバート(写真家)
東日本大震災が起こった時、私は東京の西新宿にいました。私にとっては初めての地震ではありませんでしたが、確実にみなが恐れていた「初めての」大地震であると感じました。

まず思いついたのは、広い場所に移動すること。そこへ着くとすぐに、日本人の妻と3歳半の娘の安全を確認するため電話をかけ続けましたが、つながりません。携帯メールも不能。2時間後自宅にたどり着くまで、何もすることが出来ませんでした。

そこから緊張の続く日々が始まりました。なすすべもなく、津波や福島原発事故の映像を見ていました。娘に水を飲ませていいのだろうか? 外で遊ばせていいのだろうか?心配が先に立ちました。私たちが感じた恐怖は現実でしたが、東北、なかでも福島県の住民の方々が抱いている心配ごとや恐怖とは比べものにならないことも知っていました。

私は何年も写真家としてグリーンピースと共に活動し、地球が直面する環境問題を取り上げてきました。父親となった3年前からは、以前にも増してこの仕事が大切になってきました。娘は光理(ひかり)といいますが、あふれるような生命力に満ち、文字通り周囲に輝きを与えてくれます。外で遊ぶのが大好きで、公園、ブランコ、小枝、葉っぱなどが遊び相手です。私は娘に広い世界に出て、いろいろな国に行き、この地球が持つ美しさを体験するように育って欲しいと思っています。娘の将来について抱く希望が、直面する環境問題を撮影する仕事に私を駆り立てます。そして何らかの形で、私の写真が変化をもたらす一因となればと思っています。

妻と二人で地震があったこと、大地が動いて割けたこと、波が来て家を飲み込んだこと、友人や家族がみつからない人々がいることを光理に説明しようとしました。そして地震や津波が電気を作る工場を壊したことも伝えました。娘は小さい子供が出来る限りの理解をしたようです。

福島へ航行する虹の戦士号に乗船する話をもらったとき、即座に承諾しました。決断は難しいものではなかったのです。妻とは危険性や安全面などについて話し合いました。危険性は確かにあるけれど、リスクを負う価値があり、放射能による海洋汚染の調査は必要だという結論に至りました。娘には自分が船に乗ること、少しの間家を離れること、以前話した、壊れた工場の近くへ行くことを説明しました。するとお返しに、娘は私と船の絵をかいてくれました(下写真)。



「人生いつも前向きに」が持論のヤコブとジェレミーも、船の中では、夜遅くまで専門家が持っている放射能に関しての研究書を繰り返し読み返し、そして現場責任者との打ち合わせ、安全確認のチェックを繰り返しおこなっています。

「がんばれ日本。まもろう海と漁業」という思いの為に…。

最後にジェレミーはこのように続けました。
「太陽は昇り、桜は咲き、生活は続きます。現状に満足し安心するのは簡単です。でも、放射能やその危険性は目に見えず、長期に及びます。日本のみなさんは政府に情報開示を要求し、正確な情報やより良い答えを求めなくてはなりません。日本に長く住んでいる者として、福島の原発事故に関し東京電力や政府が発表する内容に不安があります。信頼できるのか? どのくらい信用していいのか? 全部開示しているのか? 迅速に行動し、対策は強化しているのか? 日本の国民は現状についてもっと知らなくてはならないし、不安や恐怖へのしっかりとした答えも必要なのです。

妻は日本、私は外国のニュースをチェックし、真実を見定めようとしています。グリーンピースが話し合いの場に重要な調査結果を提供し、日本が現在耐えている原発問題に対し独立した立場で強く意見が言え、そして国民を代表して堂々と口を開くと信じています。

正確な情報、疑問に対する答え、そして信頼に値するデータが揃ったところで、人々は安心するのだと思います。その時初めて、私は地震と津波が引き起こした問題が解決し、良い方向に向かっていると光理に報告が出来るのでしょう。」