シリーズ第1回:海の現状について

シリーズ第2回:漁業現場で起きていること

シリーズ第3回:資源管理

シリーズ第4回:ラベル表示でどこまで分かる?①

シリーズ第5回:ラベル表示でどこまで分かる?②

シリーズ第6回:私たちにできること

 

こんにちは、海洋生態系担当の田中です。

前回は、魚がどんどん海から姿を消している現状についてお話し、その最も大きな原因は「獲り過ぎ」であることをお伝えしました。

シリーズ第2回目は「漁業現場で起きていること」についてです。

起きていること①:巨大化する漁業

魚を多く効率的に獲るために、漁業で使われる道具は進化してきました。様々ある魚の獲り方や道具の中でも、規模が巨大になってきている漁法による環境や資源へのダメージが深刻化しています。


魚の大小や種類を問わず、「海の一部分」をごっそり獲りつくしてしまう大規模な漁業では、獲った後に「小さすぎて売れない」「食用にならない」などの理由でその場で死んでいる魚を海に捨てたり、(リリースする際に生きていても、弱ってしまって生き続けることが出来ない場合も多いです。) 売れる魚でも、満杯の網の底で潰れたり、網によって傷つき、売り物にならなくなってしまうこともあります。さらに、破壊された海底の環境も、すぐには元に戻りません。また近年FAD(人工集魚装置)と呼ばれる魚の習性を利用して、魚を一カ所に集める装置や、魚群探知機、人工衛星などの普及によって効率はさらに上がっています。

無差別に膨大な量を獲る方法では、子どもを生む前の魚も大量に獲られてしまうため、魚は減り続けてしまいます。約60年前と比較して、世界の漁場の25%は崩壊しているといわれています。※ 全ての漁業がこういった方法で行われているわけではありません。でも、大規模漁業が海に与えるダメージはとても大きく、その影響は漁業全体に及びます。

Christian Mullon, Pierre Freon, Philippe Cury"The dynamics of collapse in world fisheries"2005

起きていること②:親の仇と魚はみつけたら獲れ?
海から魚が姿を消してしまえば、漁業は崩壊してしまうことは明らかです。では、なぜ対策は進まないのでしょうか?


「親の仇と魚はみつけたら獲れ」という言葉があるそうです。これは言い換えると、海の魚は誰のものでもないことから、見つけた魚はさっさと獲ってしまえ、つまり海は「早いもの勝ち」の世界であることを示しているそうです。


穀物や野菜、牛や鶏などは多くの場合、所有者が明確な場所で育てられ、時期が来れば市場に流通します。決められた場所から勝手に飛び出し、所有者が分からなくなることもありません。でも、魚は自然の中で育まれ、人間の手によって獲られて市場に流通し、私たちの食卓事情の中で特殊な環境にある資源の1つです。

たとえば、まだ市場では小さすぎて高く売れない魚が網に入ったとします。大きくなれば何倍も価値が出るし、それまでに子どもを産み、命の連鎖を繋げることができます。でもここで網に入っていた魚を逃がしても、大きくなってまた自分の網の中に戻ってきてくれるとは限りません。もしかしたら、直後に隣船の網にかかって、そのまま売られてしまうかもしれません。だからこそ、少しでもお金になる魚は獲った時点で市場に流通させてしまいます。
「自分が育てているものではない」「誰のものでもない」からこそ、個人の意識だけでは資源全体を管理することが難しいのです。また、持続可能な漁業を続け、魚を次の世代に残すためには「みんなで管理する」という合意が必要不可欠です。

水産資源が枯渇すれば、漁業は崩壊してしまいます。このまま、魚が海からいなくなって
しまうのをただ見ていることしかできないのでしょうか?
そんなことはありません。持続可能な漁業を目指して、地域的・世界的にいろいろな動きがでています。

次回は、解決策の1つ「資源管理」のお話です。

海の現状と問題は、まだ多くの人に知られていません。手遅れになる前に一人ひとりができることをしていくために、海の問題を周りの方に広めてください。
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