こんにちは。海洋生態系担当の花岡和佳男です。

もうすぐ土用の丑の日(7月22日)です。乱獲などによる資源状態の悪化からウナギの価格が高騰し、閉店を余儀なくされる鰻屋もある今年、皆さんはどのようにこの日を過ごしますか?

日本は世界のウナギの約70%を消費する巨大ウナギ市場国ですが、年を通じて最も消費量が多いのが、この土用の丑の日。既にスーパーマーケットやコンビニなどは、鰻重の予約を受け付けたり、鰻蒲焼の値下げを発表したりして、プロモーションを始めています。牛丼屋チェーンまで安価で鰻丼を売っていますね。資源状態が悪いことが既に広く報道されているウナギをそんなに薄利多売してしまって大丈夫なのでしょうか?

 

日本でこれまで主に消費されてきたのはヨーロッパウナギやニホンウナギなどという種ですが、ヨーロッパウナギは2008年に国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)で「近い将来の絶滅の危険が極めて高い種」とされ、ワシントン条約でも国際取引が規制されています。一方のニホンウナギも、今年2月に環境省のレッドリストが絶滅危惧種に指定したばかりで、更にこの夏、国際自然保護連合(IUCN)も絶滅危惧種に指定することを検討しています。日本の食文化において重要な位置づけにある土用の丑の日が、残念なことにいつの間にか、絶滅危惧種を大量に消費する日になってしまっている実態があります。

 

ヨーロッパウナギやニホンウナギなどの減少を受け、スーパーなどは大急ぎで代替ウナギを、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、タスマニア、マダガスカル、フィリピン、インドネシアなど世界各地から探してきています。ただこれらのウナギ、今こそまだ絶滅危惧種指定はされていませんが、持続可能性を担保する資源管理や漁業規制は行われていないため、今の日本市場の莫大な需要に応えようと乱獲が進めば、すぐにヨーロッパウナギやニホンウナギと同じ運命を辿ってしまうのは目に見えています。スーパーの多くは、短期利益を優先して絶滅危惧種の薄利多売を続ける上、代替種をも次々と絶滅へ追いやろうとしているのです。

 

更に怖いことに、薄利多売に後押しされた乱獲により危機的状況にある魚介類はウナギだけではありません。例えば日本が世界漁獲量の約80%を消費しており日本食の代表的存在にある太平洋クロマグロ(「本まぐろ」として販売されている場合が多い)も、今や未開発時のわずか3.6%しか海に残されていないとされています。このままでは海からも食卓からも、すぐに次々と魚が消えて行ってしまいます。

 

生態系破壊から目を逸らし薄利多売を続けるスーパーが最も気にしていること、それは「消費者の声」です。絶滅危惧ウナギや乱獲マグロに需要がないこと、そのような商品を販売することでスーパーのブランドバリューが下がることを、多くの消費者がスーパーに伝えることで、スーパーはその需要に応え商品ラインアップを見直し、サプライチェーンに「売れる商品」を要求するようになります。今グリーンピースが展開しているオンライン署名「一週間、魚なしで過ごせる?」に参加して、ぜひ皆さんの「ウナギをおいしくいただく土用の丑の日を次の世代にも残せるよう、乱獲ウナギは取り扱わないでください」「持続可能性に責任を持った魚介類の調達方針を作ってください」などと言った声を、一緒に大手スーパーに届けましょう。