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こんにちは。食と農業担当の関根です。寒さが本格的になってきましたね。ハチたちにとっても厳しい冬、無事に越してくれますように。

さて、ヨーロッパでネオニコチノイド系農薬3種の規制が始まってからこの12月で4年がたちました。今年3月には、この3種の使用を全廃する案が提出されており、2018 年の早い時期に、全廃の是非を問う各国の投票も予定されています。そんな折、イギリスから一足先にグッド・ニュースです。

イギリスの環境相、ネオニコ全廃方針を表明

イギリスのマイケル・ゴーヴ環境相は11月、ネオニコチノイド系農薬の全廃の方針を明らかにしました。[1]

英ガーディアン紙によると、同環境相は次のように語っています。

「いくつもの重要な証拠により、ネオニコチノイド系農薬が私たちの環境に与えるリスクが示されている。特に、1.5兆円規模の食品産業において重要な役割を果たしているハチその他の花粉媒介生物にとって、従来理解されていたよりもリスクは大きくなっている 」

「ネオニコチノイド系農薬にさらなる規制を課す正当性があると確信している。花粉媒介生物を危険にさらすことはできない。」 

 

イギリスは、4年前にEUがネオニコ系農薬の規制を導入した時には、反対に回った国。当時はネオニコ系農薬の規制が農業に悪影響を与えると主張していました。

しかし今回、同環境相は、環境の悪化は、最終的には経済にとっても悪い知らせでもあるとして、ハチなどの野生の花粉媒介者が、イギリスの農業生産の収量と品質を金額にして600〜1000 億円も向上させている、と述べました。

ネオニコ系農薬が農業の経済価値に与えるリスクの大きさを、より重視する見解に転じたのです。

同紙などによると、イギリス環境相がネオニコ全廃へと動いた背景には、最近の科学的知見があるといいます。それは、10月にドイツで発表された「過去27年の間に飛ぶ昆虫の総量が75%も減少した」とする調査報告[3]や、世界中から集めたハチミツのサンプルを分析して、その75%から殺虫剤が検出され、34%からはミツバチに有害な濃度のネオニコ系農薬が検出されるなどの汚染が広がっていることをつきとめた報告[4]など。このような、最近明らかになってきた汚染の事実を深刻に受け止めたことが今回の方針転換に繋がったようです。

アイルランドもネオニコ全廃へ向かう

アイルランドも、4年前にはEUのネオニコ規制に反対していた国の1つでしたが、イギリスの全廃方針につづき、アイルランドもEUの全廃に向かう動きに沿う方針を農業省が明らかにしています。[5]

日本でも規制へ一歩を踏み出そう

日本でもハチなどの生み出す経済価値は約4,700億円と試算されるなど、私たちの食は花粉を媒介する生きものに大きく支えられています[6]。でもまだ残念なことに、農林水産省ではそうした重要性の認識が弱く、ネオニコ系農薬の規制どころか、使用範囲の拡大や残留基準の引き上げがおきています。(2018/1/10追記:2017年末、日本では新たにもう1つ、ネオニコ系農薬が承認されてしまいました[7])

そんな中、農家や地方自治体、生協などからは、日本でミツバチの大量死の主要な原因となっている田んぼへのネオニコ系農薬散布をやめようという意見が上がっています。グリーンピースでも農家や消費者団体と一緒に、オンラインアクションを実施中。

消費者にも、農家にも、そしてもちろんミツバチ(養蜂家)にとってもポジティブな一歩を一緒に踏み出すために、あたなも是非参加してください。 

賛同する >

 

[1]The guardian”UK will back total ban on bee-harming pesticides, Michael Gove reveals(2017年11月9日)

[2] The Guardian “The evidence points in one direction – we must ban neonicotinoids”(2017年11月9日)

[3]CNNニュースドイツ自然保護区の飛行昆虫、約30年間で75%減少(2017年10月20日)(もとの研究はこちら→Caspar A. Hallmann 他 More than 75 percent decline over 27 years in total flying insect biomass in protected areas Pros One 2017年10月18)

[4] AFPニュース 世界の蜂蜜の75%、ミツバチに有害な殺虫剤の痕跡 (2017年10月6日)(元の研究はこちら→E. A. D. Mitchell他A worldwide survey of neonicotinoids in honeyScience 2017年10月6日)

[5]The Irish Times Ireland set to back EU ban on bee-hazardous pesticides (2017年11月20日)

[6] 国立研究開発法人農業環境技術研究所 平成28年2月4日プレスリリース

農作物の花を訪れる昆虫がもたらす豊かな実り-日本の農業における送粉サービスの経済価値を評価

[7] 2017/12/26 グリーンピース声明「ミツバチに有害な農薬の日本解禁に抗議」厚労省と農水省、ネオニコチノイド系農薬スルホキサフロルの残留基準値および新規登録を決定

 

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