こんにちは、そして、はじめまして。10月から海洋生態系担当になりました、岡田です。どうぞ、よろしくお願いします。

さてさて、みなさま、絶滅危惧種の太平洋クロマグロを守るためのキャンペーン「マグロの赤ちゃんを守って!Save My Baby」、覚えておいででしょうか?今日は、この署名に対する各社の回答が出揃いましたので、その発表をいたします。

まずは『マグロの赤ちゃんを守って!Save My Baby』について、少しおさらいしますね。この署名は、2015年6月22日から2016年6月21日までの1年間、大手スーパーマーケット・デパートに産卵期の太平洋クロマグロを守るため、以下の3つの事項をお願いするために集めていたものです。 

http://www.greenpeace.org/japan/ja/Action/SaveMyBaby/

スーパー・デパートへお願いした3つの事項

  1. 資源が回復するまで絶滅危惧種を販売しないこと

  2. 持続可能な方法で獲った魚を販売すること

  3. 取り扱いのある魚介類の資源状況を店頭で公開すること

戴いた1488名分の署名と寄せられたコメントは冊子にし(署名・コメントを下さったみなさま、ありがとうございました!!)、10月中旬〜下旬に関東地方に本社のあるスーパー・デパートには、その担当者と直接会って手渡しして来ました。ユニー(愛知県)と、阪急阪神百貨店(大阪府)は、遠距離のため11月初旬に郵送での提出となりました。

署名を手渡した感想ですが、担当者の多くは、やはり消費者のみなさんの声は気になるのでしょうね。みなさまの「マグロを食べなくても大丈夫!」「禁漁をすべきだ!」等々熱いコメントを興味を持って読んでいたように思いました。

そして、、、大変長らくお待たせしました!

このキャンペーンを始めてかれこれ1年半。

産卵期の太平洋クロマグロを守るためのこの3つのお願いに対し、どういった対応を取ってくれるのか、大手スーパー・デパートからの待ちに待った回答の発表です。

スーパーの反応は?

《イオンとダイエー》業界内でも率先して次々と入手し得る持続可能なシーフードの販売を促進しています。ダイエーへの署名はイオンへの署名と合わせて、100%親会社であるイオン株式会社へ提出し、両スーパーとしての回答を頂きました。

夏に行った『マグロがいる海がいい』キャンペーンのアンケート調査では、産卵期の太平洋クロマグロの取り扱い削減を具体的に提示していました。今回は特に言及はありませんでしたが、前回の提示案を続行と言うことで理解しています。今後、特に来年の初夏、及び夏の産卵期シーズンの販売量に注目したいところです。

《西友》西友は、今後の仕入れ時の参考にしたいとの事。この回答が、前回のキャンペーンから続いています。今後の素早い変更を期待しています。

《イトーヨーカドーとユニー》今回のキャンペーンでは、今後の仕入れ時の参考にしたいと回答したイトーヨーカドー。アピタ・ピアゴを展開するユニーは、産卵期の太平洋クロマグロの取り扱いを毎年2割づつ削減することを現在検討中だそうですが、、、

あれ、あれっ? 

確か、『マグロがいる海がいい』キャンペーンでのアンケート調査では、イトーヨーカドーは、「2020年度までに2015年度比で2割の削減をする」と回答し、ユニーは「毎年、2割づつ削減する」と回答していたはずです。なんで、具体的に明言されていたことが、「今後の参考にしたい」や「検討中」に後退してしまっているのでしょうか?? 

こう言った回答の矛盾は、消費者の信用を裏切ることに繋がります。各社はその辺りに責任をもってほしいものです。

スーパー各社からの回答全文はこちらを、半年前の『マグロがいる海がいい』の結果はこちらをご覧ください! 

デパートの対応は??

太平洋クロマグロが絶滅危惧種であるという認識はあるけれど、デパートは漁業者と直接取引がないので現状を変えるのは難しいという見解が共通してあるようです。

《三越伊勢丹》持続可能な資源管理について取引先との話し合いを始めている三越伊勢丹は、太平洋クロマグロ保全のための3項目については引き続き検討していくようです。取引先の理解を得られるよう頑張ってほしいものです。

《大丸松坂屋》基本的には資源管理は行政主導のもと行われるべきものだという認識だけれども、サプライヤーの責任として取引先と共に資源量が減少した魚種などの情報収集に努めたいとのこと。ぜひ、正確な情報を集め公開し、調達方針に反映していってほしいです。

《高島屋》今後店頭での生態系に関する啓発活動や取引先との話し合いの場を検討している高島屋。歩調はゆっくりですが、半年前に比べ前向きな対応が伺えます。

《そごう・西武》今後の仕入れ・販売時の参考にしていきたいと、ちょっと消極的な回答。以前は可能な限り削減していきたいと言っていたのに・・・・・。

《阪急阪神》一部では養殖マグロを主体に取り扱っているが、取引先各社と共通の認識を持ち、全体を変えていくのにはまだまだ時間がかかる、とのことでした。時間が掛かると、そこで諦めないで、手を替え品を替え、共通の認識を持てるよう働きかけてほしいですね。 

デパート各社の回答全文はこちらを、半年前の『マグロがいる海がいい』の結果はこちらをご覧ください! 

みなさんは、このスーパー・デパート各社の回答どのように思われましたか?

私の正直な感想は、、、もちろん、お願いしたすべての項目を二つ返事で実行してもらえる程、簡単なことではないのは承知の上でしたが、特に絶滅危惧種販売に関してはもう少し何か具体的な変更を示唆した積極的な回答を各社から聞きたかった、です。


太平洋クロマグロ、本当に絶滅危惧種なの?!

太平洋クロマグロが絶滅危惧種であると聞いたことがある人でも、店頭に特売品として並べられたマグロを見たら、それが「絶滅危惧種で初期資源量のたった2.6%しか残っていない」という事実を疑ってしまう人も多いのではないでしょうか? “だって、絶滅危惧種なら(あんなに)お店で売ってないでしょ‼”っていうのがごく一般的な反応だと思うのです。では、なぜ絶滅危惧種の太平洋クロマグロが、あんなに売られているのでしょうか?

大量に売られているのは、産卵期に大量漁獲されたマグロです。産卵期のマグロは味が良くなく、良い値が付きません。冷凍設備のない漁船が大量に獲るので悪くなる前に安くさばくしかありません。微々たる利益しかでなければ大量に獲るしかありません。負の連鎖の始まりです。

漁師さんだって、魚の数が減ってきた、サイズが小さくなってきたなんてことは私たちより肌で感じているはずなのです。

なのに、なぜそんなに大量に獲る必要があるのでしょうか?産卵期の漁業に関して規制がないから漁業者は獲るのでしょうか?それとも、獲れば、小売店などが買ってくれるから獲るのでしょうか?では、小売店は漁業者が獲るから買い付けるのでしょうか?小売店は消費者が買うから買い付けるのでしょうか?はたまた、消費者は小売店が売るから買うのでしょうか?

なんだか、卵が先か親鶏が先かの議論のようですね・・・。

一文惜しみの百知らず?!

本来、このような危機的状態になる前にきちんとした資源管理規制を設けていれば、このような負の連鎖は起きなかったでしょうし、今より差ほど反対もされずに実施出来た事だろうと思います。しかし、現状で資源管理規制を設けるには、痛みを伴います。

消費者・漁業者・販売者などその立場により、その痛みの種類も度合いも全く違うものになるでしょう。 誰しも、痛い思いをしたいわけではありません。

でも、“マグロを一生食べるな”とか “マグロが人間より大切だ”とか言っているのではありません。短期的に見るとマイナスな面ばかりがフォーカスされ感情的になりがちです。

でも、中長期的に考えると、5年で成魚になる太平洋クロマグロは産卵期の禁漁により、成魚マグロの数が増え、個体サイズも大きくなります。その結果、“太平洋クロマグロってどんな味?”なんて将来世代が言う可能性もなくなり、漁師さんも単価の高いマグロが獲れるようになるでしょう。消費者は脂ののった美味しい本マグロが食べられるようになります。このまま何もせず現状を続ければ、近い将来、太平洋クロマグロの資源は尽きてしまう可能性があります。本当にこれ以上の猶予はありません。

それぞれの立場で出来る事を1日でも早く始めましょう。

私たち消費者に出来る事。

絶滅危惧種の販売をスーパーなどにやめ、代わりにサステナブル・シーフード(持続可能な方法で獲った魚)を販売することをお願いしましょう!!

 

スーパーマーケットランキング6に参加した各スーパーへ声を届ける。 

【注釈】

  1. 「太平洋クロマグロの資源状況と管理の方向性について」平成28年8月に水産庁によって作成された資料 http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/attach/pdf/bluefinkanri-1.pdf

 

【岡田幸子 プロフィール】

国際線客室乗務員として約10年勤務後、環境問題を学ぶためにオーストラリアの大学へ留学し生物学・生態学を中心に学ぶ。卒業後、シドニーでBush Regeneratorとして勤務。現存する森林を元あった健康な状態・構造に戻すため、雑草雑木を取り除きその土地の固有種の植林などの業務を行う傍、植物や動物、特に野鳥の鳴き声での識別スキルを学ぶ。その後、グリーンピース・ジャパンで働き始める直前まで、オーストラリア国立大学大学院の景観生態学研究チームでSenior Research Officerとして、約8年間勤務。主な仕事は野外調査、データ管理、論文共同執筆など。毒ヘビハンドリング、マニュアル四輪駆動車でオフロード運転もこなします。キャンペーナーとしての経験はまだまだ浅いですが、日本の漁業・シーフードをサステナブルなものに、そして地球の70%も占める海とそこに住む生物の保全に、全力を尽くします!