プレスリリース - 2016-07-21
国際環境 NGO グリーンピース・ジャパンは本日、宮城県の阿武隈川河口および福島県の沿岸と複数の河川の流域で2月21日から3月11日に実施した放射線測定と堆積物サンプリング調査の結果を発表しました。比較のために、3月22日から24日には関西電力の複数の原発から数十キロに位置する琵琶湖の堆積物も調査しました。その結果、阿武隈川(源流と主な集水域は福島県、河口は宮城県)、新田川、太田川の川岸は放射性セシウムによって高濃度に汚染され、最大で琵琶湖沿岸の堆積物の約2,000倍も汚染されていることがわかりました。グリーンピースは、これらの結果をレポート『水に沈む放射能:東京電力福島第一原発事故から5年 淡水域および海水域の堆積物に対する放射能調査と分析』(注1)にまとめ発表しました。
グリーンピース放射線調査チームは、琵琶湖岸の高島、長浜、草津の4カ所(内、長浜で2カ所)で調査を行いました。その中で、最も汚染度が高いサンプルは長浜市の湖岸で採取した堆積物で、放射性セシウム(セシウム137,セシウム134合計)13Bq/kgが検出されました。一方、福島県では南相馬市新田川沿岸で採取した堆積物のサンプルの汚染度が最も高く、琵琶湖岸のものと比べ2,000倍の29,800Bq/kgが検出されました。同サンプルは、福島県内の他の河川で採取したサンプルと同様、避難区域外で採取したものです。なお、琵琶湖の汚染は核実験とチェルノブイリ原発事故の影響と考えられます。
グリーンピースのグローバルシニアエネルギー担当のケンドラ・ウルリッチは「高濃度に汚染された福島の森林、河川、湖は、今後数十年から数百年は汚染されたままです。放射性物質は降雨や風によって循環し続けることから、森林や淡水系は放射能の供給源となり続けます。これは琵琶湖にとって重要な教訓です」と警告しました。
グリーンピースによる福島原発沿岸の海底調査で測定された堆積物は、最も汚染度が高いもので120Bq/kgで、2010年の測定値0.3〜1.4Bq/kg(注2)に対し、いまだ数百倍です。川岸の堆積物に比べて低い値となっているのは、激しく複雑な潮流が放射性物質を拡散したためだと考えられますが、この汚染は長期間続くと予測されます。レポート『水に沈む放射能』では、今回の調査結果の詳細とともに、独立した科学者による河川及び海洋における既存の放射線調査をもとに、淡水・海水域で放射能がどのように移行するかを解説し、また、放出された放射能量の推定値を示しています。
グリーンピース・ジャパン エネルギー担当の柏木愛は「万が一、関西電力の原発で過酷事故が起きれば、琵琶湖は深刻な影響を受けるでしょう。人を含め、多様な生き物のよりどころであり、また1,400万人の飲料水を提供している琵琶湖の環境は、多くの人のたゆまぬ努力によって保たれてきました。原発の再稼働は、滋賀県の清らかな森、河川と琵琶湖、そしてその恩恵を受けてきた人々の暮らしと経済を大きなリスクにさらします。関西電力の原発の再稼働に関しては、立地自治体だけではなく、周辺の自治体や住民の声が聞かれるべきです」と訴えました。
注1)レポート『水に沈む放射能』
注2)出典:原子力規制庁「環境放射線データベース」(2016年7月11日にアクセス)
2010年度に福島県沖で調査された64件の海底土のうち、6件がセシウム137を検出(0.3〜1.4 Bq/kg)。58件は「検出されず」と表記されている。
注3) 調査時の写真・動画はこちらからダウロードできます。
※7月21日(木)に報道発表した内容に一部誤りがございました。 以下のように訂正し、お詫びいたします。
【誤】「2010年の測定値0.23〜0.26Bq/kg」【正】「2010年の測定値0.3〜1.4Bq/kg」(7月22日訂正)
【誤】「相馬郡新田川沿岸」【正】「南相馬市新田川沿岸」(7月29日訂正)
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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン