2017/02/21 グリーンピース、生涯被ばく線量を推計ーー飯舘村避難指示解除、「被ばくリスクなお高い」と警告

プレスリリース - 2017-02-21
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、本日、福島県飯舘村で実施した放射線調査の報告書『遠い日常:福島・飯舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』(注1)を発表し、3月末の同村避難指示解除で帰還するには「被ばくリスクはなお高い」と警告しました。

本調査は、2016年11月23日から26日、飯舘村の北部、南部、中心部の7軒で実施しました。

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【報告書概要】

  • 調査を行なった7軒の場合、生涯(70年間)での推定被ばく量の範囲は39から183ミリシーベルト(注2)で、非常に高いケースもあると言える。また、推計には、事故直後の莫大な被ばく量、今後の除染による放射線量の増減、森林内の放射能による再汚染、吸入や食品からなどの内部被ばくは入っていない。

  • 南部の民家1軒で測定された屋外放射線量の加重平均値は毎時0.7マイクロシーベルトで、「放射線管理区域」に相当する。政府が想定する遮へい効果(屋内は屋外の放射線量の40%となる)では、屋内では年間2.5ミリシーベルトになるはずだ。しかし、この民家内に設置した個人線量計では、年間に換算して5.1から10.4ミリシーベルトが計測され、政府による遮へい効果の想定が過大評価である可能性が示された※。
  • 空間放射線量(地上1メートル高)が、1軒当たり数千カ所にのぼる測定地点の79%から100%(うち4軒は100%)で、政府の長期除染目標である毎時0.23マイクロシーベルトよりもはるかに高い。
  • ホットスポットも依然として残っている。最高値は、南部の民家で測定した1メートル高さで毎時3.3マイクロシーベルト。除染が複数回行なわれた後であり、問題は深刻である。

放射線防護アドバイザーで、本調査のリーダーを務めたグリーンピース・ベルギーのヤン・ヴァンダ・プッタは、「調査した住宅では屋外も屋内も線量が高く、帰還した場合の被ばくリスクは非常に高くなります。除染は飯舘村の限られた場所でのみ実施され、除染していない森林等からの再汚染のリスクもあります。飯舘村の放射線状況を客観的に見れば、以前のような日常を取り戻すことは難しいと思われます。被ばくを避けるためには、屋外活動を控えるなどこれまでの生活を変える必要がでてきます。また、地上に近いほど汚染は高く、放射能の影響を受けやすい子どもの影響はことさらです」と懸念を示しました。

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当の柏木愛は、「安倍政権は、避難者が帰還した場合の生涯被ばく量の推計や、再汚染のリスクなどの住民の安全に関わる重要な情報を提供をすることなく、また十分に住民の声を聞くこともなく、避難指示の解除と1年後の賠償打ち切りを決めました。住民が意思決定に関わった上で、科学的な情報に基づいた情報と自らの意思に基いた選択ができる政策をとるとともに、帰還と移住のどちらの選択をしたとしても十分な賠償が保証されるべきです」と訴えました。

グリーンピースは、日本政府に、避難指示解除への住民の意思決定への参加、原発事故被害者への包括的な賠償の継続を求めます。グリーンピースは2月14日より『3.11原発事故 被害者の人権をまもる国際署名』(注3)を行い、政策の見直しを訴えています。

注1)『遠い日常:福島・飯舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』

注2)調査は下記4つの手法を組み合わせて実施。生涯被ばく線量の推計には、放射線スキャニングによって得た1軒につき2,000から6,000カ所で放射線を測定し、その平均値と土壌のセシウム検査の結果から放射性核種の崩壊予測を考慮した。飯舘村の住民が屋外活動が多いことを鑑み、8時間もしくは12時間屋外にいる場合を、それぞれ推計。

  • 田畑や庭、屋根の軒下など住民の敷地内を徒歩で回り、地上1メートルの高さの空間放射線を毎秒測定する「放射線スキャニング」
  • 土壌試料の分析
  • 個人線量計(ガラスバッジ)設置
  • ホットスポット(地上 1 メートル、0.5 メートル、0.1 メ ートル)調査

注3)署名のURL: http://act.gp/humanrights_fukushima

注4)調査の様子の写真、動画

※いま帰還すれば、胸部X線の検査を毎週受けるのと同程度の線量を計測した民家もありました。なお、X線の放射線量は様々な要因によって異なりますが、典型的な胸部X線の被ばく量は0.05ミリシーベルトで、毎週受けた場合、年間で2.6ミリシーベルトの被ばく線量となります(3月2日追記)。

 

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

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