市民社会を良くする:「北極を保護区に」キャンペーン | 国際環境NGOグリーンピース
北極を保護区に
『北極を保護区に』 キャンペーン

気候変動の影響で氷が溶けつづけている北極―。手つかずの自然が、石油掘削や漁業など資源開発競争の脅威にさらされています。

ホッキョクグマやセイウチなど多様な生物が生息する北極。南極大陸と同じように北極海の公海域を保護区にするため、グリーンピースは2012年から壮大なグローバルキャンペーンを開始しています。


「北極の30人」について

ロシアの政府系企業ガスプロムは、北極圏で初の石油掘削基地を設置し、まもなく掘削を始めようとしています。2013年9月、ペチョラ海にある同社の石油掘削基地で「北極を保護区に」と平和的に抗議したグリーンピースの船にロシア連邦保安局が強制的に乗り込み、船を連行しました。

その後、連行された30人、通称「北極の30人」(Arctic 30:乗組員28人と2名のジャーナリスト)はロシア政府の収容所に2カ月以上勾留され、11月終わりには全員が保釈されましたが「不良行為」の容疑で起訴されていました。

拘束から約3カ月たった12月18日、ロシア現行憲法の20周年を記念するプーチン大統領の恩赦案に彼らが含まれ、それをロシア議会の下院が承認しました。
12月末、ようやく30人は自由の身となりました。

著名人も多数「北極の30人」を応援。来日中だった歌手のポール・マッカートニー氏も日本からプーチン大統領に手紙を送ったことをブログで発表したり、歌手のマドンナさんも自身のFacebookページで彼らの解放を訴えてくれました。
署名やソーシャルメディアで情報を拡散するなど応援をして下さったみなさま、本当にありがとうございました。

さて、この恩赦の背景には、そもそも30人の逮捕や2カ月以上にも及ぶ勾留自体が過剰な反応であること、そしてロシアの無謀な北極圏開発に高まる国際的な批判を避けようとしたという実情があります。


「北極を保護区に」

2012年9月、北極海の海氷は最小面積を記録したことを米航空宇宙局(NASA)が発表しました。北極の氷は北半球の冬に成長し、夏に縮小することを繰り返しますが、気候変動の影響が要因となって、夏は氷の面積が急激に減少します。

北極海では、氷が溶けることにより、これまで手つかずの海域に人間の資源開発が及ぶという悪循環がはじまっています。特に石油や天然ガス、そして漁業資源が開発のターゲットとなっていて、周辺の国々が北極海に進出を始めています。

2007年、北極の資源獲得競争のはじまりを象徴する出来事が起きました。ロシアの有人潜水艦が北極点周辺の海底にロシア国旗を立てて、資源の開発権を主張したのです。
2012年7月、グリーンピースは、ブラジルのリオデジャネイロで開催されていた「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)の会場で、北極を資源開発からまもるための『北極を保護区に』(英語名 Save the Arctic)キャンペーンの開始を発表しました。

このキャンペーンは、どの国の領土、領海にも属していない北極点周辺の公海(下図の赤い点で囲まれた海域)を「グローバル保護区」に設定することを目指すというスケールの大きいもので、「グローバル保護区」とは、その海域内での資源開発や漁業を国際的に禁止することをいいます。

手つかずに残された地球上最後の場所と言える北極。その美しい自然が、資源開発によって壊されようとしています。グリーンピースは、"資源開発をさせない"側として、この競争に加わることになりました。


北極点の海底に「未来の旗」を立てる:
ポール・マッカートニーやペネロペ・クルスも賛同

2012年のキャンペーン開始から今まで、「北極を保護区に」の訴えに、世界中で約396万人(2013年10月1日現在)の人が賛同しています。このキャンペーンには、ポール・マッカートニー、ペネロペ・クルス、ロバート・レッドフォード、レディオヘッドのトム・ヨークを含むオスカー賞受賞者、ゴールデングローブ賞受賞者、グラミー賞受賞者といった、多くの著名人が賛同しています。

また、未来世代を築く子どもたちに「未来の旗」として北極の旗を描いてもらい、北極は地下資源や漁業資源の開発を狙う一部の国々や企業に属するのではなく、北極の保護を願う「みんなの国」であることを世界中にアピールしています。2012年4月には、若手ハリウッド俳優エズラ・ミラーさんら若者たちが北極点を目指す冒険に出かけ、旗と賛同者の名前を記した地球儀を北極点の真下の海底に立てました。


問題点:溶ける氷で広がる脅威

北極海での石油開発は厳しい自然環境下で行われています。そのため、パイプラインのメンテナンス不備などによる原油流出が頻繁に起こり、グリーンピース・ロシアの調査によれば、毎年1万件以上、合計500万トンの原油漏れが起きています。この量は、2010年に大問題となったメキシコ湾での原油流出事故の7倍の原油に当たる量にあたります。

万が一、メキシコ湾で起きたような事故が北極の海上石油掘削基地で起これば、厳しい気象条件においての作業は困難であることから、北極海の脆弱な生態系は取り返しのつかない被害を受けることとなります。そこで、グリーンピースは、石油メジャーなどの企業とロシア政府に石油開発の見直しを迫っています。


企業への働きかけ

グリーンピースは、北極海を航行できる砕氷船「アークティックサンライズ号」(北極の日の出号)で、北極での調査活動や、北極海で石油資源の掘削を始めようとしているシェル、BP、エクソンなどの企業に対して開発の見直しを迫っています。

英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル社(以下、シェル社)をはじめとする大手石油メジャーは、北極圏で石油の採掘を開始しようとしていますが、石油メジャーの一社である仏トタル社の最高経営責任者は、北極海の石油採掘には手を出すべきではないと発言したほど、リスクが高い開発となります。そんな中、シェル社は北極圏での採掘を強行しようとしていました。

十分な議論が行われていないと考えたグリーンピースは、世界中でシェル社に対する抗議活動を2012年中ごろに展開しました。オランダやイギリスなどでは、ホッキョクグマの着ぐるみを来たスタッフやボランティアが、シェル社のガソリンスタンドを平和的に封鎖し、来店客に同社の北極圏での石油採掘開始について情報を提供したり、オランダのシェル本社に大きな「STOP SHELL, SAVE THE ARCTIC(シェル社を止めて、北極圏の保護を)」との垂れ幕をかけて抗議をしました。

シェル社は、抗議をやめるようグリーンピース・オランダを相手に差し止め裁判を起こしましたが、オランダ裁判所は「ガソリンスタンドを使用不能にさせるような行為も1時間以内であれば許可される」という判決を出し、シェル社側の訴えが棄却されました。

このように、世界中の人々を巻き込んだ抗議活動が功を奏してか、シェル社は2013年の北極圏開発を中止することを同年3月に発表しました。「北極を保護区に」キャンペーンの活動成果が着実に出てきています。


ロシア政府への働きかけ

一方、ロシアの政府系企業ガスプロムは、同国のペチョラ海の北極圏における初の石油掘削基地を設置し、まもなく掘削を始めようとしています。
グリーンピースは、北極圏の開発が進むことを危惧し、北極での石油採掘の問題点に世界中の注目を集めるために、アークティックサンライズ号を石油掘削基地への抗議活動のためペチュラ海に派遣しました。
2012年8月から始まったこの活動には、グリーンピース・インターナショナル本部の事務局長自らが船に乗り込んで参加し、掘削基地に15時間ぶら下がるなどの抗議で世界中の注目を集めました。

そして、2013年9月20日、「北極を保護区に」と非暴力行動で訴えたアークティックサンライズ号に、ロシア連邦保安局が強制的に乗り込んで船を連行しました。
その後乗組員30人はロシア政府の収容所に勾留され、全員が「組織的集団による海賊行為」の容疑で起訴されました。
10月24日には、ロシア当局は容疑を「海賊行為」よりも軽い「hooliganism(不良行為)」に変更しましたが、勾留は11月の終わりまで続きました。

拘束から約3カ月たった12月18日、ロシアの現行憲法の20周年を記念する恩赦で、30人は訴追を免れることになりましたが、北極圏の開発という大きな問題が解決したわけではありません。


写真: 「北極を保護区に」と訴えてロシア政府系企業のガスプロム社の石油掘削プラットフォームにぶら下がり非暴力行動を行うアークティックサンライズ号の乗組員たち
(C) Denis Sinyakov / Greenpeace


「北極圏の開発」という地球規模の問題

「北極圏の開発」は、地球規模で市民が影響を受ける可能性がある大きな問題です。
万が一、石油流出が起きた場合、北極のような過酷な気象条件では、復旧の作業も困難になります。
北極での資源開発に抗議して、シェル社のガソリンスタンドを平和的に数時間封鎖した抗議活動は、北極の開発という人類共通の脅威に対して、「公共の利益」に寄与する均衡性のある抗議として、オランダ裁判所では一定の抗議活動を認める判決が出たことも大きな動きです。

 

■北極での石油開発にNO!を ~世界に広がる声~

将来の地球環境を考え、ロシアの国策事業に反対することの危険性を十分に理解しながらも、北極をまもるために行動を起こしたアークティックサンライズ号の30人の乗組員たち。北極での石油掘削のリスクを世界に知らせるために起こした行動に対して、最長7年の禁錮刑が科せられる「不良行為」での起訴は、均衡性があるとはいえませんでした。

そして、彼らの活動背景にある北極の開発という大きな問題にも目をむけて下さい。
いま、グリーンピース・インターナショナルのウェブサイトで「北極を保護区に」キャンペーンに参加することができます。
地球環境のために、世界中からたくさんの人が声をあげています。
急速に開発されていく北極海の環境をまもるために是非ご参加下さい。
(英語:写真をクリックすると「Save the Arctic」(英語)ウェブサイトで署名できます)。


【関連ブログ】

・ 「北極を保護区に」壮大なキャンペーンがはじまる (2012年6月22日)

・ 北極海の氷面積が最少 – 北極での石油開発を考える (2012年8月28日)

・ 抗議活動はご自由に - オランダで驚きの判決 (2012年10月16日)

・ シェルが2013年の北極圏開発を中止 (2013年3月4日)

・ I Love Arctic - 北極の海底に300万人の声 (2013年4月20日)

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・ 北極海でロシアがグリーンピースの船を連行した本当の理由。ロシアのダブルスタンダード外交(2013年9月20日)

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